TOP > コンテンツ一覧 >

NEXT STAGE

15
NEXT STAGE
撮影現場の第一線で活躍中の若手フォトグラファーの仕事と、彼らが愛用する機材を紹介します。
公開日:2014/11/07

フォトグラファー 木藤富士夫/Kito fujio

CAMERA fan編集部


まずは作品を観て頂きましょう。

作品:おくじょう


ハッセルブラッド503CW・500CM プラナーCF80 f2.8 フジフイルム Pro400


作品:公園遊具


ニコン D800 AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED



作品:どうぶつ


ニコン F80 AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR




作品:関西

ニコン F80 レンズ:Ai AF Nikkor 50mm f/1.4D ISO100
「花札などのカードゲームをイメージして撮影・色合いはクロスプロセスを自家現像で調整・本家の関西に本社のある任天堂の花札に対抗して制作」

これらは、まったく異なるテーマと表現方法、そして異なる撮影方法で制作された作品ですが、すべてひとりのフォトグラファーによって撮られたものです。
撮影者は、木藤富士夫さん。
いくつものテーマをもち、独自性溢れる作品を発表しているフォトグラファーをご紹介します。


ただなんとなく購入したカメラから始まった

2005年より、フリーランスフォトグラファーとして「ZOO ANIMALS」、「おくじょう」など、現在まで多くの作品を発表し続けている木藤富士夫さん。

『大学時代はアルバイトをしていて、とても忙しい日々で、お金を使う時間があまりなかったんです。ある日、なんとなく入った量販店で、ニコンの店員さんに声をかけられ、勧められたのがF80でした。特に写真やカメラに興味があったというわけでもなく、言われるがままにそれを購入しました。ダイヤルに書いてある「M」や「S」などの意味もまったく分からず、取扱説明書も読まないので、一年かかってなんとか使えるようになりましたね』





しかし、一年もの間カメラと格闘しても、まだそのときには「写真で食べて行こう」という気持ちはなかったそう。

『旅行雑誌などの写真を見て、実際に同じ場所に行っても、写真と全然違って、「ざんねん〜」ということが多々あって、どこかで“人をだますような写真”を撮りたいという気持ちはあったかもしれません(笑)』


仕事を辞めて入学した写真の学校


『大学を出て、家の近くにあるスーパーマーケットに就職し、とても忙しい毎日でした。3年経ち、そこを辞めるとき、手に職がつくかな……と写真の学校(日本写真芸術学校)に入りました。学生時代は、もともと好きだったホームセンターでアルバイトをしながら、土日にはスタジオに篭って物撮りに明け暮れていました。人見知りなので、物撮りなら気持ちがラクだったんですね』

ホームセンターには、普段見かけない面白いものがたくさん陳列されていて、ワクワクし、そこで働きたいとまで思っていた木藤さん。
それでも卒業時には、スタジオに就職が内定したそうです。

『フリーのフォトグラファーのアシスタントをしたこともあります。カメラマンの方は良い方だったので、楽しかったんですけど、料理撮影で撮影時間も長く、物撮りの籠っている作業が基本的に苦手だという事が、卒業時期に気づきました。そして、内定した就職先に行くことを辞めました。それから現在まで、フリーランスなんです(笑)

当然、仕事はありませんでした。スタジオの商品管理部でアルバイトをしながら、アシスタントも続けていました。

内定していた就職先に行くのをやめようと思ったとき、デパートの屋上で妻と待ち合わせをしていて、そこでサラリーマンが昼寝しているのを見て、面白いなと思ったんです。それ以来、屋上を撮り続けています』


仕事は最初からデジタルカメラ

『その後、インターネットで検索し、情報誌を出している出版社に電話をかけて、料理などの撮影を請けるようになりました。仕事では、最初からデジタルカメラを使用してきましたね。Nikon D100、D200、D300、D800、いまはD4を使っています。
D4を使っている理由は“ラクだから”ということに尽きます。舞台挨拶の撮影を行う際などは、実際撮影に与えられる時間は、長くて1〜2分なのでD4の11コマ/秒は欠かせません。 連写性能が高く、感度を上げても問題なく撮れるという信頼性がD4を使う理由ですね。D4は舞台のキャストさんの表情を逃しません。仕事では、もちろんギャランティが発生しますから、より良い写真を納品するために、カメラやレンズを新調します』


