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銀塩手帖

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銀塩手帖
フィルム、銀塩写真に関する情報を記録していきます。
公開日:2014/01/31

日本カメラ博物館特別展「The LEICA ライカの100年」

photo & text 中村文夫


1925年の発売以来、ライカは35ミリ小型カメラの代名詞として、世界中のカメラファンに愛されてきた。なかでも日本は熱心なライカファンが多く、その人気は不変。その証拠に中古カメラ店へ行けば、必ずと言って良いほど、ライカ製品は一番目立つ場所に並んでいる。
現在、日本カメラ博物館(東京・半蔵門)で開催中の特別展「The LEICA〜ライカの100年〜」は、ライカの生みの親であるオスカー・バルナックが、ライカの原点となったウル・ライカを製作してから今年で100年を迎えることを記念して企画されたもの。貴重なプロトタイプから最新のデジタルカメラに至るまで、あらゆるライカを網羅。いちどにこれだけ多くのライカ製品が展示されるのは、とても珍しい。
ライカの情報はネットをはじめ巷に溢れかえっているが、写真やテキストから得た情報と自分の眼で現物を確かめて身に付けた知識は、まったく別のもの。ぜひ、この機会にホンモノの知識を身に付けて欲しい。ここでは展示会場で見つけた資料性の高い製品と、ライカならではの魅力を放つ製品をピックアップしてご紹介する。



バルナック型ライカ
発明者のオスカーバルナックにちなんで、I〜III型までのモデルはバルナック型と呼ばれている。



ウルライカ[レプリカ](1914年)
エルンストライツ社の技術者、オスカー・バルナックが、当時ライツ社で製造していたシネカメラの露出検査用として製作した。映画の2コマ分を1画面として使う24×36ミリのフィルムサイズを採用したスチルカメラで、後にこの画面サイズはライカ判と呼ばれるようになる。2台製造されたうちの1台が現存し、ライカカメラ本社に保管されている。




ライカ0型(1923年)
市販の準備段階で製造されたプロトタイプ。フィルム巻き上げと同時にフォーカルプレンシャッターをチャージ、沈胴式50ミリレンズ装着など、後に35ミリ小型カメラのスタンダードになる機構を採用していた。ただしこのモデルでは,シャッターチャージの際にスリットを閉じるセルフキャッピングが搭載されておらず、フィルム巻き上げ時はレンズにキャップをかぶせる必要がある。製造台数はわずか25台とも30台ともいわれている 。コレクションとしても高い価値を持ち、最近のオークションで2億2000万円で落札されたことでも知られている。展示中のカメラは日本カメラ博物館の所蔵品で、おそらく本展示の中で最高額のカメラ。2000年に復刻版が製造販売された。

 

ライカI型 [A型]※(1925年)アナスティグマット付


ライカI型 [A型]※(1925年)エルマックス付
ライカの市販第一号機。初期モデルにはアナスティグマット、エルマックスレンズが装着され、後にエルマーに変更。0型との大きな違いはセルフキャッピング機構が採用されたこと。※[ ]内は日本式の呼称




ライカI型[C型](1930年)
ライカとして初めてレンズ交換式を採用。マウントはねじ込み式のライカスクリューマウント。最初はレンズとボディの組み合わせが決められていたが、後にフランジバックの統一により、レンズとボディが自由に組み合わせて使えるようになった。マウント面に刻印された0マークがその目印。




ライカIIId(1940年)
ライカとして初めてダイカスト製ボディを採用したIIIcにセルフタイマーを追加したモデル。427台しか製造されていない稀少品だ。写真のカメラの底部には迅速巻き上げ装置のライカピストルが付いている。




ライカIc(1949年)
IIIcからファインダーとスローシャッターを省いたモデル。写真のカメラにはニューヨークライツが販売したウォーレンサック製ベロスティグマット50ミリF3.5を装着。レアなレンズがさりげなく組み合わされているのも、この企画展の見どころだ。




M型ライカのラインアップ
1954年に発売されたM3以降の機種をM型と呼ぶ。レンズマウントをねじ込み式のスクリューマウントからワンタッチで着脱できるバヨネット式に変更。ビューファインダーとレンジファインダーを一体化し、構図決定とピント合わせが同時にできる。視野を示すフレームは採光式ブライトフレームでパララックス補正機構を内蔵。フィルム巻き上げもノブ式からレバー式になった。




ライカM2-R(1966年)
ライカM4に採用されたラピッドローディングスプールを搭載したM2




ライカM1(1959年)
M2から距離計を省いたコストパフォーマンス重視モデル。有償でM2に改造できた。




ライカCL(手前)とライツミノルタCL(1973年)
ライツ社が設計し、日本のミノルタが製造した。海外ではライカCL、日本国内ではライツミノルタCL名で販売された。



