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The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜

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The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜
「どのレンズを選ぶべきか・・・?」
それは写真を制作する者にとって永遠の課題であり、撮影に出かける前に毎回悩むところ。悩みぬいた末に「うーん、やっぱり標準ズームレンズで」なんて優柔不断になっていませんか?そんな貴方に、赤城耕一がカメラのボディごとにベストチョイスとなるレンズをご紹介します。
公開日:2014/01/24

SONY α7+Voigtlander & Carl Zeiss【特別編】

photo & text 赤城耕一

なぜ高性能の純正レンズではなく、お古レンズを使うのか?

ソニーα7、α7Rは発売後、いまも変わらぬ人気のようである。35ミリフルサイズセンサー内蔵のミラーレス機として、極端に小型軽量化したということが評判になったのであろう。現時点では35ミリフルサイズをカバーするイメージサークルを持ったEマウント純正レンズの種類が少ないこともあり、かなり多くのユーザーはマウントアダプターを使ってライカマウントをはじめとするお古レンズ遊びに興じているようだ。

両機ともに十分すぎるくらいの高画素機だから、厳密にそのポテンシャルを引き出すためには高性能の純正レンズを使うことが正しい。お古レンズ遊びはこの逆の方向性となるわけだが、これはこれでひとつの写真の楽しみの新たな方向性を見つけたわけであり、否定すべきことではない。むしろ自分の資産たるレンズに再び命を与えることにより、表現的にも多様な展開ができることを喜ぶべきであろう。もともと35ミリ判カメラ用に設計されたレンズを35ミリフルサイズカメラに使うというのは意義があることだと考えるからα7、α7Rの登場は歓迎されたのであろう。
私もお古レンズ遊びは決してキライではないのだが、過去、某海外製の廉価で粗悪なアダプターを使って、レンズからアダプターが外れなくなるなど、苦い経験をしたことがある。
そこで今回は、コシナ・フォクトレンダーブランドのVM-E クローズフォーカスアダプターをα7に使用して、ライカMマウント互換のフォクトレンダーブランド、ツァイスZMレンズに計4種装着して試用してみた。


VM E-Close Focus Adapter

VM-Eクローズフォーカスアダプターは装着レンズは無限遠から撮影できるが、約4ミリのストロークがあるヘリコイドを内蔵しており、アダプター外装のフォーカスリングを回転することでレンズ本体の最短撮影距離よりも近接撮影を可能にしていることが特徴だ。Mマウント互換レンズの多くは、カメラの距離計連動を考慮しているから、多くは最短撮影距離は0.7〜1メートル程度のものが多いが、このアダプターならば、レンズの種類にもよるけれど、おおむね最短撮影距離の1/3程度まで近寄ることが可能になる。一眼レフ用の交換レンズと同等の使用を可能にしているわけで、これは画期的ともいえる。

基本的にこのアダプターは『コシナ・フォクトレンダー、ツァイスレンズ専用設計』となっていて、最短撮影距離の延伸距離はコシナのHPで開示されているが、もちろん自己責任で他のレンズも使うことができる。
 アダプター自体の作りは見事としか言いようがない。工作精度が高く、まったくガタつくことなくボディ、レンズの装着を可能としている。このあたりはいかにもMFレンズを現行品として生産しつづけている、こだわりのコシナらしい仕事である。材質は総金属製。フォーカスリング全周ローレット加工で、優れた操作性を確保しており、高精度ヘリコイドと高品位グリスを採用しているため、フォーカスリングの動きがたいへん滑らかで、他のアダプターにはない感触で操作することができる。また親切なことに無限遠ロック機構を内蔵しているため、近接撮影が不要な場合は、ピントのズレを防止できる。


ソニーα7で使いたいフォクトレンダー&カール・ツァイス レンズ4本

フォクトレンダー ウルトラワイドヘリアー12ミリF5.6アスフェリカルII


ULTRA WIDE-HELIAR 12mm F5.6 Aspherical II

周辺光量はどすんと落ちるものの、他に類をみない超広角ということで、発売当初から注目のレンズである。α7では、周辺の色カブリも小さく、実用として十分に使うことができる。中心はとてもシャープな描写。コントラストが高い。35ミリフルサイズをカバーする12ミリのレンズだから、異次元の世界が広がる。レンズ構成は8群10枚でうち、非球面レンズを1枚採用している。開放からの実用性能を持っているが、1段ほど絞り込んだほうが、より均質な画質が得られる。F値は暗いが、もちろんISO感度設定で対応できるレベルだろう。アダプター装着時の最短撮影距離は10センチメートルから無限遠の範囲となる。


