オールドレンズ・ポートレート
公開日:2023/01/13
PENTAX Takumar 58mm F2 一眼レフ黎明期のタクマー
Text & Photo 上野由日路/モデル:憂雨
現在中古市場で人気のオールドレンズといえばスーパータクマー 55mm F1.8だ。このレンズは一眼レフの大ベストセラーPENATX SPの標準レンズとして1960年代に人気を博した。そのスーパータクマーの先祖にあたるのが今回紹介するタクマー 58mm F2だ。
1950年代当時ペンタックスは旭光学工業という社名であった。タクマー 58mm F2は旭光学初のペンタプリズム内蔵のカメラであるペンタックスAPの標準レンズとして登場した。ちなみにペンタックスAPの”AP”とは「アサヒ・ペンタックス」の略だ。APから始まるペンタックスシリーズの成功で旭光学は一眼レフカメラ市場において確固たる地位を確立する。タクマー 58mm F2はこのペンタックスシリーズの為に1957年に新しく設計されたレンズでゾナーとガウスタイプの折衷のような設計になっている。58mmという中途半端な焦点距離は一眼レフ黎明期の特徴で、この後徐々に50mmに近づいてゆく。一眼レフ黎明期に設計された今回の58mm F2は手探りで設計されたレンズで 、その試行錯誤がレンズ構成に現れている。
Takumar 58mm F2
Takumar58mmF2 レンズ構成図この設計は現在のレンズにおいては採用されていない。それだけに独特な写りが期待できる。この時代の一眼レフ用レンズの多くは、ダブルガウス型を採用していた。同時代のライカ型のカメラの多くはゾナー型を採用していたのでちょうどゾナー型とダブルガウス型が拮抗し始めていた時代になる。それだけに両者のいいとこ取りをしようという折衷型は当時としては理想的な構成のひとつだった。
1932年、コンタックス用ゾナーの登場で標準レンズの世界は一気に F1.5という明るさの時代に突入した。しかし1930年代は F1.5を達成したレンズは数えるほどしかなく、しかもゾナーの性能を凌駕するレンズはほぼなかったため、1930年代はゾナー型の独壇場といえた。1936年の Leitz Xenon などゾナーに対抗しようとしたダブルガウス型のレンズもあったものの、構成群数の多さが災いしてゾナーには今一歩及ばなかった。レンズコーティングが実用化される戦後に入って、この問題は克服されダブルガウス型は次第にゾナーとの性能差を縮めていく。一方日本においては早くからゾナーとダブルガウスの折衷型の研究が始まっていた。折衷型はゾナーとガウスのいいとこ取りをしようと考えられたレンズ構成で、1936年のシムラー5cm F1.5が有名である。日本で盛んに研究された折衷型は1950年代〜1960年代にピークを迎え様々な形の折衷型が設計された。今回紹介するタクマーもその一本といえる。
1/320秒 ISO200 WB:マニュアル
タクマーといえばゴーストだがこのレンズでもしっかり虹ゴーストが出る。ただし虹ゴーストはレンズ個体のコンディションも大きく影響するので入手の際は試写が欠かせない。1/320秒 ISO200 WB:マニュアル
シングルコーティングであるが明らかに逆光に弱い。逆光によるハレーションとゴーストがクラシカルな印象の写りだ。1/320秒 ISO125 WB:マニュアル
順光では発色が良くしっかりとした描写だ。しっかりはしているものの質感はフィルムライクで魅力的な写りが楽しめる。1/320秒 ISO400 WB:マニュアル
開放でもピントの芯はしっかりしている。背景は落ち着いていて立体感がある。1/320秒 ISO400 WB:マニュアル
逆光時の虹のシャワーが美しい。ハレーションを抱えつつも解像力はしっかりしている。逆光時に活躍するレンズだ。コンテンツ記事関連商品
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