TOP > コンテンツ一覧 >

The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜

12
The Best LENS 〜このボディで使いたいレンズ!〜
「どのレンズを選ぶべきか・・・?」
それは写真を制作する者にとって永遠の課題であり、撮影に出かける前に毎回悩むところ。悩みぬいた末に「うーん、やっぱり標準ズームレンズで」なんて優柔不断になっていませんか?そんな貴方に、赤城耕一がカメラのボディごとにベストチョイスとなるレンズをご紹介します。
公開日:2014/11/15

フォクトレンダー・ヘリアー40mmF2.8

text & photo 赤城耕一

ソニーα7に装着したヘリアー40mmF2.8。α7系のデザインに決して日和ることはなく、これまでのVMマウントレンズと同様にクラシカルデザインを踏襲していることに製品の思想がある。

コシナから、いっぷう変わった交換レンズが登場した。これが「フォクトレンダー・ヘリアー40mmF2.8」である。
焦点距離からすれば準標準レンズ的な扱い。フルサイズ対応のイメージサークルをもっているレンズだが、外観はクラシックレンズにみえるのがとても興味深い。作り込みやニッケルメッキふうの質感は舌を巻くほど美しい。
これはまたまたコシナお家芸のレトロデザインの新しいライカMマウント互換レンズがまた登場したのかと思ったアナタ。完全にハズレであります。
なんと、このレンズはVMマウント(ライカMマウント互換)でありながらもソニーEマウントカメラ用の専用レンズとして開発されたというものすごい変化球レンズなのである。
なぜVMマウントなのかといえば理由はとても単純である。それは先に同社から発売されているヘリコイド機能内蔵のVMマウントをソニーEマウントに変換するアダプター「VM-Eクローズフォーカスアダプター」用のレンズとして開発されているからである。



VM-Eクローズフォーカスアダプターとヘリアー40mmF2.8。このアダプター専用レンズであることはレンズの鏡胴基部にも明確に刻印されているが、接写リングなどと併用する応用性はありそうだ。この組み合わせでの最短撮影距離は0.5m。

このため、本レンズにはヘリコイド自体が存在していない。当然のことながら外周にはフォーカスリングもない。フォーカシングはVM-Eクローズフォーカスアダプターのフォーカスリングを使用することになる。つまりVMマウントなのに同社のツァイス イコンやベッサや本家ライカなどに直接装着して使用できないというすごい仕様なのである。
さらに驚いたことに沈胴式を採用していることもすごい。一部のクラシックなライカマウントレンズでは、アダプターを介してミラーレス機に付けて沈胴させると後玉がセンサーと干渉してしまう危険もあるが本レンズはあらかじめ珍胴しても問題ない設計になっているという。沈胴させるとカメラ全体が平坦になる印象で収納もしやすくなる。
フォーカシングはVM-Eクローズフォーカスアダプターのヘリコイドを使うためレンズ本体は回転しないので、沈胴式を採用しながらも数値表示は常に上部にあり、非常に使いやすいことも評価したい点だ。α7系のカメラは画像拡大を瞬時に行うことができるので、まるでEマウント純正のMFレンズを使うかのごときの操作感なのである。これがなんとも不思議な感覚なのだ。



レンズを沈胴させた状態。沈むのはわずかだが収納は明らかによくなる。もちろん撮影時に伸ばすのを忘れないように注意せねばならない。

レンズ構成は3群5枚で、正統派のヘリアータイプだが1枚の非球面レンズを採用していることも注目点。旧来のレンズの構成を使い、巧みに最新技術を投入してくるのはコシナの得意技であるが、このためデジタル専用レンズながらも味わいのある描写性を持っているのが素晴らしい。
なお現時点では試していないがVMマウントということはMマウント用の接写リングやベローズなどと組み合わせることができれば撮影も可能となるはず。ライカMやM-Pではライブビュー撮影もできるから、フォーカシングは問題なくできる理屈である。




ドーム型とストレート型、ふたつの金属製レンズフードが付属する。それぞれの効果というよりも、デザイン面でのこだわりのためというのがいかにもコシナらしい仕事だ。


<Voigtlander HELIAR  40mm F2.8 実写>

一段絞った状態。合焦点のシャープネスは素晴らしく高く、ボケ味も自然である。クリアなヌケのよさはさすが現代レンズという印象だが、凡百のズームとは明らかに再現が異なる印象である。SONY α7 絞りf4  AE AWB ISO400


ロングの風景でも非常に仔細なところまで解像しており、このあたりはかつてのヘリアーらしい面影はなくデジタル対応のレンズらしい。わずかな周辺光量落ちが効いている。SONY α7 絞りf8  AE AWB ISO200  


最短撮影距離0.5mにて撮影してみた。Mマウント互換という印象があるからこういう写真が気軽に撮れてしまうことになぜか驚いたりする。撮影距離による性能変化はまったく感じられない。SONY α7 絞りf5.6  AE AWB ISO200


逆光条件でも優れた特性を発揮する。とてもヌケのよいレンズであり、緻密な描写を必要とする風景写真にも向いていると思う。エッジはあくまでもシャープで微妙な光をうまく拾ってくれている。SONY α7 絞りf5.6  AE マイナス1.3補正 AWB ISO200


観光地にあった造花。サイケな雰囲気が出るようにこれも最短撮影距離で撮影してみた。絞りは開放。特別な大口径レンズではないけれどボケの感じがよく少し個性的。開放絞りでも安心して使うことのできるレンズである。SONY α7 絞り開放  AE AWB ISO200


夕暮れの微量光下で。これも最短撮影距離で一段絞った程度。少しいじわるな条件だが、らくらくとクリアするコントラストの高い秀逸な性能である。金属の質感描写、階調の繋がりも申し分ない。性能面はまず突っ込みどころがない。SONY α7 絞りf4 AE マイナス1補正 AWB ISO800


幹の間から小さな月がみえた。これも夕暮れ時の撮影だけど、幹の質感とか枝葉の描写が感動的。ヌケがよいことから空気感すら感じさせる。レトロな構成だがF値に無理がなく非球面やコーティングが巧みだからだろうか。SONY α7 絞りf8 AE マイナス0.7補正 AWB ISO400


【メーカーサイト】
コシナ フォクトレンダー・ヘリアー40mmF2.8
http://www.cosina.co.jp/seihin/voigt/acce/adapter/40mm-f2_8/

VM-Eクローズフォーカスアダプター
http://www.cosina.co.jp/seihin/voigt/acce/adapter/vm-e.html
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
  「赤城写真機診療所 MarkII」
〜高速連写はやめなさい〜

著者 赤城耕一
価格:1,900円+税
電子書籍版:1800円+税

<紙版>
Amazon
ヨドバシカメラ.com
紀伊國屋書店

<電子版>
Amazon Kindleストア
「赤城写真機診療所」
〜そんなカメラは捨てなさい〜

著者 赤城耕一
価格:1,800円+税
電子書籍版:1700円+税

<紙版>
Amazon
ヨドバシカメラ.com
紀伊國屋書店

<電子版>
Amazon Kindleストア
「ズームレンズは捨てなさい!」
著者 赤城耕一
価格:1,800円+税
電子書籍版:1500円+税

<紙版>
Amazon
ヨドバシカメラ.com
紀伊國屋書店

<電子書籍>
Amazon Kindleストア