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The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜

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The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜
「どのレンズを選ぶべきか・・・?」
それは写真を制作する者にとって永遠の課題であり、撮影に出かける前に毎回悩むところ。悩みぬいた末に「うーん、やっぱり標準ズームレンズで」なんて優柔不断になっていませんか?そんな貴方に、赤城耕一がカメラのボディごとにベストチョイスとなるレンズをご紹介します。
公開日:2014/01/07

ニコン Df + NIKKOR-Auto & Carl Zeiss Distagon

photo & text 赤城耕一

ニコンDf 〜資産を活かせる優越〜

昨年登場してから話題の途切れることがなく人気なのがニコンDfだ。シャッター速度や露光補正、ISO感度設定をダイヤル方式にしたクラシカルデザインが大きな魅力となっているが、ダイヤル方式だと電源をオンにしなくともマニュアル露出時にカメラの設定状態が一度に目視できるということで、とくにベテランユーザーからは好評のようだ。
ところがである。いまのAFニッコールレンズ群は絞り環を省略したGタイプレンズが主流であるから、これらのレンズを使う場合、絞り値の確認は外観からだと上部の液晶表示窓を見る必要がある。これではせっかくのダイヤル方式を中途半端なものにしかねないし、今もなお、ニコンFからF3まであたりと戯れている私としては、少々違和感を感じるところでもある。実のところDfと相性のいいのは絞り環のついたレンズではないかと考えている。フィルムMFニコン時代を想起させるデザインやインターフェースということもあり、DfにはMFレンズを使用して撮影している人も少なからずいるようである。Ai連動レバーのはね上げができる唯一のニコンデジタル一眼レフなので、非Aiニッコールも装着でき、かつ手間は少々かかるが、開放測光で絞り優先AE撮影も可能にしているところがすごい。旧来から最新のものまで、最も多くのニッコールレンズをフレキシブルに使えるカメラでもある。ニッコールレンズ資産活用にはもってこいのカメラがDfというわけだ。ちなみに中古市場でもMFニッコールレンズの動きがよくなっているという話を聞いている。

Dfは、姿カタチはクラシカルだけど、フラッグシップD4と同様の1600万画素のFX(35ミリフルサイズ)センサーを搭載しているわけだから、超のつく高画質である。そのポテンシャルをすべて引き出そうとするならば、最新鋭ニッコールレンズを使用するのが最も良い方法であることは間違いない。しかし自分が所有する古いニッコールも生かした撮影をしたくなる気持ちもよくわかる。不変のニコンFマウントだからこそ、こうしたお遊びも楽しめるわけだ。

今回は少し変則的だが、MFの旧ニッコールレンズ3本と、コシナとカール ツァイスのコラボレート製品である最新のディスタゴンT*35ミリF1.4 ZF2.をDfに使用し、旧ニッコールレンズの描写の味わいと、カール ツァイスの考える最新MF交換レンズの描写をみてみることにした。
使用レンズはすべてニコンで公式にAi改造されたもの。Dfにはレンズ情報を入力し、絞り優先AEで撮影している。設定はRAWだが、レンズの本来の特性を損なわないように、レベル調整くらいの最低限の補正に限り、ホワイトバランスはオート、他はすべてデフォルトである。


ニコン Dfで使いたいオートニッコール3本!


NIKKOR-N Auto 28mm F2


NIKKOR-N Auto 28mm F2

金属鏡胴、黒塗装を基調とした美しいデザインのレンズである。作り込みもいい。開放値F2という明るさは往時では他にあまり類をみない大口径広角レンズとして評価され、報道やルポルタージュの現場でも重宝された。8群9枚構成で、当時では珍しいフローティング構造を採用しており、近距離撮影でも性能変化がないのが特徴のひとつである。登場時からマルチコーティングが採用されていた。所有のものは往時の高屈折ガラスの特性ゆえか、かなり黄変が進んでいるので、そのまま撮影すれば黄色味が強い画像になる。もちろんDfのホワイトバランスをプリセットで設定すれば正常な色再現が期待できるから、表現によって使い分けて設定を考えればいい。このあたりはデジタルカメラならではの強みである。開放値近辺は中心でもシャープな画質。少し絞り込むとニッコール広角レンズ特有のコントラストの高さ、鋭さが出てくる。絞りの効果が画質に反映されるレンズである。



Nikon Df + NIKKOR-N Auto 28mm F2
青空がやや黄ばんだ偏りがあることがわかるけれど、都市風景の印象としてはこれもありかなあと思う。水面の質感描写が素晴らしく良いことに驚く。なだらかな階調再現は古いレンズの特性でもありDfの画質が優れているからであろう。全体的にはフィルムで撮影した画像よりも高評価である。往時では決してわからなかったレンズの再現性だと思う。絞りf8  AE -0.7補正  AWB ISO400 



