TOP > コンテンツ一覧 >

The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜

12
The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜
「どのレンズを選ぶべきか・・・?」
それは写真を制作する者にとって永遠の課題であり、撮影に出かける前に毎回悩むところ。悩みぬいた末に「うーん、やっぱり標準ズームレンズで」なんて優柔不断になっていませんか?そんな貴方に、赤城耕一がカメラのボディごとにベストチョイスとなるレンズをご紹介します。
公開日:2014/04/18

ライカ MP3+ エルマー5cmF3.5/ズマロン2.8cm F5.6/ズマロン3.5cm F3.5

photo & text 赤城耕一


ライカのレンズの名称は基本的には開放F値によって決められている。大きく大別するとF1.2よりも明るいものは「ノクチルックス」F1.4では「ズミルックス」F2では「ズミクロン」で、F3.5-4あたりでは「エルマー」という具合である。以前はわりとイレギュラーな存在だったが、ここ最近になって復活してきたのが「ズマリット」で、現行レンズのF2.5の開放F値のレンズにつけられているが、ライカにうるさい人だとズマリットといえば50ミリF1.5のことがすぐにアタマに浮かぶ。なんだかいまひとつ整合がとれない感じがするので、新しいズマリットには抵抗感を持ったりすることがある(私だけかな?)。

パナソニックのライカブランドレンズでは最近になって「ノクチクロン42.5ミリF1.2」というノクチルックスとズミクロンを合体させたような名称のレンズが出てきたが、どういうわけか、ライカの純正レンズではこの名称のものは過去にはないし、現時点では存在していない。

おそらくライカ社の人たちはレンズの名称なんか、適当でいいんじゃねえのかとタカをくくっているフシがあるが、同業者との会話の中で「やっぱりズミルックスよりもここはズミクロンじゃないですかね」などと言われると、ん?! 無理にレンズの明るさを追い求めないということは、こやつ意外な隠れライカ使いかもしれんなどと勘ぐってしまうものである。

もうひとつ、わりと気になっているレンズに「ズマロン」がある。古くは2.8センチF5.6とか35ミリF3.5のレンズにつけられた名称だけれど、同じ35ミリF3.5のレンズにはエルマー名のものもあるぜ。ズマロンは4群6枚構成だから、レンズ構成が異なるので別名がつけられたのだろうが、開放F値でレンズの名称が決まると書いてもズマリットの他にもこういう事例があるのだから困る。ついでだから言うけど、35ミリF2.8のレンズにもズマロン名がついたものがある。ま、ライカレンズには他にも名称はあるのだが、面倒くさいのでもうやめときます。ライカに詳しい人、ここでの突っ込みは禁止します。

最近はデジタル用レンズが大口径方向ばかりに注目が集まっており、しかもみんなおしなべて高性能なのがどうにも面白くない。みんな毎日のように暗いところに好んで行ったり、キレイなお姉さんのポートレートを開放絞りで撮っちゃったりするのだろうか。
それはそれで羨ましいかぎりだが、たまにはこういう暗い、お菓子みたいな名前のズマロンで撮ってみるのも一興だと思いますよ。もっとも古い製品だから、F値が暗いからといって余裕があって高性能であるとは限らないが、それでも個性を感じるのは確かである。今回はライカにポジフィルムを装填し、往年のF値の大きめのライカレンズたちを装着し、その味わいをみてみることにした。



エルマー5cmF3.5

LEICA MP3 + Elmar5cm F3.5

3群4枚の単純な構成だが写りは侮れない。ライカの名声を高めたレンズと言ってよい。珍胴タイプなのでコンパクトだが、バルナックタイプライカのみならずM型とのデザインバランスも悪くない。使用したのは“赤エルマー”と呼ばれる、距離指標が赤文字のもの。像の均質さはよくて、スナップから風景まで使える十分な性能がある。現代レンズよりも線の太い再現のためか強さを感じる。ポジフィルムあるいはMのデジタルでも良好な結果が期待できる。



