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ソニーα7 オールドレンズ・クロスレビュー

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ソニーα7 オールドレンズ・クロスレビュー
公開日:2014/07/02

吠えよホロゴン!(α7Sリベンジ編)α7S + Hologon T* 16mmF8

photo & text 澤村徹
α7S + Hologon T* 16mmF8
Rayqual LM-SαE
ULYSSES α7/α7R/α7S Body Suit

以前、「萌えよホロゴン!(α7人柱編)」という記事をカメラファンで公開した。コンタックスGマウントのホロゴンT* 16mmF8を、ライカMマウント改造してα7で使おうという人柱レポートだ。結果は惨敗。α7に装着はできたものの、レンズガードを1.2ミリ削ってもなお、シャッター幕と干渉してしまった。これ以上レンズガードを削ると後玉が露出し、さらにリスクが高まる。退くのも勇気、と自らを慰め、人柱平原に屍を一体献上してきた。

その後、改造Gホロゴンはどうなったのか。みなさんのご想像通り、防湿庫の門番になっている。主(ヌシ)ではない。門番だ。防湿庫に仲間入りしてから日が浅く、ライカMタイプ240なら撮影自体は可能なので、今後出番があるかもしれないという期待を込め、防湿庫の最前列に置いてある。ただ実際には、ライカMタイプ240でも周辺のマゼンタかぶりがひどく、カラー撮影では使いものにならない。また、レンズガードを削った都合、無限遠位置だと後玉がごくわずかにレンズガードの外側に飛び出してしまう。何かの拍子にシャッター幕が後玉と干渉しようものなら目も当てられない。ライカMで使うにしても神経を使うわけだ。そんなこんなで、改造Gホロゴンは防湿庫の不動の門番と化していた。

そこに飛び込んできたのがα7Sのリリースだ。このカメラなら、改造Gホロゴンが完全復活するかもしれない。人柱の屈辱をリベンジしたい。いやが上にも期待せざるを得ないスペックだった。

そう思ったひとつめの理由は、イメージセンサーの画素ピッチだ。フルサイズであることはα7と同じだが、有効画素数が約1220万画素に下がっている。これは画素ピッチが大きくなっていることを意味し、周辺部でもたっぷりと受光できる可能性が高い。周辺部の色かぶりや極端な光量落ちが軽減され、改造Gホロゴンでもまともに写真が撮れそうだ。

ふたつめの理由は電子シャッターの採用だ。α7Sはサイレント撮影機能を搭載し、同機能を有効にすると自動的に電子シャッターに切り替わる。改造Gホロゴンはα7のシャッター幕と干渉していたので、シャッター幕を使わない電子シャッターなら、無干渉で改造Gホロゴンを使える可能性が高い。




宇宙を封じ込めたような球状の前玉。このレンズでデジタル撮影できる日がやってくるとは。素でうれしいじゃないか!


さて、発売日早々にα7Sを入手し、改造Gホロゴンを装着してみた。α7でも装着自体は可能だったので、何ら支障なくα7Sに装着できる。液晶メニューで「サイレント撮影」を「入」にセットし、シャッターボタンを押す。無音のまま電子シャッターが切れる。呆気ないほど簡単に改造Gホロゴンで撮影できてしまった。

では、画質はどうだろう。周辺部にわずかにマゼンタが残るものの、この程度なら支障ないレベルだ。その一方で、これまでとは逆に周辺部にシアンかぶりが感じられる。シアンかぶりはマゼンタかぶりほど不自然さがないため、背景を工夫すれば問題なく撮影できるだろう。周辺光量落ちは多めだが、あくまでも光学性能に準じた落ち方で嫌みがない。むしろストンと周辺光量落ちする様は、印象深い写真をたくさん生み出してくれそうだ。

ひとつウィークポイントを上げると、α7と同様、周辺像の流れが顕著だ。これは改造Gホロゴン固有の問題ではなく、α7シリーズにショートフランジの広角オールドレンズを付けると、多かれ少なかれ周辺像が流れてしまう。α7Sもご多分にもれず、というわけだ。

ライカMマウント改造したGホロゴンT* 16mmF8は、α7Sの登場でようやく陽の目を見ることになった。いくぶん色かぶりが残り、周辺像が流れてしまうが、デジタル環境でも撮影が可能となり、そのことは素直にうれしく思う。改造Gホロゴン以外でも、α7Sは軒並みマゼンタかぶりが軽減し、ショートフランジの広角オールドレンズが俄然使いやすくなった。常用したい広角オールドレンズがあるなら、α7Sはお薦めのベースボディである。





α7Sは画素数を抑えた分、画素ピッチに余裕が生まれ、広角オールドレンズでマゼンタかぶりと周辺減光が軽減した。
この個体はレンズガード先端を1.2ミリ削っているが、それでもα7ではシャッター幕と干渉してしまった。α7Sなら電子シャッターが使えるので、無干渉で撮影可能だ。
改造Gホロゴンはイメージセンサーすれすれまでレンズガードが降りていく。しかし、電子シャッターを使うサイレント撮影機能を「入」に設定しておけば、無干渉で撮影できる。
マウントアダプターはレイクォールのLM-SαEを使用。問題なく装着でき、無限遠もレンズの∞マークでほぼジャストで合焦した。



α7S + Hologon T* 16mmF8(Mマウント改造)
絞り優先AE F8 1/60秒 ISO400 AWB RAW
中心部はきわめてシャープな写りだが、α7Sとの組み合わせでは周辺部が流れがちだ。


α7S + Hologon T* 16mmF8(Mマウント改造)
絞り優先AE F8 1/100秒 -0.7EV ISO100 AWB RAW
超広角16ミリだけあってそのパースペクティブは強烈だ。歪曲が少なく、直線を入れ込んだ絵作りで勢いが感じられる。


α7S + Hologon T* 16mmF8(Mマウント改造)
絞り優先AE F8 1/250秒 ISO100 AWB RAW
上下に若干マゼンタかぶりが残るものの、この程度なら十分の修正できる。ズドンと音が聞こえそうな周辺光量落ちがよい雰囲気だ。


α7S + Hologon T* 16mmF8(Mマウント改造)
絞り優先AE F8 1/60秒 ISO250 AWB RAW
コントラストの付き方は良好。薄曇りの条件でも、メリハリの効いた絵が撮れる。


α7S + Hologon T* 16mmF8(Mマウント改造)
絞り優先AE F8 1/200秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW
周辺色かぶりをつぶさに観察すると、一番外側がマゼンタ、いくぶん内側がシアンかぶりしている。


※以上の記事は澤村徹が所有するレンズおよびマウントアダプターでの装着事例です。レンズおよびマウントアダプターの個体差などにより、結果が異なる場合があります。

<プロフィール>


澤村 徹(さわむら てつ)
1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。オールドレンズ撮影、デジカメドレスアップ、デジタル赤外線写真など、こだわり派向けのカメラホビーを得意とする。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線写真、オールドレンズ撮影にて作品を制作。近著は玄光社「アジアンMFレンズ・ベストセレクション」「オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド」、ホビージャパン「デジタル赤外線写真マスターブック」他多数。

 

<著書>


アジアンMFレンズ・ベストセレクション



オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド



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