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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2014/10/10

SONY QX1でオールドレンズを使う!

photo & text 大浦 タケシ

SONY QX-1 + LEICA Summicron 35mm F2 + XPERIA Z2

現在、最もガジェットマニアの心をくすぐるデジタルカメラとは? ちょっと前であれば、ボディの液晶画面とフレーム部分が回転するカシオEX-TRシリーズのようなカメラだったかも知れない。しかし今は、デジタルカメラのマストデバイスというべき液晶モニターを省略し、代わりにスマートフォンとの連携で撮影の楽しめるソニーのレンズスタイルカメラが最右翼といっていいだろう。

そのレンズスタイルカメラに初のレンズ交換式とするモデルがライナップされた。モデル名は「QX1」。マウントはEマウントを採用する。ソニーのレンズスタイルカメラのラインナップは「QX10」「QX100」「QX30」とあるが、“1”の称号はいうまでもなくトップエンドの証しである。本モデルに関しては、すでに多くのカメラ誌Web等で紹介され尽くされているので、詳細なスペック等についてはここでは割愛させていただく。代わりにレンズグルメの愛読サイトとして、QX1とオールドレンズとのマッチングをチェックしてみたい。


純正レンズE PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSを装着したところ。QX1のボディ単体の実勢価格は本テキスト執筆時点で38,750円前後。




 イメージセンサーはAPS-Cサイズ有効2010万画素Exmor CMOSセンサーを採用。このモデルの人気如何によってはフルサイズモデルも、と淡い期待を抱いてしまう。  バッテリーはα7シリーズと同じNP-FW50を採用。撮影可能枚数は約440枚(CIPA準拠)。記録媒体はmicroSD/microSDHC/microSDXCメモリーカード。メモリースティック マイクロも使用可能だ。




ストロボを搭載。ガイドナンバーは4(ISO100・m)であるが、記念写真などの際は重宝するはずだ。  Play Memories Mobileによるライブビュー画面。スマートフォンのタッチパネルの性能にもよるが、筆者の場合は、慣れないとミスタッチが多いように感じた。

マウントアダプターと見間違えてしまいそうなボディに内蔵するイメージセンサーはAPS-Cサイズ。装着するレンズには1.5倍の焦点距離倍数がかかる。望遠系のレンズの装着では、画角はより狭くなるのでありがたく思えることも多いが、広角レンズの使用では残念ながら物足りない。例えばMマウントのスーパーアンギュロン20mmを装着した場合、実際の画角は30mm相当となってしまう。その辺りに関しては、割り切りも必要となるだろう。なお、有効画素数は2010万画素と十分すぎる解像度を誇る。

セッティング〜QX1とスマートフォンの接続

QX1とスマートフォンとの接続は、Wi-Fi接続か、NFC対応機器の場合はNFC機能で接続する。Wi-Fi接続の場合、スマートフォンの「Wi-Fi設定」で本体裏蓋に記載のSSID(ネットワーク名)を選んでパスワードを入力して接続する。NFC対応のAndroidスマートフォンの場合は、より簡単でNFC機能をONにしてNFCマークにタッチするだけだ。今回使用したソニー XPERIA Z2もNFC対応のため接続は簡単だった。初回に接続を設定する必要があるものの、その後は簡単。煩雑さのようなものもない。QX1を接続後に専用アプリ「Play Memories Mobile」を起動して、カメラのコントロールを行う。ちなみにNFC機能に関しては、2014年10月現在、Android端末に対応機器があるのみで、iPhoneやiPadなどのiOS端末では非対応。先頃リリースを開始したiPhone 6/ iPhone 6Plusでも、外部機器とのNFC接続は不可能となっている。よってiPhoneユーザーはWi-Fi接続で使用する。

QX1とスマートフォンが通信を開始したら、カメラとスマートフォンをドッキングさせるために、QX1後部へアタッチメントを介してスマートフォンを装着するが、これが場合によっては難儀する。横幅の広いスマートフォンだとアタッチメントが挟みづらく、さらに機種によっては側面にボタン類があるため誤ってその部分を押すように挟んでしまうことがあるからだ。QX1本体からアタッチメントは外れるので、あらかじめスマートフォンに装着した後にQX1本体に装着するとよいだろう。




撮影では、スマートフォンの広々とした液晶画面を見ながらアングルを決めていくのは実に気持ちがよい。写真が上手くなったと思えるほどである。ただし、正確にMFでピント合わせを行おうとすると困難を究める。Play Memories Mobileには画像の拡大機能や、ピントの合った部分のエッジに色を付けるピーキング機能が搭載されていないからだ。デジタルズーム機能を使用する方法があるものの、ズーム倍率はわずか2倍。さほどの拡大率でないうえに、最大倍率になるまで画面のズームボタンを押し続けなければならないので使い勝手はいいとは言い難い。拡大機能もピーキング機能もアプリのファームアップで対応できるように思えるので、今後に期待したいところである。

