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銀塩手帖

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銀塩手帖
フィルム、銀塩写真に関する情報を記録していきます。
公開日:2014/07/04

メンテナンスでGo! Go!

photo & text 大浦タケシ


中古の使い込まれたカメラや交換レンズでもメンテナンスのきちんと行き届いたものは、メカとしての美しさのみならず何かいい写真が撮れる気配も漂う。さらに所有する者の人格までも察することができるほどである。せっかく気に入って手に入れた愛機なのだから、きれいな状態を保って永く使いたいものだ。 そこで今回は、基本的なカメラのメンテンスについてピックアップする。お話はカメラ修理専門会社、株式会社ユー・シー・エスのスタッフ、吉成昭裕さんに伺った。

 
お話を伺った株式会社ユー・シー・エスのスタッフ、吉成昭裕さん。最新デジタル一眼レフからオールドカメラ・レンズまで整備、修理を担当する。


「基本的なメンテナンスに必要なものはこれだけです」と吉成さんがまず見せてくれたのが、ブロアと刷毛(ハケ)だ。どちらも特殊なものではなく、ブロアはカメラショップなどで、刷毛はDIYのお店などに置いてあるものである。唯一ちょっと違うぞと思えるのが、刷毛の毛をまとめている金属部分にパーマセルテープを巻いているところだろう。刷毛の金属部分にパーマセルテープを貼ることで、カメラやレンズなどに誤って当ってしまったときのキズの発生を防いでいるのだ。 ちなみにパーマセルテープとは写真撮影用の紙テープの商品名。プロショップや大型量販店などに置いてあることが多い

吉成さんの愛用する刷毛とブロア。刷毛の金属部分には黒い紙テープ、通称パーマセルを巻き、カメラや交換レンズに触れた際キズを付けることのないようにしている。

メンテナンスの基本
まずは刷毛でホコリを取る

メンテナンスの手順としては、まず刷毛で操作部材の間や溝などに付着したホコリを払う。これをしっかりやっておかないと、状態によっては動作に影響することがあるという。また、デジタル一眼レフやミラーレスの場合、レンズ交換のときなどイメージセンサーにホコリが付着する要因ともなる。さらに、刷毛で掃くのは外観ばかりはない。ポップアップストロボの内側、メディアカバーやバッテリーカバーなどの縁なども忘れずに。フィルムカメラの場合、フィルム室も意外とホコリが溜まりやすいので、こちらも気にしておきたい。


刷毛で掃き出すようにしてホコリをはらっていく。操作部材などの細かな隙間や内蔵ストロボの収まるところなどホコリが溜まりやすい。


フィルムカメラの内部にもホコリやゴミはたまっている。清掃の際には、シャッター幕に触れないように注意を。

1にも2にもブロアー

ひととおり刷毛で掃き終わったら、次にブロアでボディや交換レンズの鏡筒に浮いたホコリを吹き飛ばす。ブロアで吹く代わりに、スプレー缶タイプのエアダスターでもよいが、空気圧が強すぎるため使用に際しては注意したいところ。吉成さんは「ブロアで十分」だという。

レンズの清掃は?

交換レンズの前玉および後玉の清掃についても吉成さんは、「ブロアで吹くだけにしてください」と話す。とにかくレンズそのものには触れないようにしたい。しかし、ブロアで吹くだけでは取れない水滴の乾いたような痕や油っぽい指紋などはどうすればよいだろう。「メーカーのサービスセンターや私どもの窓口に持ち込んで清掃してもらってください」とのこと。ちなみにユー・シー・エスでは単に前玉のみを拭くような極簡単な清掃の場合、費用は受けとっていないという。何と太っ腹なことか!

