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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2014/05/29

チノン Bellami HD-1 機能編

photo & text 大浦タケシ


チノンBellami(ベラミ)と聞いて、懐かしく思う写真愛好家はきっと古き良きフィルムMF時代を経験してきた人だろう。1981年に発売されたこの35ミリコンパクトカメラは、馬車のレリーフが施された観音開きのレンズバリアで話題を集めた。チノンについては60年代より8mmシネカメラを次々にリリースし、70年代に入ってからは35mm一眼レフカメラやその交換レンズなども積極的に手がけ国内外で一時代を築く。しかし、8mmシネカメラの衰退をきっかけとした事業の失敗などから97年コダック傘下となり、その後ブランドは消滅。2005年創業者一族がチノンの名を買い戻した後、トイデジタルカメラなどを販売し現在至っている。先のBellamiは同社の黄金時代末期に発売されたものである。


1981年発売のチノンBellami(35mmコンパクトフィルムカメラ)と最新のチノンBellamiHD-1。名前ばかりではなく、どこか共通のアイコンがあるとなおよかったように思える。ちなみに先代チノンBellamiの中古価格は1万円から1万5,000円ほど。

そのBellamiの名を再び冠するレンズ交換式デジタルカメラ「Bellami HD-1」は、新生チノンの意欲作。ボディシェイプは他社のビデオカメラとは大きく異なり、往年の8mmシネカメラを彷彿させる。カメラ底部の着脱可能なグリップを握って構えれば、60年代か70年代にタイムスリップしたかのようだ。さらに見る者を引きつけるのがピストルのトリガーを模した赤いシャッターレバー。丸いトリガーガードとともにBellami HD-1のアクセントにもなっている。
ただボディ外装は見た目よりもプラスティッキーで高級感からは若干遠く感じられる。シャシーは剛性感の高いダイキャスト製とのことであるが、外装にももう少し気を使ってもらいたく思える。また着脱式とするグリップはカメラに装着した際ぐらつくことがあり心もとない。いずれも今後の改善を期待したいところである。




カメラ左側面。ボタン、ダイヤル類はここに並ぶ。左下のダイヤルのように見えるものは十字キー。操作感はやや散漫な印象だ。中央にOKボタンを備える。
右側面はバッテリー収納部の蓋がその大半を占める。トリガーガード下部の2つの穴はストラップ用。

CAMERA Fan的トピックといえるのが、Dマウントを採用していることだろう。50年代から60年代半ばに世界的に人気を博したダブル8規格のシネカメラに採用されていたマウントで、対応するレンズは当時国内外の多くの光学メーカーからリリースされていた。レンズはほとんどの場合単焦点レンズで、35mmフィルムのパトローネほどの大きさだが、半世紀以上を経た味わい深い描写は、現在オールレンズグルメのなかに熱烈なファンが存在する。
なお、Bellami HD-1にはDマウントレンズ4mmF1.2が付属する。焦点距離倍数は7倍なので、このレンズはフルサイズ判に換算して28m相当の画角となる。また、別売オプションとして、CマウントレンズやM42マウントレンズでも撮影の楽しめるマウントアダプターも用意されている。



撮像素子は、有効210万画素1/3インチMOSセンサーを採用。


デバイスとしては、撮像素子に1/3インチMOSセンサーを採用。有効画素数は210万画素と現代の尺度からすると些か心細い。動画撮影主体のカメラなので致し方ないかもしれないが、せめて600万画素ぐらいあるとよりカメラとしての魅力もぐっと増しただろう。静止画記録フォーマットはJPEGとDNGが選択可能。コントラストや彩度などのパラメータの調整も楽しめる。動画機能については、フルHD(30fps)での撮影に対応する。

大胆に割り切ったと思えるのが、液晶モニターを省略していることだ。そのため、一般的なカムコーダーのようなスタイルでの撮影はできず、終始ファインダー(EVF)に接眼して撮影を行わなければならない。また、再生やメニュー設定などもファインダーを覗いて行う。もっともレンズはマニュアルフォーカスゆえに、撮影の際は接眼したほうがピントの状況は把握しやすいことはいうまでもない。
そのフォーカシング時に積極的に活用したいのが、デジタルズーム機能。ライブビューの拡大機能のない本モデルでは、ピント合わせの際この機能を使用する。拡大部分は画面中央のみとなってしまうものの、精度の高いピント合わせが可能なので、ユーザーは憶えておくとよいだろう。



インターフェースとして、写真の最上段にはSDカードスロット、中段にUSB端子とHDMI端子、下段にAUX(補助入力)端子とヘッドフォン端子を備える。
カメラ上部にはデジタルズームボタンを備える。撮影では画質の劣化を招くため、通常は使いたくない機能であるが、ピントを合わせるときに使用すると意外にも便利。



バッテリーは単三形電池2本を使用。バッテリーの持ちはあまりよくないので、長時間撮影を楽しむ際は予備が必要だろう。カメラ底部のグリップは着脱式。
バッテリーチャージャーが付属する。電池はチャージャーの両側面に1本ずつ入れるタイプ。

Bellami HD-1は、正直にいえば動画でその真価を発揮できるカメラだ。静止画機能は残念ながらオマケといってよい。しかし、動画、静止画に関わらずシーンに合わせてレンズを交換し、マニュアルでピントと絞りを調整する一連の作業は、カメラ本来の撮る楽しさを大いに知らしめるものである。さらにダブル8時代にくらべより正確なフォーカシングも可能になったことで、半世紀以上も前につくられたDマウントレンズ本来の優れた描写特性を知ることもできる。静止画の記録画素数アップは今後に期待したいが、Dマウントレンズの世界に浸れる貴重なカメラといえる。


<Dマウント・シネレンズギャラリー>

今回の機能編では、Bellamiの機能とスペックについて解説しました。
次回、実写編ではこれらオールドシネレンズで撮影した静止画と動画の作例を公開します。



シュナイダー・クロイツナッハ CINEGON 5.5mmF1.8


ズノー ZUNOW-ELMO Cine13mmF1.1


富岡光学 TOMINON6.5mmF1.4



ケルン Swittar 13mmF0.9


チノン 4mmF1.2
こちらのみオールドレンズではなく、Bellami HD-1にキットとして付属するレンズ。


<メーカーサイト>
チノン:
http://chinon.co.jp/
製品ページ:
http://chinon.jp/bellami/
 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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