作品制作はフィルムカメラ



仕事では舞台挨拶や、不動産の環境写真などの撮影が多く、利便性とその性能からデジタルカメラを選択する木藤さんだが、作品撮りではフィルムを使う。

『F80で写真を始めて、学校では4×5(シノゴ=大判カメラ)をかなり使いました。その後、妻がフォトコンテストで1位を獲り、ハッセルブラッド503CWを副賞としてもらったんです。そのカメラを借り、まるで自分のもののように使って、屋上の写真を撮っていました。6×6というフォーマットはポートレートにはいいのですが、もっと幅が欲しいなと思い、Mamiya RZ67を購入しました。さらに、全景を収めたくて、ホースマンSW617を購入。
ハッセルは、その後、もっと自分の撮影のためにカスタムし、使い倒したいと思って500C/Mを買い、シュリローに持ち込んで、シャッターのストロークを浅くしてもらったんです。バネの調整だと思うのですが、速写性が高まりました。調整直後はシャッターボタンに触れる程度でシャッターが切れてしまうほどでした。
ピント合わせも、アキュートマットではなく、旧型のスクリーンを使っています。
カスタムすると、枕のフィッティングのように、自分にすぐに合うんです。見た目などではなく、使い勝手のためのカスタムは積極的にしますね』





カメラは“道具”。掃除機と変わらない。

『実は、機材に特別な愛着というのはなくて、“道具”ですね。床に落としてしまっても、さほど落ち込まない(笑)。日常的に使う掃除機みたいな、そういったものと変わらない感覚です。
撮りたいものがあって、それを撮るために道具を買い足したり、カスタムしたりすることはあっても、見た目に惹かれて買うといったこともありません。とにかく、“撮ってナンボ”だと思うんですよね。
でも、屋上を撮り始めてからは、カメラはないと困るという、自分にとって“必要なもの”になったとは思います。

フィルムは決まったメーカーしか使いません。ただ、これはカメラとの相性もあるかと思うんですが、別のメーカーのフィルムを使用した際、中判カメラでは、撮影後に“太巻き”になってしまうことが多かったためです。
カラー、モノクロともに、色味などはデータ化して画像処理するのではなく、現像時に作り、それをプリントします。その後はさらにプリントをスキャンすることもありますね』


強いイメージを形にしていくアーティスト

自分自身の思い描くイメージを形にするための“道具”という徹底した姿勢は、写真家というより、アーティストといった様相で、もしかすると、いつかはその発想を実現するための道具はカメラでなくなる日が来るのかもしれないとも思わせます。

木藤さんがスナップ撮影時に使っているというアクセサリーを教えてもらいました。




Nikon アングルファインダー DR-4






『Nikon F80はいまでも現役で、スナップ撮影時にはアングルファインダーを使います。これが使いにくくて、根本からすぐに折れてしまったり、くるくると回転してしまって、水平が取れなかったりするんです(笑)
 でも、これを付けて撮影していると、周囲も撮影しているのかどうか分かりにくいですし、自分の想像と違ったものが撮れるという“神の手”的な面白さがあります』


自分が満足する写真を撮りたい


シリーズによって、まったく別人の作品のように違ったスタイルの作品を発表している木藤さんですが、個展などで発表した作品以外にも、日常的に撮っている作品がかなりあるそうです。

『群馬県に川原湯温泉というところがあるのですが、ダムの建設によって沈んでしまう予定なんです。そこが好きでずっと撮っています。







コンクリート遊具のシリーズ「公園遊具」は、Googleストリートビューなどを利用して、場所や遊具を調べ、撮影しています。この作品はD800を使っていて、夜な夜なストロボを光らせながら何時間もかけて撮影するので、怪しんだ近隣の人に通報されたり、職務質問されたりしますね(笑)

クルマなどに当てられ、曲がってしまった標識だけを撮り集めたり、ある都市の地名を全て撮り集めたり、発表していないけれど、いろんなことをやっています。






  


屋上の写真やコンクリートの遊具など、いまはないもの、なくなっていくもの、どこか昭和っぽいものが好きですね。
商業ベースで作られたキャラクターではなく、その土地や場所で、そこにいる人たちが作ったゆるい雰囲気のものにも惹かれます。

スーパーマーケットで働いていたこともあって、物を売ることは好きなので、撮った作品を売ることは続けて行きたいと思っています。』

木藤さんは、写真展情報や日々の活動などをSNSで配信しているので、ぜひご覧ください。


木藤富士夫
ウェブサイト http://fujio-panda.com/
Twitter https://twitter.com/fujiopandafujio

<カメラファンがオススメする書籍>

 
IDEA of Photography 撮影アイデアの極意」南雲暁彦・著


「個性あふれる"私らしい"写真を撮る方法」野寺治孝・著

これからフィルムカメラをはじめたい人のためのガイドブック

フィルムカメラ・スタートブック」大村祐里子・著
 
<CAMERA fan公式アカウント>
CAMERA fanでは、SNSで中古カメラ情報を発信しています。
ぜひフォローして、最新の商品情報をゲットしてください。
注:フォローすると、あるとき突然、猛烈に大量ポストがはじまり、タイムラインが一気に「中古カメラ」で埋まることがありますのでご注意ください。