コスチュームを販売する店であろうか日陰の条件だけど、色再現は悪くないし、階調の再現も良好。ライカMP3  絞りf5.6  1/60秒 フジクロームプロビア100F


オブジェと天窓。直接光が入らず、これも日陰の条件。絞りは開き気味だけど、落ち着いた再現をみせている。見た目に近い色である。ライカMP3  絞りf4  1/60秒 フジクロームプロビア100F


ズマロン2.8cm F5.6



LEICA MP3 + Summaron2.8cm F5.6
ヘクトールの2.8センチF6.3というレンズが存在するが、本レンズはわずかに明るくなったもののそれでも開放F値F5.6というのは辛いものがある。とくにポジフィルムでは使用条件が限られそうだ。それでも鏡胴は短くたいへんコンパクトである。レンズ径が小さいのも特徴。抑えた開放F値でも意外に周辺光量落ちがある。解像力は意外にあるがコントラストはあまり高くないようだ。逆光や強いハイライトが画面内にあると再現性がやや落ちるのはやむをえないところ。通称赤ズマロンともよばれる。


古い建物に本レンズの再現のマッチングがよいのではないかと思い撮影してみた。ひと絞りほど絞り込んでいるが、周辺は落ちる。ヌケもいまひとつだが個性を感じる描写だ。
ライカMP3  絞りf81/2  1/250秒 フジクロームプロビア100F


晴天順光下という恵まれた条件だが、いまひとつコントラストが弱め。ポジフィルムよりモノクロフィルムのほうがマッチングがよいかもしれない。
ライカMP3  絞りf11 1/125秒 フジクロームプロビア100F


ズマロン3.5cm F3.5



LEICA MP3 + Summaron 3.5cm F3.5

スクリューマウントとMマウントがある。Mマウントの初期タイプではライカM2以降のモデルに装着しても35ミリのフレームは出現しない。後期のカムが改良されたものは問題ないが珍品に属する。スクリューマウントのモデルに「L-Mアダプター」の35ミリ用のものを使用したほうが、フレームが出現するのでストレスがないかもしれない。平凡なスペックのレンズだが、描写は侮れない。絞りを開いた状態では若干の周辺光量低下があるが、解像力、コントラストともなかなか良好だ。


建物の塀に飾られたオブジェ。画質の均質性が高く、解像力も十分。周辺光量の低下は若干あるが問題にするほどでなく、ほのかに焼き込んだ感じになる。ライカMP3  絞りf4  1/60秒 フジクロームプロビア100F


斜光の条件で、木の下から桜を狙ってみる。コントラストの高い条件だがシャドーからハイライトまで、繋がりのよう再現をみせることを評価。少し絞り込むと像が締まる感がある。ライカMP3  絞りf5.6 1/2  1/250秒 フジクロームプロビア100F



カメラファンで「ライカ マニュアルフォーカスレンズ」を探してみる


*2014年5月3日 LEICA MP3 + Summaron 3.5cm F3.5 の写真に誤りがあったため差し替えて訂正いたしました。
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
  「赤城写真機診療所 MarkII」
〜高速連写はやめなさい〜

著者 赤城耕一
価格:1,900円+税
電子書籍版:1800円+税

<紙版>
Amazon
ヨドバシカメラ.com
紀伊國屋書店

<電子版>
Amazon Kindleストア
「赤城写真機診療所」
〜そんなカメラは捨てなさい〜

著者 赤城耕一
価格:1,800円+税
電子書籍版:1700円+税

<紙版>
Amazon
ヨドバシカメラ.com
紀伊國屋書店

<電子版>
Amazon Kindleストア
「ズームレンズは捨てなさい!」
著者 赤城耕一
価格:1,800円+税
電子書籍版:1500円+税

<紙版>
Amazon
ヨドバシカメラ.com
紀伊國屋書店

<電子書籍>
Amazon Kindleストア