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The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜

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The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜
「どのレンズを選ぶべきか・・・?」
それは写真を制作する者にとって永遠の課題であり、撮影に出かける前に毎回悩むところ。悩みぬいた末に「うーん、やっぱり標準ズームレンズで」なんて優柔不断になっていませんか?そんな貴方に、赤城耕一がカメラのボディごとにベストチョイスとなるレンズをご紹介します。
公開日:2015/06/22

KOWA PROMINAR 25mm F1.8

photo & text 赤城耕一

OLYMPUS OM-D E-M1 KOWA PROMINAR 25mm F1.8
PROMINAR 25mm F1.8のシルバーモデル。プロミナーレンズは3本ともにクラシカルな鏡胴デザイン。ローレットの刻みもいい。格好だけでなく、フォーカスリングのトルクにも配慮されている。カム方式だがフィーリングがいい。

35mm判の換算画角で50mm相当となるレンズは標準と称されるのだが、現代ではフォーマットサイズにかかわらず交換レンズの1本として考えたほうがよいだろう。

標準レンズは、いずれも言わずもがなの大口径であり、ひとつの基準画角となっている。遠近感も中庸で、視角的にも自然だからだ。絞りを絞れば広角ふう、開ければ望遠ふうなど、昔は交換レンズが現在の基準よりも高価だったので、多くの人が、これ一本で勝負をかけたのである。

今回はコーワのプロミナー25mmF1.8をオリンパスOM-D E-M1に使用して撮影してみた。マイクロフォーサーズのシステムでは、カメラ購入時に同梱されているキットズームレンズではボケ味に関しては期待薄である。

なぜならば標準レンズ相当の画角になる焦点距離が25mmと短く、被写界深度が深いという特性があるからだ。しかもキットズームはF値の暗いものが多い。したがって、これでは思い切った至近距離で撮影しないかぎり、開放絞りに設定しても大きなボケは望めないことになる。一般にマイクロフォーサーズのウィークポイントはボケ味が得にくいとされるのはこのためである。

もちろんF値の明るい単焦点レンズを使用することで、この不満は解消できる。各社ともに標準ズームレンズの焦点域と重複してもF値の明るい標準画角相当の単焦点レンズを用意しているのはこれが理由だろう。



フードを装着すると、さらに長さが強調されるが、金属製で質感はよく実用的だし、撮影時には必ず使用したほうがいいだろう。フィルター径55mm。

すべてマニュアルフォーカスだが、モノとしての存在感あり


すでにコーワのプロミナー8.5mmF2.8は、この連載でも紹介済みなので、登場の経緯に関してはそちらを参照してほしいが、あらためて少し述べておくと、プロミナーのマイクロフォーサーズ互換マウントレンズはこの25mmF1.8のほかに現在8.5mmF2.8と12mmF1.8があり、いずれも描写に関して評判は高い。ただし、すべてのレンズはMFである。とくにビギナーの方々に強くすすめるのは少し気がひけるけれど、趣味性が強く、モノとしての存在感があるレンズがなんとしても欲しい人にはぴったりの製品であろう。

いずれのプロミナーレンズも工業用レンズの設計を応用しているとアナウンスされているが、工業用ともなればボケ味は当然考慮されず、ひたすらシャープネスを追求したものが多い。しかし、通常の写真撮影においては、描写の情緒性を求められることも多くなる。とくに標準レンズ以上の焦点距離では重要視されるはず。

広角レンズならばキリキリとしたシャープネスは至上となるし、さほどボケ味も要求されることがないのだが、標準レンズの場合はシャープネスが優秀であればよいというものではなく、合焦点の軟らかみや、ボケにクセがないという要素もレンズ評価にかかわってくる。

プロミナー25mmF1.8は5群8枚構成。レンズの鏡胴は細身だが、やや長く、望遠レンズの見まごうほどのスタイルだ。外装は総金属製で、絞り環もある。このためか重量級になっているけれど、フォーカスリングのローレットの刻み、トルク感などのこだわりを感じさせる逸品だ。このレンズも他のプロミナー同様に電子接点はなく、カメラボディ内での収差補正は基本的に行われない。レンズ単体での性能面が重要視されてしまうわけだ。

描写性能は、余裕を感じさせる高性能ぶり、開放では軟らかい雰囲気があるが、線は細く、ハロやフレアを感じさせない。コントラストは高く、実用性能は十分。すぐれた描写だ。周辺光量低下もさほど感じさせない。MFなので使うには慣れは必要だけど、開放絞りでもピントのキレがよいためフォーカシングは容易い。
本レンズにはT値表示もあるので、動画撮影のために用意された面も強いのだが、ニュートラルでかつ繊細な描写をする。あらゆる撮影に向いた高性能レンズである。



OLYMPUS OM-D E-M1 KOWA PROMINAR 25mm F1.8
F1.8 1/3200 ISO200 -1EV
1 最短撮影距離で絞り開放というレンズの欠点が露呈しやすい条件。合焦点はやや軟らかい結像だが、コントラストはしっかりとしている。周辺光量も十分ある。


OLYMPUS OM-D E-M1 KOWA PROMINAR 25mm F1.8
F2.8 1/640 ISO400 モデル:平山りえ
前、背景ともにボケにクセはなく合焦点の描写は繊細である。背景は明るい窓だが、コントラストにも影響はない。



OLYMPUS OM-D E-M1 KOWA PROMINAR 25mm F1.8
F1.8 1/60 ISO400 +0.3EV
至近距離で絞り開放。大口径レンズだと性能が低下しやすい条件だが、開放絞りとは思えない描写力である。



OLYMPUS OM-D E-M1 KOWA PROMINAR 25mm F1.8
F8 1/1250 ISO200 -0.3EV
少し絞ると、さらに立ち上げるように像が冴えてくる、ズバッとヌケのよい冷徹な写りをしてくる。シャープネスを追求したい場合もこれに応えてくれる。



OLYMPUS OM-D E-M1 KOWA PROMINAR 25mm F1.8
F8 1/80 ISO200
ストロボを使用してのポートレート。被写界深度が深いため、動きをつけたいポートレートでは目測設定で連続撮影してもまず問題ない。ただし被写界深度指標はほしいところだ。

モデル:平山りえ

【メーカーサイト】 KOWA Prominar スペシャルサイト
http://www.kowa-prominar.ne.jp/special/wide_lens/index.htm



 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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