さらに、慣れないと戸惑うのが実像とスマートフォンの液晶画面に表示される画像のタイムラグ。デジタルカメラのライブビューは、このところ大きく改善されタイムラグはほとんど気にならないレベルまできている。しかし、Wi-Fiを使用してライブビュー画像を転送するQX1では、まだまだその差は小さくない。さらにシャッターレリーズのタイムラグも心持ち大きい。動いている被写体をタイミングよく撮ろうとしてシャッターを切っても、撮影した画像では思いもよらないところに被写体があったり、動きによっては画面からはみ出してしまっていることも。QX1で撮影を楽しむときはそのことに留意して撮影を行う必要があるだろう。



QX1+LEICA Summaron 3.5cmF3.5+XPERIA Z2でスナップ撮影する著者
「これで撮っている姿は、全然カメラマンに見えないよねぇ〜」とつぶやく。



オールドレンズ撮影は意外と簡単。レンズの絞り、ピントをおおまかに目測で合わせてから、
スマートフォンの液晶を確認し、シャッターを切る。


XPERIA Z2の5.2インチ、トリルミナスディスプレイは、高画質で視認性バツグン。撮影は専用アプリPlayMemories mobile上の操作ボタンで行う。露出補正も可能である。


オールドレンズで撮影を楽しむ場合、撮影モードは絞り優先AEかプログラムAEを選択すればよい。絞りをセットすれば、あとはカメラ任せで露出は済んでしまうからだ。露出補正についてはプラスマイナス3EVまで対応。RAWフォーマットでの画像記録も可能としているので、色かぶりなどの調整も画質の劣化なしに楽しめる。なお、シャッターボタンについては、液晶画面以外にQX1本体にも備わっている。筆者の使用感としては、液晶画面のシャッターボタンをタッチするほうが、ブレは少ないように感じている。

シャッターを切ると、液晶画面にポストビューがすぐに表示され、同時にスマートフォンへの転送が始まる。転送される画像はリサイズされたものとし、デフォルトでは175万画素(3:2のとき)。転送に掛かる時間は2,3秒といったところだろうか。もちろんQX1本体に挿入されたマイクロSDカードにはフル画素の本画像が記録される。決してサクサクと撮れるものではないが、ある意味オールドレンズに似合うスローな撮影が楽しめるといってよい。

ちょっとしたコツや操作方法が身に付けば、オールドレンズを装着したQX1での撮影は楽しい。さらに、レンズグルメやガジェット好きの仲間が集まった席などでは、話題の中心にもなることだろう。しかもQX1自体はコンパクトであるため、カメラバッグに忍ばせておいても邪魔になるようなこともない。いくつかある不満にしても、同社のことだ、専用のアプリPlay Memories Mobileの進化によっていずれ解決するように思える。オールドレンズの新しい楽しみ方として捉えれば、これほど愉快なガジェットはない。


<SONY QX1 + オールドレンズ ギャラリー>

LEICA Summaron 3.5cm F3.5





絞りはF8。画面周辺部までしっかり解像しているが、これはAPS-Cフォーマットだからだろう。レンズの美味しい部分のみが味わえる。


Carl-Zeiss G-Biogon 28mmF2.8改





絞り開放で撮影を行っている。残念ながら、わずかに後ピン。画像の拡大機能が搭載されていないのは、QX1の一番のウィークポイント。


Rodenstock Heligon 35mmF2.8





絞りF5.6で撮影。階調は豊かで文句ない描写だ。焦点距離35mmの場合、画角はフルサイズ判換算で52.5mm相当となる。

Minolta ROKKOR-X 250mmF5.6





フルサイズ判換算で375mmの画角としている。実像とスマートフォンに表示される画像のタイムラグが大きく、電車は思った位置で写し止められていない。

Canon FD35-70mmF4 AF




実は今回の撮影で最も使いやすかったレンズ。AFは合焦までのスピードこそ速くはないのの正確で、スルー画の拡大機能のないQX1でもイージーに撮影が楽しめる。

COSINA AF ZOOM LENS28-70mmF3.5-4.8




機構の調子が悪かったのかもしれないが、Canon FD35-70mmF4 AFにくらべAFによるピントは緩め。ただしコントラストなどはまずまずで。QX1で遊ぶにはよいレンズだ。

Viviter Series 1 SOLID CATADIOPTRIC LENS 800mmF11




QX1では約1200mm相当の画角の得られる“ソリッドキャット”。やはりピント合わせに苦労した。正直、QX1では使いたくないレンズといってよい。



【関連サイト】
SONY QX1
http://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-QX1/

カメラコントロール用アプリ
PlayMemoriesmobile
iOS用 
https://itunes.apple.com/jp/app/playmemories-mobile/id489191124?mt=8
Android用 
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sony.playmemories.mobile&hl=ja




 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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