吉成さんがおすすめするのが、交換レンズにはプロテクトフィルターをしておくことである。万が一しつこい汚れが付着し、自分で清掃しなければならなくなってもリスクは小さくて済むからだ。なお、市販のレンズクリーナーは拭き痕が残りやすく、またしつこい汚れは落ちないこともあるという。

後玉については、鏡筒のなかにホコリを入れないように注意する必要もある。そのためブロアで吹く際は、後方に後玉が繰り出した状態とし、ブロアも後玉に対し斜めに吹くとよい。さらに一眼レフのミラーについてもブロアで吹く程度に留めておき、「触らない方が賢明」とのことである。

そのほかに汚れがたまりやすいのが、フードの内側、植毛してある部分だ。白い糸くずのようなものが特に目立つことが多い。あまり粘着性の強くないテープで、ペタペタと軽く叩くようにしてホコリを取るとよい。




レンズ後玉を清掃する際は、後玉と鏡筒の間に隙間ができないようにしてから行いたい。隙間があるとブロアで吹いたときに、鏡筒のなかにホコリが入ってしまうからだ。写真右は、後玉が前に出ている状態で、隙間が開いている。この状態でブロアを吹くのは避けたい。左は、後玉が繰り出ている状態、この状態で斜めからブロアを吹く。


大切なレンズにはプロテクトフィルターを付けおこう。レンズの汚れ防止になるほか、万が一落下させてしまった場合、鏡筒の変形を防ぐ。

見逃しがちな接点の清掃


そのほかに気をつけたい部分としては接点がある。大きくはレンズおよびアクセサリーシューがあるが、汚れていると作動に大きく影響することも少なくない。「共に乾いたきれいな布、綿棒、セーム革などで拭くとよい」と吉成さん。特にアクセサリーシューの場合、汚れが溜まりやすいので、シューカバーを装着しておくとのがオススメだ。ただし、キヤノンの場合はアクセサリーシューのレール内部にスイッチが内蔵されているので、シューカバーを装着するとストロボが装着されていると誤認識することがあるので注意を必要とする。また、デジタルカメラの場合、バッテリーの接点と、チャージャーの接点もチェックしよう。普段よく見ない部分に意外とホコリが溜まっているものだ。




デジタル一眼のセンサーは?


デジタルカメラの心臓部、イメージセンサーについて吉成さんは「基本的に専門の人間に任せてほしい」と話す。どうしても気になるようであれば、室内などホコリの舞ってないようなところで、ブロアで吹き飛ばす程度に留めるようにする。また、その際、カメラは下向きとするのがベスト。上向きにすると吹き飛ばしたホコリが再び舞い降りる可能性があるからだ。なお、使用するブロアは先端にプラスチックなどの先口が簡単に取り外せるものは止めたほうがよい。「ブロアで吹いた瞬間、先端部が外れイメージセンサーなどを傷つけることがある」からだという。さらに、イメージセンサーはエアダスターで絶対吹かないこと。液状のガスがイメージセンサーに付着するとメーカーでの修理が必要となってしまうからである。

クリーニング液を使うときは注意を

カメラのボディや交換レンズの鏡筒をキレイにするため、無水アルコールなどで拭くひともいるが、「なるべくなら避けたほうが無難」と吉成さんはいう。拭きムラが付いたり、プラスチックの部品などの場合曇ってしまうこともあるからだという。アクセサリーメーカーから発売されているカメラボディのクリーニング液などは説明書をよく読んでから使ってほしいとのことである。


大浦のオススメグッズ
エツミからリリースされているプロテ・ケア。金属部分の汚れ落としと、ツヤ出しを兼ねる。オールドカメラ、オールドレンズに特に効果的。

今回はカメラ・レンズのメンテナンスについて話をうかがった。次回は保管について話を訊くことにしたい。



ユー・シー・エスは京成線・堀切菖蒲園駅から徒歩5分ほどのところにある修理をメインとする会社。主要カメラメーカーのほかiPhoneの修理も行っている。 カメラファンにはショップとして加盟しており、店頭と通販で中古品の販売も行なっている。
ウェブサイト:http://www.u-cs.co.jp/
 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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  2014/07/04
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