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Cinemachic Eyes

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Cinemachic Eyes
公開日:2014/12/02

ネイチャー・フォト Vol.2 CookeSpeedPanchro 40mmF2

photo & text 上野 由日路
E-P3 CookeSpeedPanchro 40mmF2 
ISO200 1/1250秒 F2(アートフィルター/ポップアート)

この写真はCookeSpeedPanchro 40mmF2で撮ったものだ。SpeedPanchroの美しいボケの世界にアゲハチョウを入れたくて30分以上手持ちで粘って収めた。
CookeSpeedPanchro 40mmF2はイギリスのテーラー&ホブソン社のシネレンズで35mmムービーカメラ専用のレンズである。映画界のプロたちの高い要求に答えるため一切の妥協を省いて作られたレンズだ。シリアルナンバーから調べたところ1965年ころ製造されたレンズだ。製造から50年近くを経た今でも一線級の描写をみせる。このレンズの最大の特徴は懐の深さでどんなシチュエーションでも画にしてしまう。最悪の光源状態でも、アンダーの写真もこのレンズにかかれば名シーンに変わる。



E-P3 CookeSpeedPanchro 40mmF2 
ISO200  1/320  F2(アートフィルター/ポップアート)

オールドレンズにはそれぞれ得手不得手がある。近接域が強いレンズは遠景域に弱点を抱えることが多い。これはレンズ設計者がどの距離を基準にレンズ設計をしたかによる。そのレンズ個々の得意な領域のことを僕は勝手に『スイートスポット』と呼んでいる。しかし単にそのレンズの性能を最大限に発揮している場所だけではなくそのレンズ独自の表情が現れる部分も『スイートスポット』と呼んでいる。たとえば特殊なゴーストや美しいハレーションが現れる場所も『スイートスポット』というわけだ。

CookeSpeedPanchroの『スイートスポット』は開放の近接1m〜2mあたりである。ほかの距離でも平均を遥かに超える描写を見せてくれるがスイートスポットに入ったときのSpeedPanchroは他のレンズにはまねできない描写を見せる。シャープなピント面が印象派の絵画を思わせる後ぼけに溶け込む様はこのレンズの持ち味である。


CookeSpeedPanchro 40mmF2


OLYMPUS E-P3 + CookeSpeedPanchro 40mmF2




シネレンズのスイートスポットが導く美しく個性的な描写


E-P3 CookeSpeedPanchro 40mmF2 
ISO200  1/800 F2(アートフィルター/ポップアート)
Hawk's Facty補助ヘリコイドアダプター使用。

『スイートスポット』にはカメラ位置と被写体そして背景のヌケの状態が密接に関係している。この条件がそろったときに肉眼では見ることが出来ない世界が姿を見せる。そしてその世界はレンズごとに様々である。現代のレンズは我々にとって忠実な道具である。どんな風景でも肉眼でみたままを再現してくれる。しかし古いレンズたちはそれぞれに独自の写りを秘めていて、そのレンズを丁寧に紐解いたときにその個性的な写りを我々に見せてくれる。レンズに表現をゆだねて撮影するのも、楽しいレンズ遊びである。


E-P3 CookeSpeedPanchro 40mmF2 
ISO200 1/640 F2(アートフィルター/ポップアート)


E-P3 CookeSpeedPanchro 40mmF2 
ISO200  1/1250  F2(アートフィルター/ポップアート)

<プロフィール>


上野由日路(うえの よしひろ)
山口県出身 1976年生まれ。六本木スタジオを経て独立。オールドレンズポートレートカメラマンとしてレンズごとのテイストを生かした表現を得意とする。オールドレンズの魅力を発信するためにワークショップ『オールドレンズ写真学校』やイベント『オールドレンズフェス』を主宰している。主な著書に『オールドレンズ銘玉セレクション』(玄光社)、『オールドレンズ×美少女』(玄光社)、『オールドレンズで撮るポートレート写真の本』(ホビージャパン)がある。

シネレンズ+美少女 CINEMA LENS+CHICS
http://raylow331.wix.com/cinemachics

上野由日路
http://raylow331.wix.com/raylowworks#

 

<著書>


オールドレンズ銘玉セレクション