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ニュース&トピックス

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ニュース&トピックス
公開日:2019/11/15

ライカ製品を中心に博物館級の商品が出品する世界的オークション・Leitz Photographica Auction Preview in Tokyo ライカプロフェッショナルストア東京にて展示

text 赤城耕一 + Photo 編集部


  2019年11月23日、ライカカメラ社は、カメラと写真用品のオークション「Leitz Photographica Auction」(ライツ・フォトグラフィカ・オークション)をウィーンのホテル・ブリストルにて開催する。
 オークションは今年で35回目となる歴史あるもので、かつては「WestLicht Photographica Auction」(ヴェストリヒト・フォトグラフィカ・オークション)という名称で、ウィーンのライカショップが開催していたが、現在はライカカメラ社の主催になっている。
 オークションはギネスブックに載るような博物館的な珍品から、日本の中古カメラ店でも容易に目にすることができる一般市販のものまであるが、過去のオークションではライカの試作機"ライカ0型"が約3億円で落札されたこともあるとうから驚きで、世界のビックカメラコレクターには注目のオークションなのである。
 今回の出品点数は468点だ。その名の通りライカ関連製品が多くを占めるけれど、オークションカタログを見てみると、コンタックスやローライ、アルパ、ニコン、キヤノン、オリンパス、ペンタックス、ロシア製のカメラなどもありたいへん興味深い。

 オークションに先立って、先日銀座にあるライカプロフェッショナルストア東京で関係者向けに出品物の一部(約30点)が内覧された。
 もちろん日本からのオークション入札も可能だから、チャレンジしてみたらいかがだろうか。出品の確認はWEBページからも可能だ。入札方法は以下。お店で事前に入札するか、電話にて事前入札、ウェブで事前に入札もできるし、オークション開催中にリアルタイムで入札することもできる。
 先に述べたように、製品は様々、特別な富裕層でなくても、手の届きそうな製品の落札に成功したら、それこそ自慢のネタになるかもしれない。

 

<ライカプロフェッショナルストア東京に展示されているオークション出品商品>

*展示商品の一部をご紹介します

Lot.103
Leica MP Black Paint
No.MP-2 1956, コンディション A/B
想定落札価格:400.000-500.000 EURO

ライカMP Black paint No2は予想落札価格40-50万ユーロ。Mシリーズライカに詳しい人ならMPのことはよくお分かりのはずだ。プロフェッショナルのためのMシリーズライカとしてMPと銘打たれ、1956年にフォトキナで発表。簡単に言ってしまえばライカM3にライカビットMPを装着できるようにして、フィルムカウンターの手動セットにしたものとも言えるのだ。製造台数は総計で412台と極端に少なく、うちブラックペイント仕上げは141台のみだ。通しのシリアルナンバーが打たれている。特別な仕様があるのではないかと思われがちだが、何のことはない、発売当初はまったく売れず、不人気だったので早くに製造を打ち切ったから希少なモデルとなり高価になったわけだ。もっともこれだけのミントコンディションは過去にもあまり見たことがないし、オークションの後は、しばらく人の目に触れることはなくなるだろう。





Lot.200
E.Leitz New York Leica Gun RIFLE
No.n/a 1938, コンディション B+
想定落札価格:200 . 000-250.000 EURO

銃床にライカ を取り付け、引き金を引くことでフィルム巻き上げとシャッターを切ることができるライフル銃のようなアクセサリーを装着したライカだ。個人的には初見であるが、かつて小西六が写真銃と称して、似たようなスタイルで戦中に空撮専用カメラを作っていたことを思い出した。ベースカメラはライカIIIaである。これにビゾフレックスに似たレフボックスとアイポイントが長いファインダーを装着。レンズはテリート20cmF4.5だ。超望遠レンズではないけど、これで射撃手みたいに撮影するのだろうか。日本の街中で持ち出したら、捕まりそうな心配があるが、誰も実用としては使わないだろうな。





Lot.114
Leica MD Gray Hammertone
No.1102506 1964, コンディション A-
想定落札価格:100.000-150 . 000 EURO

