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Time Traveler in CUBA

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Time Traveler in CUBA
公開日:2016/03/23

La ciudad y los edificios

photo & text HARUKI

SIGMA dp0 Quattro F11 8sec ISO100 +0.7EV

キューバという国家そのものが1960年代に入りつい最近まで国際社会と断絶して半世紀以上が経ってしまったので、その間に時間が止まったままになっている街並み。それらが昨今のアメリカとの国交正常化へ向けて急速に破壊されそうになっているのです。
50年以上もの間を自由経済国際社会から閉ざされたままだった南海の孤島から、一気にアメリカを筆頭にした巨大資本主義経済国家との経済交流や大量の物流貿易、そして観光客をはじめ海を越える多くの人々の行き来が始まっています。つまり「マネー」が動きはじめたわけで、マネーが動くところには必ずや再開発やリノベーションといった破壊と再生という出来事が興るのであります。それ自体は悪いことではなく発展のためには必要不可欠な要素のひとつなのですが、それと引き替えに失うモノや現象があるのです。先に出たリノベーションなら未だしも再開発のための破壊をしてしまうということは「建物を殺す」ということなのです。いったん「破壊」をしてしまうとそれは決して元へは戻すことの出来ないことを意味するもの。つまりその行為は歴史的見解からすると古い建物を消してしまい価値ある往年慣れ親しんできた街並みを変えてしまうということにも繋がるのですが、国家や自治体や地域といった人間の集団からすると生き延びるためには経済効果がすべてにおいて優先せざるを得ない場合があります。それこそが今なのだと思います。

長きに渡って南国における唯一無二の社会主義国家として生きながらえてきたキューバなわけですが、隣接する周りの国々をはじめとして何らかの関わりを持っている国の殆どが資本主義あるいは自由経済を取り入れているのです。アメリカを筆頭にした自由経済を敵に回して共に理想の思想を掲げていてキューバ危機をも起こした過去の同盟国だったソ連でさえ国家が崩壊したいまはロシアという自由経済大国になった結果、孤立無援というわけにもいかずとうとう限界点に達してしまいました。



SIGMA dp0 Quattro F8 1/60 ISO400


Canon EOS 5DS EF16-35mm f/4L IS USM F8 1/200 ISO200


Canon EOS 5DS EF70-300mm f/4-5.6L IS USM F4.5 1/80 ISO800


Canon EOS 5DS R  20mm F1.4 DG HSM | Art 015 F1.8 1/80 ISO100


かつては憎むべき敵国の代表とも云えたアメリカだが、その国家こそが観光大好きなお金持ちがいっぱいいる地理的にも近い大国がすぐそこ目の前にあーるじゃないですか(笑)。
50〜60年前に敵視して縁を切った革命の師であるチェ・ゲバラはとっくに鬼籍に入っておるわけだし、同胞でその後この国の国家元首(※1)ともいえる立場にあったキューバ共和国初代国家評議会議長であるフィデル・カストロ兄さんが長い間この国をうまくまとまった統治国家として君臨してきてくれたわけだが、今では任務を引退して御年88歳のライス・バースデイ、つまり日本でいうところの“米寿”を静かに過ごしていらっしゃるのです。
実弟にして後継者でもある若き(※2)ラウル・カストロさんが、そこで思い付いたのが…
「なーんだ、半世紀前に勝手に置いてけぼりにしてったオンボロロンのアメ車やら石造りが崩れかかったポンコツビルディングなんかがこないに大人気になるんやったら、こりゃ上手いことやったら大儲けしまっせ兄さん。他の国や地域でゴチャゴチャして世界の目が敵視して向こうを見てはるこの機会に一気にアメリカ国とも仲直りして商売でガッポガッポぎょうさん儲けたりまへんか。国家の財政危機もなんぼか足しにもなりまっせえ、なぁ〜兄さん、そうしまひょや!!」

自宅兼病院で療養中のカストロ兄さんも…
「そやなぁ。ワテもずいぶんと歳をとったせいか身体も弱ってしもうてのう、昔みたいにメーデーの日に革命広場で朝から夕方まで仰山の愛する我が民衆の前に立って大声で演説するのもちょっとキツイのんや。それに長い間に世界の情勢もアメリカの態度もずいぶんと変わったし今はほれアフリカの血ぃが入ったオバマとか言わはる日本の港町みたいな名前の大統領らしいやないけぇ。せやったらこの際やねんから、アンタの思いはるエエようにしはったらええさかいに引っ越しは堺やさかい」

(※1正式には国家元首は大統領が別に存在しますが)
(※2若いといってもそれはあくまで比較論でありまして、ラウルさんも御年84歳のご高齢でございます)

という会話があったかどうかのご判断は読者の皆さん方にお任せしますが(笑)、とにもかくにもキューバ&アメリカの国交回復に向けての動きは2014年から一気に加速して2015年8月にジョン・ケリー国務長官が2機のエアフォースワンと共にハバナのホセ・マルティ国際空港へと降りたってアメリカ大使館に54年ぶりに星条旗が掲げられました。そ、そ、そして、ついに今月(2016年3月)、再びのエアフォースワン来訪で、現職のアメリカ大統領としては88年ぶりにバラク・オバマ大統領が公式訪問しカストロ議長との首脳会談などが行われたのはニュースでご存知でしょう。

国交正常化への道程としてとても素晴らしい出来事かと思います。しかしながら合理化や進歩の一方では、一世紀以上も前に建てられた建築遺産とも呼べる程、要所要所にアールヌーヴォーやアールデコといったその時代や流行を表すばらしい装飾が施された芸術品たちとも別れるということになります。そう思うとボクはいたたまれなくなって夢中でシャッターを切っていたのでした。

Vol.3へとつづく


Canon EOS 5DS EF70-300mm f/4-5.6L IS USM F5.6 1/800 ISO400


Canon EOS 5DS R  24-35mm F2 DG HSM | Art 015 F5.6 1/640 ISO400 -1EV


Canon EOS 5DS R  EF70-300mm f/4-5.6L IS USM F8 1/1000 ISO200


Canon EOS 5DS R  EF16-35mm f/4L IS USM F8 1/3200 ISO400


Canon EOS 5DS EF70-300mm f/4-5.6L IS USM F8 1/1600 ISO400


Canon EOS 5DS R  20mm F1.4 DG HSM | Art 015 F1.4 1/80 ISO1600


Canon EOS 5DS R  24-35mm F2 DG HSM | Art 015 F2 1/10 ISO400 -0.33EV



Canon EOS 5DS R  EF24-70mm f/4L IS USM F5.6 1/1250 ISO800

HARUKI
1959年広島市生まれ。1982年九州産業大学芸術学部写真学科卒業。1983年上京しスタジオを経て以後フリーランスてポートレートを中心に活動開始。1987年35回朝日広告賞・グループ入選及び表現技術賞受賞。1990年パルコ「期待される写真家展3」に選出。個展に「普通の人びと」、
「TokyoGirls♀彼女たちの居場所。」他多数。プリント作品はニューヨーク近代美術館、神戸ファッション美術館に収蔵。2014年初の写真集『TheHumanPortraits〜普通の人びと1987-2007より〜』アメリカ橋ギャラリーより刊行。
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https://twitter.com/harukixxxphoto
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