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銀塩手帖

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銀塩手帖
フィルム、銀塩写真に関する情報を記録していきます。
公開日:2016/01/21

日本カメラ博物館 特別展「100歳のカメラ業界人 田中政雄が選んだ古今東西カメラ100台」

photo & text中村文夫

2016年1月9日(土)〜3月27日(日)まで、日本カメラ博物館にて特別展「100歳のカメラ業界人 田中政雄が選んだ古今東西カメラ100台」が開催されている。



田中政雄さんは大正4年(1915年)生まれ。戦後まもなくカメラ店を開業し、全日本写真材料商組合連合会や東京写真材料商業協同組合で要職を歴任。カメラ研究家としても活躍し、日本初のカメラ博物館であるペンタックスギャラリー開設時に北野邦雄さんとヨーロッパにカメラを買付に行ったほか、クラシックカメラ専門誌の「カメラレビュー」でも創刊当時から記事を執筆するなど、現在のクラシックカメラブームの基礎を築いたカメラ業界の立役者だ。
1月9日から始まったこの特別展は、写真業界紙のカメラタイムズに11年に渡って田中さんが連載した「カメラのはなし」で取り上げた288台の中から100台を選び紹介するものだ。昨年春、田中さんの満100歳記念として企画されたが、100歳の誕生日を迎えてまもなく田中さんは急逝。田中さんの遺志を継ぐ形で今回の特別展が実現した。
会場に並んだ100台のカメラはドイツや日本だけでなフランスやスイス、旧ソ連や東独などの旧共産圏など、世界中のカメラメーカーを網羅。さらに高級機から初心者向け入門機まで非常にバラエティに富み、田中さんのカメラに対する造詣の深さを示す見事な顔ぶれだ。またカメラと一緒に展示された「カメラのはなし」の記事も簡潔かつ的確で、さすがそのカメラと同時代を生きた田中さんなさらではの内容。カメラマニアだけでなく、クラシックカメラ初心者も楽しめる特別展と言えるだろう。



田中政雄さん
大正4年(1915年)3月24日東京生まれ。平成27年(2015年)4月13日逝去。(享年100)
全日本写真材料商組合連合会カメラ部長や東京写真材料商業協同組合理事長などの要職を務めたほか、広範な知識と経験をもとにカメラJIS規格委員、日本写真機光学機器検査協会(現・日本カメラ財団)の初代歴史的カメラ審査委員として活躍した。
経営するカメラ店は、青梅街道と環状8号線が交差する荻窪の四面道にあったが10年ほど前に閉店。その後はお得意さんを相手に自宅でカメラ販売を続けていた。この写真は亡くなった年の1月29日、田中さん所蔵のライカノクチルックス50ミリF1.1をライカM9に装着して撮影した。



『カメラのはなし』は「カメラ販売に携わる人たちにカメラのことをもっと知ってもらおう」ということからスタート。1992年から2003年まで288回にわたり写真業界紙のカメラタイムズに載連された。インターネットが普及していなかった当時、乏しい資料の中からこれだけ正確な情報を集めた労力は計り知れない。






100台のカメラは「カメラのはなし」の記事と一緒に展示されている。



開会式で挨拶する日本カメラ財団の谷野理事。テレビ東京の「なんでも鑑定団」に出演する際、分からないことがあれば田中さんのアドバイスを受けていたという裏話を披露した。



オントフレックス (1933年・フランス)「カメラのはなし」の第1回目に登場した記念すべきカメラ。レボルビング機構を搭載したユニークな二眼レフだ。




スプートニク(1955年・旧ソビエト連邦)
6×6判二眼レフを二台繋げたようなスタイルをしたステレオカメラ。ロシアカメラがブームになる以前から、こんなカメラを取り上げていたとは!



ボルシーC(1950年・アメリカ)
35ミリフィルムを使うアメリカ製二眼レフ。アルパフレックスを手掛けたジャック・ボルスキーが設計、自らの名を冠して発売した。




テッシナ(1950年・スイス)
腕時計のように手首に装着できる超小型二眼レフ。スプリングモーターでフィルムを巻き上げる。



マーキュリーII(1940年・アメリカ)
円盤状のシャッター幕が回転して露光するロータリーシャッターを採用。135フィルムを使用し18×24ミリの画面を撮影する。




コンタックスD(1950年・旧東ドイツ)
コンタックスSに次いでファインダーにペンタプリズムを採用した35ミリ一眼レフ。レンズマウントはM42のスクリュー式。



アルファ2(1963年・ポーランド)
縦型の35ミリレンズシャッターカメラ。写真に写っているブルーのほか、グリーンとレッドのカラーバージョンがある。




キンシ(1941年・日本)
理研光学(現リコー)が戦前に発売した127フィルムを使用するクラップカメラ。金鵄勲章に由来する商品名が時代背景を反映している。


カリプソ(1960年・フランス)
スピロテクニーク社が開発した35ミリ水中カメラ。後にニコンが製造を引き継ぎ、ニコノスとして普及する。



ベビースーパーフレックス(1938年・日本)
現在は自由雲台メーカーとして知られる梅本製作所が、戦前に製造した127フィルムを使うレンズ交換式一眼レフ。



アムレッテ(1925年・オーストリア)
135フィルムを使用する初期の製品。画面サイズは24×35ミリで、シネカメラのようにパーフォレーションをかき落としてフィルムを送る。



ベガIIa(1950年・イタリア)
イタリア製のライカコピー機。軍艦部のボディカバーにテーパー加工を施すなど、デザインに凝ったイタリアらしい製品だ。



フォトン(1948年・アメリカ)
スプリングモーターを内蔵し6コマ/秒の連写ができる。100万ドルの開発費を投じて開発された。




レイフレックス(1951年・イギリス)
ペンタプリズムではなく、2枚のミラーをファインダーに採用した35ミリ一眼レフ。



ザ・コダック(1888年・アメリカ)
ロールフィルムを使用する最初のカメラ。フィルムを詰めた状態で販売され、取り終わるとカメラごとメーカーに送付。プリントと一緒に新しいフィルムを詰めたカメラが返却された。



田中さんの著書を展示するコーナー。なかでも「二眼レフのはなし」は内外の二眼レフを網羅した資料として、二眼レフコレクターの間で評価が高い。





日本カメラ博物館 特別展
「100歳のカメラ業界人 田中政雄が選んだ古今東西カメラ100台」

開催期間:2016年1月9日(土)〜3月27日(日)
展示協力: カメラタイムズ社
開館時間:10:00〜17:00
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日の火曜日)
住所:〒102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCII 一番町ビル
入館料:一般 300 円、中学生以下 無料/団体割引(10名以上)一般 200 円

<関連サイト>
日本カメラ博物館 特別展
http://www.jcii-cameramuseum.jp/museum/special-exhibition/20160109.html

日本カメラ博物館
http://www.jcii-cameramuseum.jp/



中村 文夫(なかむら ふみお)

1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。
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