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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2013/01/21

ニコン F

photo & text 赤城 耕一

完成されたデザインと性能〜生まれながらの名機ニコンF〜

ニコンFは1959年に登場した日本光学(現ニコン)初の本格的なシステム一眼レフカメラである。マウントはニコンFマウントを採用。各種交換レンズが用意された。「不変のFマウント」として、現在のニコンデジタル一眼レフカメラと互換性がある。視野率100パーセント、チタン幕シャッター(初期の一部モデルに布幕あり)でB、1秒〜1000分の1秒。調整によってモータードライブの装着も可能だ。

ファインダー、ファインダースクリーンは交換式。メーターを内蔵した「フォトミックファインダー」各種は、時代によって外部測光方式のものからTTLメーターを内蔵したものまで各種ある。なおすべてがシャッターダイヤルと絞りに連動するが、装着レンズの開放F値をフォトミックファインダー側に知らせる必要があるため、レンズ装着時には絞り環を一往復させる必要があった。これが俗にいわれる「ニコンのガチャガチャ」である。

デザインは亀倉雄策氏が担当。そのシルエットは内部のペンタプリズムのカタチを主張して貫禄十分。シンプルだがたいへん美しい。外装カバー、メッキ、各部のパーツの作り込みなど、いまのカメラにはまず見ることのできない凝った仕上げであることに驚かされる。手にしてみると、その金属皮質と角ばったフォルムは手に馴染むとは言い難く、抵抗感すら与えるが、これにより撮影者は覚醒するのである。

ニコンFはロングセラーを誇り、1970年代初頭、後継機のニコンF2が登場してからもしばらくは現役モデルであったが、非常に長い期間、写真の全ての分野で大活躍している。機能はもとよりその堅牢性、ニッコールレンズの秀逸な性能が世界のプロから認められたからだ。

ニコンFを見直してみると、趣味の愛玩物にしてしまうのはもったいないと、いまもなお思う。一部の特殊なモデルを除けば廉価に入手可能だし、フルメカニカルカメラなのでメンテナンスも可能。写真表現者の道具として使用に耐える。フィルムがある限り私たちの“見る欲望”に十分に応えてくれる一眼レフカメラ。それがニコンFなのだ。



ブラックボディ
ニコンFのブラックボディは当初、一般市販されない報道分野やプロの特注品だったようだが、後に市販もされる。台数はクロームボディより少ないので、やや高価である。ペイントの質も良好で独自の雰囲気がある。

 
ボディ上部
シャッターボタンはボディの後方にあって、当初は評判が悪かったが、ユーザーがボディに合わせて使ったのであろう。シャッターの構造がレンジファインダーのS系のニコンと同様のためだが、もとはバルナックタイプのライカのシャッターの位置関係からきているわけだ。
 
裏蓋
裏蓋は着脱式でありS系ニコンと同様である。三脚に取り付けている時などかなり煩わしい。フィルム装填時に取り外した裏蓋をどこに置くのか、という大きな問題もある。私は脇の下に挟んだりしている。
 
Fマウント
現在に至るまで不変のニコンFマウント。絞り環のあるレンズならばMF、AF問わずにどのレンズも使える。現在主流になってきているGタイプのニッコールレンズは絞り環がないために使用できないのが残念。
 
ニッコール2.1センチF4
S系ニコンに用意された同スペックレンズのFマウント版モデル。対称型設計のため、後玉が突き出た構造で、Fではミラーアップして使用する必要あり。性能面は非常に秀逸でとくに歪曲収差が少ない。
 
ニッコール10.5センチF4
これもS系ニコンのために設計されたレンズのFマウント版モデル。絞りはプリセット方式で、やや扱いづらいが性能は優れている。小型軽量なので、マウンテンニッコールという愛称もある。

モータードライブF36

S系ニコンにもモータードライブが用意されていたこともあってか、ニコンFにも当初からモータードライブが用意されていた。基本的には1台のボディに対して一台のモータードライブの組み合わせという現品調整方式が採用され、ニコンのサービスセンターで調整が行われた。ボディの下板部分を専用のパーツと交換する必要がある。連動方式はメカニカルで、コマ速度のセレクターダイヤルを装備、Lは2コマ/秒、M1は2.5コマ/秒、M2は3コマ/秒、Hは4コマ/秒。ただしH時はミラーアップする必要がある。フィルムも高価な時代であり、モータードライブ本体もニコンFボディと同等かそれよりも高かった時代もある。販売数は少ないが、報道関係では必須のアイテムだ。連続撮影してシャッターチャンスを狙うというよりも手持ち撮影時に同じフレーミングで撮影できるという利点のほうが大きかったのではないかと思う。グリップ型の直結型電池ケースは後に発売されたもので、当初は電池ケースをケーブルで繋いで使用する必要があった。
 
コマ速度換算票
モータードライブ側に取り付けられた裏蓋にはコマ速度と使用可能なシャッタースピードの換算票が貼られていた。ミラー動作時にLでは全速、M2では60分の1秒以上、M3では125分の1秒以上を使用する。なおミラーアップ時にはそれぞれ2-3段ほど下のシャッター速度を使用することができる。この設定を間違えると露光時間中に巻き上がるなどトラブルが発生するので注意したい。
 
フォトミックイルミネーター
フォトミックファインダー内の指針表示は通常は採光窓から外光を取り入れて照明していたが、このイルミネーターは小さなランプを点灯させて採光窓を照らし、指針表示を照明しようというもの。電源は水銀電池1個。夜間や舞台撮影時に便利であった。
 
アイピース
初期のものは角型、後に丸型になるが、角型のものを丸型に変換するアイピースアダプターも用意されていた。なおサービスセンターで改装も受け付けていたので、初期モデルでも丸型の窓になっている個体も見受けられる。
ファインダースクリーン
交換式のファインダースクリーンも各種ある。撮影用途や使用レンズの種類によって交換すると便利。なお、後期のタイプのほうが明るく見やすく改良されている。初期のものはフレネルレンズの同心円が目立ち目障りである。 (フレネルレンズとはレンズの厚みを薄くするために工夫されたレンズのこと。正面からみると同心円が見えるのが特徴)
 
巻き戻しクランク
巻き戻しクランクや、下のホットシュー部分の形状、大きさも時代によって変更される。後期型のほうが使いやすくできているが、やはりメンテナンス時に新型に交換されている個体もよく見かける。
 
ニコンF+モータードライブF-36「速度L〜M1〜M2」の動作
 
 ニコンF+モータードライブF-36 「速度H」時の動作
 
 ニコンF フォトミックファインダーへの交換方法
 
ニコンF ファインダースクリーンの交換方法
 
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赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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