TOP > コンテンツ一覧 >

銀塩手帖

5
銀塩手帖
フィルム、銀塩写真に関する情報を記録していきます。
公開日:2013/07/30

カメラについて知る・日本カメラ博物館

photo & text 中村文夫


日本一の所蔵量を誇るカメラ博物館


日本カメラ博物館は、写真黎明機から現在に到るまで、世界中で製造販売されたカメラやレンズ、撮影用アクセサリーなどを集めた日本最大の博物館だ。収蔵品は機材だけに止まらず、歴史的な価値も持つ貴重な写真、写真集やカメラ専門誌など写真に関するあらゆるジャンルを網羅。なかでも見どころは1839年にフランスのダゲールが発明した世界初のカメラで、日本ではここでしか見られない世界遺産級のお宝だ。 

展示場は常設展と特別展に分かれ、常設展会場には日本初の市販カメラをはじめ、ライカなど世界各国を代表する数々の名機を展示。特別展会場では、メーカーや原産国、カメラの型式などにテーマを絞った企画展を開催している。

日本カメラ博物館では、このほか著名写真家の作品が見られるギャラリーJCII フォトサロンや、貸し暗室、カメラ雑誌のバックナンバーなどを揃えたJCII ライブラリーも併設。また夏休みには子供向けにピンホールカメラ製作やカメラ分解教室を開講するなど参加型イベントも積極的に行っている。

<常設展>
 世界初のダゲレオタイプから最新のデジタルカメラまで、カメラ発展の歴史を体系的に知るうえで欠かせないカメラが一堂に並ぶ。なかでも「日本の歴史的カメラ」コーナーは見どころたっぷり。カメラ博物館が毎年選定してきた歴史的価値のあるカメラを年代順に展示してあるので、自分が初めて使ったカメラ、欲しくても買えなかったカメラなど、どんな世代にとっても懐かしいカメラを見つけることができる。

<特別展>
現在「カメラQ&A カメラがわかる展」を開催中。写真が写る原理に始まり、カメラの型式による内部機構の違いなどを初心者向けに分かりやすく解説。小中学生の夏休みの自由研究には打って付けの内容だ。さらにめったに目にすることがないカットモデルや分解モデルが見られるなど、メカマニアにとっても興味深い企画展と言えるだろう。


常設展会場


「日本の歴史的カメラ」を中心に、写真創生期のダゲレオタイプ・カメラ、江戸時代末に日本で作られた暗箱などさまざまなカメラが並んでいる。


ジルー・ダゲレオタイプ・カメラ
1839年フランスのダゲールが発明し、世界で初めて市販されたカメラ。銀メッキした銅板を感光材料に使うことから、銀板カメラと呼ばれている。世界で数台しか現存しない貴重な資料だ。


ハンザ・キヤノン
1936年に精機光学(現キヤノン)が製造。総合写真商社の近江屋写真用品(現ハンザテック)が販売したレンズ交換式レンジファインダー機。レンズや距離計などの光学系は日本光学(現ニコン)が製造した。


ズノーペンタフレックス
1958年、ズノー光学(現ズノー)が発売。世界で初めて完全自動絞りを採用。ペンタプリズムファインダー、クイックリターンミラーにこれが加わり、近代35ミリ一眼レフの基本形が完成した。35ミリ一眼レフ時代の幕開けを告げた記念すべきカメラ。


ドリュー2-16
1955年、ドリューカメラが発売したピストル型カメラ。弾丸のような形をした閃光弾を装填し、引き金を引くとフラッシュが光ると同時にシャッターが切れる。16ミリ小型フィルムを使用。


コーワ ラメラ
風邪薬のコルゲンコーワで有名な興和が1959年に発売したラジオ付きカメラ。実際にはラジオ部分が大半を占めている。そのためカメラ付きラジオと呼ぶべきかも? 16ミリフィルム使用。


コダックプロフェッショナルデジタルスチルカメラシステムDCS

1991年にニコンF3をベースに開発された初期のデジタル一眼レフ。画素数は130万で記録媒体は200Mのハードディスクを使用。現在ではカメラ付き携帯電話並みのスペックだが、発売価格は20000〜25000ドル。アルベールビル冬季オリンピックで活躍した。



中島康夫ライカコレクション
ライカのコレクターとして知られる中島康夫氏が寄贈したライカコレクション。50台以上の歴代のライカカメラが整然と並ぶ。


オモチャカメラコーナーには、コンバットカメラマンに扮したもバービー人形も。持っているカメラは,コダックエクトラ?


撮影用アクセサリーを展示するコーナーには、戦前に玄光社が発売していたサロン露出計も展示されている。

体験コーナーでは、二眼レフをはじめとするカメラが実際に操作できる。



特別展会場


2013年7月末現在「カメラQ&A カメラがわかる展」を開催中。
会期は2013年10月20日まで。


写真が写る仕組みを分かりやすく解説するコーナー

カメラの部品をきれいにレイアウトした分解モデル。


ニコンFフォトミックカットモデル


一眼レフの仕組みを理解するための模型。
ボタンを押すと絞りやミラー、シャッターが動く。
スマートフォンや、デジタルカメラしか知らないお子様たちにも、ぜひ一覧レフカメラの仕組みを知ってほしい。


1845年にフランスで作られたダゲレオタイプカメラと銀板写真


ゴールドカメラを集めたコーナー


鳩に取り付けて地上の風景を撮影する空撮用カメラ。タイマーを内蔵し、鳩が上空に達したときにシャッターが切れる。撮影アングルは鳩任せなので、実用性はほとんどなかったらしい。


【施設情報】


日本カメラ博物館
住所:〒102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCII 一番町ビル(地下1階)
TEL:03-3263-7110
開館時間: 10:00〜17:00
休館日:毎週月曜日 (月曜日が祝日の場合は翌日の火曜日)
および年末年始など
ウェブサイト:http://www.jcii-cameramuseum.jp/




中村 文夫(なかむら ふみお)

1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。
BACK NUMBER
  2014/07/04
メンテナンスでGo! Go!