一眼レフのラインアップ
1965年にライカはフレックスシリーズで一眼レフ市場に参入。1976にはRシリーズを発売し、2002年発売のR9が最後の製品になった。




ライカフレックスI型(1965年)
一眼レフの第一号機。外光式露出計を内蔵している。




デジタルカメラ
ライカは1998年、コンパクトタイプのデジルックスでデジタルカメラ市場に参入。
2005年にライカR8、9に取り付けるRモジュール。2006年にデジタルレンジファインダーカメラのライカM8を発売。昨年、フルサイズセンサーを搭載したライカMを発売した。




特殊モデル

ライカラクサス(1929年)
金属部分を金メッキし、革張りをトカゲ革に変更したた豪華モデル




ライカIIIa 記念贈呈品(1936年)
当時のライカは、ライカの普及に貢献したプロカメラマンやディーラーなどに、特別な製造番号のボディを贈呈した。写真のカメラは、大阪にあった河原写真機店のオーナー河原栄一氏にネームを刻印して贈呈されたNo.230000の製品。





ライカ250(1935年)
250枚撮りの長尺フィルムが装填できる特殊ボディでリポーターの別名を持つ。展示中のカメラは底部に「陸登研二科」の刻印がある。東京登戸にあった陸軍登戸研究所で使用されていたもので、二科とは特殊戦理化学資材、防諜機材、破壊謀略機材の開発、研究を行っていた部門のこと。文献の複写などに使用されたらしい。




軍用カメラの数々
ライカは世界各国で軍用カメラとして活躍した。なかでもスウェーデン王室の紋章であるスリークラウンを刻印したモデルは有名。このほかブラック塗装のライカIIIf、オリーブドラブ塗装のM1。M4をベースにした米軍用KE-7Aなども展示されている。



M2から距離計と省きズマロン35ミリF2.8を固定式にした産業用カメラ。電話度数計のカウンターを撮影するために使用された。



ヒンデンブルグ号で被災したカメラ
1937年、アメリカで爆発炎上事故を起こした飛行船、ヒンデンブルグ号の乗客が所有していたライカIIIa。



アクセサリー
ライカは、カメラ本体とレンズ以外に、多彩なアクセサリーを用意していたことで有名。ファインダーや単独距離計などの小物はカメラ店でもよく見かけるが、暗室用品など大きなものは、なかなか目にする機会がない。



ライカI型と同時に発売されたフィルム用現像機



レンズターレット
スクリューマウントのレンズ3本を取付け、レンズ交換を瞬時に行うM型ライカ用アクセサリー。その形状から、日本では天狗の団扇という呼び名がある。




引伸機
ライカの引伸機の最初の製品は、1925年発売のFILARで、後にバロイやフォコマートなどの名機が誕生した。特別展では、これら引伸機も展示。これだけ多くの引伸機が並ぶと壮観だ。




会場の中央ウィンドウには、珍しいアクセサリーを組み合わせたライカを大量に展示。実際の使用状況が再現してあるので、単体の展示では味わえないない臨場感が伝わって来る。いわば「ライカの宝島」だ。またビゾフレックスにデジタルカメラのM8を組み合わせるなど、デジタル時代に合わせた新しい提案もあり、何時間見ても見飽きることがない。ライカキャップを被ったテディベアは、ライカ製品を扱う商社が、販売促進用に製造したもの。


書籍、文献

カメラ本体だけでなく,ライカ関係の書籍や文献類も充実。


1974年まで日本でライカ製品を扱っていたシュミット商会が発行した有名なパンフレット。カメラ専門誌に掲載されたコンタックスの優位性を説いた記事に対抗するために発行された。



オスカー・バルナック自筆メモ
距離計の連動メカ設計の際のアイデアスケッチだろうか?



photo:編集部
日本カメラ博物館 特別展
「The LEICA 〜ライカの100年〜」
開催期間:2013年10月29日(火)〜2014年3月2日(日)
開館時間:10:00〜17:00
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日の火曜日)
住所:〒102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCII 一番町ビル
入館料     一般 300 円、中学生以下 無料
団体割引(10名以上)一般 200 円

ウェブサイト
日本カメラ博物館
http://www.jcii-cameramuseum.jp/

特別展
http://www.jcii-cameramuseum.jp/museum/special-exhibition/20131029.html



☆★クイズコーナー 中村文夫からのライカ・カルトクイズ!!★☆

Q:これは何でしょう?


1〜3から正解を選んで下さい。
1:機械式インターバルタイマーを作動させる錘(すい)

2:コピースタンドで文献や写真を複写する際、画面の中心部に垂らして正確にフレーミングするための錘

3:気象観測用に製造された地震計の部品

☆応募方法とプレゼントについてはこちらのページでご覧下さい。



中村 文夫(なかむら ふみお)

1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。
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