GN Auto NIKKOR-C 45mm F2.8


GN Auto NIKKOR-C 45mm F2.8

ニッコールとしては初代のパンケーキ型レンズ。GNとは「ガイドナンバー」の略で、フラッシュやスピードライトのガイドナンバーをレンズに設定することで距離に応じて自動的に絞り値が決まるフラッシュマチック構造を搭載していた。レンズ構成は3群4枚のテッサータイプで、フォーカシングはヘリコイドではなく、カムによるものなのでいささかギクシャクしたロータリーフィーリングで少し気になるのだが、実用上は支障はない。単純なレンズ構成ではあるけど、写りに関しては悪くない。画質の均質性もよく、開放からシャープな画像が得られる。ただし、開放絞り値近辺では若干ボケ味にクセがある。最短撮影距離は0.8メートルとやや遠いのは惜しい。これを改良したのがAiニッコール45ミリF2.8Pになるが構成は似ていても写りの雰囲気は少し異なるように感じる。



Nikon Df + GN Auto NIKKOR-C 45mm F2.8
Dfとの相性のよいレンズで、今回はこのレンズとの撮影コマ数がいちばん多くなった。小型軽量なので、カメラバックのサイドポケットにも放り込んで携行できるのはいい。GNの機能的な特性を考えると、フラッシュ撮影を行わない遠距離より近距離のほうが描写性能が高いのではと推測されるが、所有の個体はどの距離でも問題なく画面周辺までシャープな画像になった。絞り値による性能変動もさほど大きくないようで、デザインや動作感触には、さほど高級感はないのだが描写には信頼のもてるレンズだと思う。専用のフードの形も特異なのだが、最近は中古市場で見ることが少ない。 絞りf8  AE  AWB  ISO400



Nikkor-S Auto 55mm F1.2


Nikkor-S Auto 55mm F1.2

F1.2という開放値で焦点距離50ミリという一眼レフの用の標準レンズは今では珍しいものではないが、一眼レフの黎明期時代、大口径の標準レンズの焦点距離を50ミリとするのはかなり苦労したようだ。焦点距離がやや長いのはミラーの存在を考慮したためバックフォーカスをとる必要があったこと、収差補正を行うことが主な理由のようだ。フィルター径を52ミリと小さくしたことで、このレンズのデザインを個性あるものにしているが、一部の中古カメラ店では「アサガオ」と呼ぶところもある。5群7枚構成。作例の使用レンズはシングルコーティングのもので、若干温調な感じになる。もちろんすべて球面レンズによる構成となっている。


Nikon Df + Nikkor-S Auto 55mm F1.2
描写性能は開放時でも中心部は実用性能の鮮鋭性があるのは評価したいところだ。この作例では最短撮影距離0.6メートルで絞り開放で極端な逆光という難条件。逆光だとフレアによってピント合わせが厳しくなるのでライブビューを使用して撮影している。中心はソフトな描写だがピントの芯はあるのはいい。周辺に行くにしたがい画質は落ち込み、フレアも大きく、ボケ味にも個性が出ているが、葉っぱの輪郭をなぞるようなフレアが美しい。周辺光量落ちも大きいが、このレンズ特有のものとして考えれば必ずしも欠点と考える必要はなかろう。奥行きのある立体物を撮影するならこれほど面白いレンズもないだろう。絞りf1.2  AE  AWB  ISO100


ニッコールではないけれど、この1本は使うべし!

Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 ZF.2


Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 ZF.2

カール ツァイス設計、コシナ製造の一眼レフ用交換レンズはすべてMFである。AF化のためにレンズ性能を犠牲にすることはないという考え方は今も根強くあるという。かなり重量級のレンズだけど、Dfとのホールディングバランスは悪くない。ロータリーフィーリングもいまのAFレンズとは比較にならないほど素晴らしく、心地よい感触でフォーカスを追い込むのが楽しくなるレンズである。Dfのファインダー性能はD610相当のものらしく、実用上はほとんど問題はないのだが、しかし、できうればD4と同じにしてもらえたら、MFレンズでもフォーカシングに関してはほとんどストレスを感じなかったのではないだろうか。CPU内蔵のレンズなので最小絞り値でロックし、ボディ側のコマンドダイヤルで絞り設定を行うのが基本だが、Dfではボディ側の設定で、絞り環による絞り設定に切り替えることができる。これは好みによって使い分けたい。構成は9群11枚。フローティング機能を採用しているために撮影距離による性能低下はない。



Nikon Df + Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 ZF.2
晴れの日の都市の風景を撮影してみたが、質感描写に優れ、きわめてシャープな描写である。歪曲収差もまったく気にならない。冬の空気感を感じるようなクリアさ、ヌケのよさに感激する。絞り開放から実用性能を誇るレンズで、絞りによる性能変化も小さいほうだろう。ニコンDfの高性能センサーの特性を生かし切る最新設計のMFレンズとしてツァイスのZF2シリーズは最適であることは間違いない。 絞りf8  AE  AWB  ISO200

 

<メーカーサイト>
ニコン Df
http://www.nikon-image.com/products/camera/slr/digital/df/

Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35 ZF.2
http://www.cosina.co.jp/seihin/cz/1.4-35slr/


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赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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