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単焦点レンズで世界を変える!

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単焦点レンズで世界を変える!
公開日:2016/02/03

富士フイルム フジノン XF35mmF2 R WR

photo & text 赤城耕一
X-Pro2に装着するととても似合うレンズである。小さいレンズなのに存在感があるのがとてもいい。携行、収納性にも優れる。

発売間近の話題の富士フイルムX-Pro2だが、それに先んじて、昨年すでに標準レンズの王道ともいえる仕様のXF35mmF2 R WRが発売されている。

本レンズで興味深いのは、同梱のフードの他に別売で用意されたスリット入りのフードLH-XF35-2があることだった。当初、富士フイルムからはX-Pro1のために視野がケラれないように用意しましたというアナウンスがあったわけだけれど、じつはX-Pro2の標準レンズとして最初から用意されたものとみていいだろう。他のXFレンズのフードは金属製のものも一部あって、かなりこだわっているようにみえるが、どうも作りもデザインも装着感もいまひとつなものが多いのは残念なところ。
ところが、このLH-XF35-2フードを本レンズに付けると、結構興奮するスタイリングになりいつまでもカメラを見つめ続けることになるかもしれない。



LH-XF35-2 フードを到着。スリットフードはX-Pro1とかX-Pro2ならば意味があるが、X-T1を使う場合は本来は意味はないけど美しいから買うよねやっぱり。



外観に既視感があるのはなぜか。先すぼまりになっているのはズミクロン50mmF2の影響を受けているのだろうか。

速くなったオートフォーカス、贅沢なレンズ構成

同じ焦点距離のレンズではすでにXF35mmF1.4 Rが用意されているが、それよりも一絞り暗いわけで、基本的には本レンズのF値からみれば普及型の標準レンズともいえる仕様である。しかし、本レンズはインナーフォーカスタイプであり、何よりもAFの速度が素晴らしく速いのが特徴である。しかもWRの名称がついているので防塵防滴仕様だ。XF35mmF1.4 Rはあまりにも性能にこだわりすぎたために全群繰り出しという真面目すぎた仕様にしたため、とくにX-Pro1で使用するとAF速度が遅く、使うのにイラつくこともあったくらいだ。ところが本レンズをX-Pro1に装着してもさほど不満を感じないほどなのだ。

先にも述べたように開放F値が2という明るさは、特別な大口径ではないので少々軽く見られてしまいがちだ。しかし、無理をしていないぶん、小型軽量化できるし、性能面でも余裕が生まれるのであろう。6群9枚のレンズ構成を採用しており、うち非球面レンズは2枚と、このスペックでは考えられないような贅沢なレンズ構成となっていることも注目点である。



至近距離で一絞り絞った状況。ボケの形は美しくよく整っている。全体の再現はポジフィルムの感覚。
FUJIFILM X-T1  XF35mmF2 R WR F2.8 1/4000 ISO200


光源を中心に入れても問題ない再現。合焦点のシャープネスは距離によらず変わらない。歪曲収差も小さい。
FUJIFILM X-T1  XF35mmF2 R WR F2.8 1/150 ISO1600


ラーメン屋のおばさん。ちょっと絞りを開きすぎた感があるけど、手前の料理のボケも自然な感じである。
FUJIFILM X-Pro2  XF35mmF2 R WR F2.8 1/220 ISO400 -0.33EV

この1か月ほどの試用で、期待を裏切られたことは一度もない。シャープネスだけではなくボケへの配慮も最高のレベルだ。いささか万能すぎて不満を感じる、と贅沢なことも言ってみたくなる。先細りのデザインはライカのズミクロンM50mmF2に似ていなくもないのだが、このあたりは意図的、戦略的なデザインなのであろう。

XF35mmF1.4 Rのオーナーの名誉のためにいえば、こちらは開放時の味わいがわずかながら楽しめるが、XF35mmF2 R WRの場合は開放から性能が優秀すぎて、大口径特有の残存収差はまったく感じられない。絞りによる性能変化はほとんどないので、レンズの味わいなるものを追求したい人には不向きかもしれない。
でも、レンズ描写にうるさい人は結局2本の35mmを揃えなければならなくなるのだろうなあ。両者を知らなければ、レンズの味のなんたるかは見えてこないからである。



太陽光を画面はじに入れても珍妙なゴーストは出てこない。シャドー部の再現性にも驚く。
FUJIFILM X-Pro2  XF35mmF2 R WR F11 1/1400 ISO400 -0.67EV


絞り込んでパンフォーカスにしてみた。標準画角とはいえ実焦点距離は短いので、このような撮影も容易である。
FUJIFILM X-Pro2  XF35mmF2 R WR F9 1/2200 ISO400 -0.67EV


単純な被写体だけど、雪の質感再現も見事。カメラの画像処理と、レンズの高性能が合体した感あり。
FUJIFILM X-Pro2  XF35mmF2 R WR F8 1/1500 ISO400



夕暮れの居酒屋さんの店先。立体感を感じる高品位描写。絞りで描写性能は変わらないが写真の雰囲気は変えることができる。
FUJIFILM X-Pro2  XF35mmF2 R WR F2.5 1/210 ISO400 -1EV

 
ACROS +Yeフィルターモードにしてグレインエフェクトを「強」にしてみた。銀塩フィルムの描写と言っても過言ではない滑らかさ。でも粒子の揃いが少々整いすぎか。
FUJIFILM X-Pro2  XF35mmF2 R WR F2.8 1/3800 ISO400 -0.67EV


<メーカーサイト>

富士フイルム フジノン XF35mmF2 R WR
http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/x/fujinon_lens_xf35mmf2_r_wr/


デジタルカメラXシリーズ総合サイト
http://fujifilm-x.com/ja/
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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