ハンマートーン仕上げのライカMD。1964年に10台だけ製造とある。カナダライツに出荷されたそうだ。非常に美しい仕上げのモデルでこれもかつて新宿のカメラ店にて見たことがあって、興味はなかったけど、確か70万円くらいの値札がついていたような記憶があるがはっきりしない。ビゾフレックスにも同じハンマートーンが施されているが、MDは本来は距離計連動範囲外の長焦点レンズやマクロレンズ、科学写真用として製造されたがノーマルのモデルもかつては高価だった。個人的な感覚だと、このカメラにクロームのスーパーアンギュロン21ミリF4とか装着すると涙が出そうになりそう。そういえばのちのライカMPの一部にハンマートーンを施した限定モデルがあるが、今回の出品にもあるのでご覧になってほしい。




Lot.107
Leica M2 Black paint Button Rewind
No.948798 1958, コンディション B-
14.000-16.000 EURO

ライカM2の初期バージョンのブラックペイントモデル。フィルムリワインドはボタン式でセルフタイマーも省略されている。貫禄十分で存在感が素晴らしいが、前のオーナーはプロ写真家だったのだろうか。たしかにM2のブラックペイントモデルが希少には違いないわけだけれど、これだけ大きく塗装が剥がれ、汚れてみえても、ライカはライカとして価値が揺るがないところがすごいわけだ。うちにも怪しいブラックペイントライカM2があるのだが、使うたびに塗装が剥がれてゆく。Mシリーズライカはなぜか初期のブラックペイントボディの質がよろしくないのだが、製造当時のパーツから少なくても外装のパーツは換装されていないことを証明しているともいえるのだ。




Lot.107
Leica M2 Black paint Button Rewind
No.948798 1958, コンディション B-
想定落札価格:14.000-16.000 EURO

西ドイツ軍(当時)の軍用ライカであるオリーブモデル。本来は専用の交換レンズとしてエルマー50mm F3.5標準レンズとして、望遠レンズはヘクトール135mmF4.5が、広角レンズはグーグルつきのズマロン35mmF2.8であるはず。レンズ鏡胴に軍の刻印やコード番号が記入してあるはずだが。M3には35ミリフレームは内蔵されていないから、この装着レンズが、ゴーグル付きではないズマロン35ミリF3.5というのがどうにもコレクション的に整合が取れていない感じがするのだが、見えないところに何か謎の軍用刻印でもあるのかな。細かいことを気にしはじめると夜も眠れなくなります。




Lot.102
Leica MP Chrome
NO.MP-303 1957, コンディション A-
想定落札価格:40 . 000-50 . 000 EURO

ブラックペイントのライカよりシルバークロームのライカの方がいいんじゃないかと最近は思い始めていたりして、だからオリジナルのMPもクロームボディの方にグラっとくるわけ。もちろん現実的には入手など夢のまた夢である。このくらいのミントコンディションが出てくるだけでも奇跡というものだが、購入者はこのミントコンディションのMPを後生に伝えるため、絶対に使用することなく専用の防湿庫を購入して保管すべきではないだろうか。いや、言われなくてもそんなことは当たり前であろうな。うちには現代のライカMPがあるからさ、我慢してこちらで撮影しますね。




Lot.160
EIcan 2/66mm
No.183-0004 1970, コンディション A-
想定落札価格:60 . 000-70 . 000 EURO

エルカンの66mmF2をリアルで見たのは2度目か、十分に拝める価値がある。ELCAN『エルカン』という名は1952年にライツ製品の生産工場としてスタートしたライツカナダ社(ERNST LEITZ CANADA)の略称なわけです。ライカマニアはふつうMade in Germanyと刻印がないと怒るくせに、なぜかエルカン名に弱いんだよね。軍用ライカのライカKE-7Aの標準装備レンズとして採用されたエルカンの50mmF2が有名だが、本レンズの存在を知る人は少ない。だいたい66ミリのブライトフレームは存在しないではないか。




Lot.158
Noctilux 1.2/50mm
NO.2176856 1966, コンディション A-
想定落札価格:16 . 000-18 . 000 EURO