SONY α7+ULTRA WIDE-HELIAR 12mm F5.6 Aspherical II
絞りf8  AE  AWB ISO200




カール ツァイス ビオゴンT*25ミリF2.8ZM  


Carl Zeiss Biogon T* 2.8/25ZM

鏡胴のデザインが特異なツァイスZMレンズシリーズはライカレンズと同スペックのものでも廉価に入手できるのが嬉しい点である。このビオゴン25ミリはもともと距離計の連動範囲を越えて50センチメートルまでの設定が可能だが、アダプター使用時には19.5センチメートルまで寄れる。これによって新しい表現を可能としているわけだ。太陽を入れこんだ逆光でも優れたT*コーティングが施されているためゴーストも出現せず、きわめてシャープでコントラストの高い画像を得ることできる性能を示している。レンズ構成は 7群9枚で構成の対象型。歪曲収差もなく、建築物の撮影でも安心して使うことができる。


SONY α7+ Carl Zeiss Biogon T* 2.8/25ZM
絞りf4  AE  AWB ISO400




カール ツァイス ビオゴンT*35ミリF2 ZM


Carl Zeiss Biogon T* 2/35ZM

小型軽量の35ミリレンズ。私の目の代わりとして、フィルムライカからライカM[Typ240]においてまで活躍してもらっている。画質の透明感とシャープネスがすばらしく、開放から十分な実用性能を誇る。レンズ構成は6群9枚で、歪曲収差をまったく感じさせない。小型軽量なこともありがたい。非球面レンズなど、特別な仕様のレンズは使われていないのに最新設計のレンズにも負けていない。α7においても十分な実用性能を示し、新しい描写力を魅せられた感じがした。フィルムとはまた異なった印象であることに驚かされる。アダプターの使用で最短撮影距離は29.9センチメートルとなる。


SONY α7+ Carl Zeiss Biogon T* 2/35ZM
絞りf11  AE  AWB ISO200



フォクトレンダー ノクトン ヴィンテージライン50ミリF1.5


Voigtlander NOKTON vintage line 50mm F1.5 Aspherical VM

このレンズのデザインモチーフは1951年頃に発売された旧西ドイツ製のLマウントレンズ、ノクトン50mm F1.5である。指が痛くなるようなフォーカスリングのフォルムだが、たいへん使いやすく、そして美しいレンズである。光学系は、1999年発売のノクトン50mm F1.5アスフェリカルと同じものであるが、デジタルカメラでの使用を考慮してコーティングの仕様などを強化している。レンズ構成は5群6枚で、うち非球面レンズを1枚採用しているが、描写は開放時には少し軟らかく、若干絞り込むことで、さらに線の細くなる味わいを変化させることのできるレンズである。アダプターの使用で最短撮影距離は44.3センチメートルになる。
絞りf2  AE  AWB  ISO400



SONY α7+ NOKTON 50mm F1.5 Aspherical VM
絞りf2  AE  AWB  ISO400

α7のユーザーインターフェースはたいへん優れていて、お古レンズを使う場合にも使用にあたってのストレスがない。画像拡大が瞬時に行えること、露出精度もなかなか高い。設計者は、純正レンズのみならず、こうしたお古レンズでの使用も念頭に入れて操作性を考えたのかもしれない。
こと、ライカレンズを使うということだけに着目してみれば、実質的にライカM[Typ240]と同じ仕事ができる。ボディの価格を考えると驚異的なコストパフォーマンスなわけで、このこともα7の人気が高い理由なのだろう。



<メーカーサイト>
コシナカール・ツァイス製品
http://www.cosina.co.jp/z.html

コシナフォクトレンダー製品
http://www.cosina.co.jp/v.html

VM E-Close Focus Adapter
http://www.cosina.co.jp/seihin/voigt/acce/adapter/vm-e.html


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赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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