写真用レンズとしては早い段階で非球面レンズを採用したノクチルクス50mmF1.2。
研削非球面レンズを採用、収差補正を目指した。しかし、往時の技術だから完全に補正されているわけではない。金属鏡胴のローレット、デザインも美しい。製造本数が少ないこともあり現在の高騰ぶりは凄まじい。フードでさえも超希少である。どういうわけか、後継のノクチルクス50mmF1.0には非球面レンズは採用されなかった。一時筆者も使用していたことがあるのだが、私の好みの写りではなかったですね。念のため。



Lot.57
Snapshot Elmar 4/3.5cm
No.n/a 1950, コンディション A/B
想定落札価格:40 . 000-50.000 EURO

スナップショットエルマーの名前は知られているが、実物を見たのはこれがはじめてである。試作だけで終わったレンズで距離計連動はしない。つまり目測設定専用レンズになるが、ここにスナップショットエルマーという名前の由来がある。スナップ撮影では逐一ピント合わせなんかしないからねえ。開放値F4というのもミソでこのあたりが玄人好みだし、スナップの思想は合っているけれど、売れないと判断され、世の中に出ることはなかったのだろう。デザインもキレイですなあ。




Lot.33
Leica Single Exposure Housing Prototype
1935, コンディション B+
想定落札価格:28.000-32 . 000 EURO

一枚撮りのライカ。カメラとしては非常にプリミティブな装置で、外付けの専用ファインダーとレンズ、5×5cmフォーマットのフィルムカセットが付属。シートフィルムをカセットに1枚装填して使用するようだ。レンズはエルマー50cmF3.5が付属している。レンズのイメージサークルの広さに驚く。中判6×6カメラのフォーマットサイズは、正確には56×56mmになる。だから本機のフォーマットに近い。このフォーマットサイズではエルマー5cmの画角は広角になるはず。

 

<ライカ製品以外のレアな商品も出品>



Lot.314
Carl Zeiss Jena Contax Jena Ivory
NO.27967 1947, コンディション B/ A
想定落札価格:12 . 000-14 . 000 EURO

カールツァイスイエナのアイボリーのコンタックスII。文献資料では見たことがあるが、実物は初見で実在することに驚いた。すべてオリジナルのパーツであるという。5台しか製造されていないという希少品。現在でも通用しそうなカラーリングであるが、貼り革もブラウンなのがおシャレである。若い女性にも人気が出そうだ。ゾナー5cm F2にも同色のカラーが施されている。ワーキングコンディションなので実写することができる。




Lot.306
Nikon 5.6/ 13mm 
N0.176087 1998, コンディション A-
想定落札価格:30.000-35 . 000 EURO

MFの一般のニッコールレンズで、魚眼を除く最広角なのが本レンズ。製造本数が極端に少ないことから高値である。焦点距離と開放F値が5.6ということからみれば、固定焦点にしたくなるような仕様だけど、そこは真面目なニコンである。ミラーアップすることなくファインダーでフレーミング可能で、もちろん開放測光にも対応する。フォーカシングも可能だ。カニの爪付きのAi-sタイプだから、Ai以前のカメラボディでも、開放測光が使えるし、プログラムAEでも使える仕様になっている。第一面の驚くべき大きな曲率はニコンの優れたレンズ加工技術によるものだが極めて美しい。フルブラックのデザインはニッコールの15mmF5.6をそのまま大きくしたようにもみえる。

 

「Leitz Photographica Auction」(ライツ・フォトグラフィカ・オークション)

開催日時:2019年11月23日11:00〜スタート(現地時間)
開催場所:ホテル・ブリストル(オーストリア・ウィーン)
ウェブ入札:https://www.leitz-auction.com/
オンラインカタログ(出品商品):https://www.leitz-auction.com/auction/de/onlinekatalog

 

オークション出品商品の展示会場:ライカプロフェッショナルストア東京



ライカプロフェッショナルストア東京
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目4−1 東海堂銀座ビル
TEL:03-6215-7074
FAX:03-6693-1345
EMAIL:Pro-Store@leica-camera.co.jp
ウェブサイト

取材協力:ライカカメラジャパン
https://jp.leica-camera.com/

 
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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