TOP > コンテンツ一覧 >

新製品レビュー

18
新製品レビュー
公開日:2015/10/29

ソニー α7RII ×α7R オールドレンズ比較レビュー

photo & text 大浦タケシ


ソニーのフルサイズミラーレス機の充実には目を見張るものがある。現在、α7/α7R/α7S/α7II/α7RII/α7SIIの6モデルをラインナップ。スペックなどから自分の撮影スタイルに最適な1台を選ぶことができるはずだ。そのなかでも今回ピックアップするα7RIIは、有効4,240万画素の裏面照射型CMOSセンサーに、シャッター速度に換算して4.5段分のセンサーシフト方式の手ブレ補正機構を搭載。4K動画記録もカメラ内で可能としているなど、α7シリーズのフラグシップモデルに相応しいスペックを持つカメラ。CAMERA Fan的レビューでは、同イメージセンサーがオールドレンズやレンジファインダー用レンズを装着したときどのような結果が得られるかを検証したいと思う。


裏面照射型CMOSセンサーとは


これまで1インチ止まりであった裏面照射タイプのソニー製イメージセンサーであるが、α7RIIには予期せずにしてフルサイズのものが搭載された。裏面照射型イメージセンサーについては、すでにその構造やメリットを熟知している読者も多いかと思うが、あらためて簡単に解説したい。




画像提供:ソニー株式会社 

まず一般的なイメージセンサーは構造的に光を集光するフォトレンズ(オンチップレンズ)と、光を電気信号に変えるフォトダイオードの間に配線層(回路部)が挟まれている。そのためフォトレンズで集光された光は、配線層に開けられた穴を通り抜けフォトダイオードに照射され電気信号へと変わるわけだが、光がロスすることも多く、高感度特性や階調再現性に大きく影響していた。さらに画面周辺部など光を垂直に照射できないテレセントリック性の劣る交換レンズの場合では、偽色の発生の要因にもなっていた。

そこで、配線層をフォトダイオードの背面に置き、フォトレンズが集光した光を効率的に照射するようにしたのが裏面照射型のイメージセンサーである。ちなみに裏面照射型とは、構造的に通常タイプのイメージセンサーの裏面にフォトレンズを置いたものとすることから名付けられたものである。

その裏面照射型のイメージセンサーを搭載するα7RIIだが、高感度特性に秀でていることはいうまでもない。有効4,240万画素にも関わらず最高感度はISO25,600(拡張ではISO102,400相当)を実現する。しかしながら、CAMERA Fan的レビューでの注目は古い広角レンズやレンジファインダー用レンズなどテレセントリック性の劣る交換レンズを装着したときの偽色の発生と周辺減光となるだろう。そこで一般的な構造のイメージセンサーを搭載する「α7R」との比較を行ってみた。



【検証に使用した機材】



カール・ツァイス Biogon T* 2.8/21 ZM
 


コンタックス G-Biogon T* 28mm F2.8
ライカMマウント改
タムロン SP17mm F3.5 Model 151B


<カメラボディ>
ソニー α7R
ソニー α7RII

<レンズ>
カール・ツァイス Biogon T* 2.8/21 ZM
コンタックス G-Biogon T* 28mm F2.8 Mマウント改
タムロン SP17mm F3.5 Model 151B

<マウントアダプター>
Hawk's Factory製 SONY α7S/II/R対応補助ヘリコイド付ライカMアダプタ
METABONES  SONY NEX Eマウント用 ニコンF アダプタVer2+タムロン アダプトールマウント(ニコンAi用)


今回のトライアルに用いたレンズは、コシナ製カールツァイスの「Biogon T* 2.8/21 ZM」、コンタックスG用でMマウント改造済みの「G-Biogon T* 28mm F2.8改」、タムロンの「SP17mm F3.5(Model 151B)」の3本。Biogonの2本はレンズ構成上後玉が突出しており、しかも半球上とする。見ただけでもテレセントリック性は劣るように思える。タムロンは一眼レフ用の交換レンズで、レトロフォーカスタイプの光学系を採用するものと思われる。テレセントリック性に関しては前の2本よりはよいものだが、参考として検証してみた。なお、マウントアダプターは、Mマウントの交換レンズについては「Hawk's Factory製 SONY α7S/II/R対応補助ヘリコイド付ライカMアダプタ」、タムロンは同社アダプトールマウント(ニコンAi用)を装着したうえで「METABONES製 SONY NEX Eマウント用 ニコンF アダプタVer2」を使用した。



【ソニーαR7 × α7RII オールドレンズ使用・比較レビュー】




カール・ツァイス Biogon T* 2.8/21 ZM






ソニー α7R
カール・ツァイス Biogon T* 2.8/21 ZM


ソニー α7R II
カール・ツァイス Biogon T* 2.8/21 ZM


ソニー α7R
カール・ツァイス Biogon T* 2.8/21 ZM


ソニー α7RII
カール・ツァイス Biogon T* 2.8/21 ZM



コンタックス G-Biogon T* 28mm F2.8 ライカMマウント改





ソニー α7R
コンタックス G-Biogon T* 28mm F2.8 ライカMマウント改


ソニー α7RII
コンタックス G-Biogon T* 28mm F2.8 ライカMマウント改


ソニー α7R
コンタックス G-Biogon T* 28mm F2.8 ライカMマウント改



ソニー α7RII
コンタックス G-Biogon T* 28mm F2.8 ライカMマウント改


タムロン SP17mm F3.5 Model 151B





ソニー α7R
タムロン SP17mm F3.5 Model 151B



ソニー α7RII
タムロン SP17mm F3.5 Model 151B


ソニー α7R
タムロン SP17mm F3.5 Model 151B



ソニー α7RII
タムロン SP17mm F3.5 Model 151B


<検証結果まとめ>

結果の違いは、Biogon T* 2.8/21 ZMとG-Biogon T* 28mm F2.8改では明確だ。特に偽色の発生については驚くほどの違いである。α7Rでは画面の両端に紫色の偽色が派手に現れている。せっかく撮った写真もこれではパソコンのハードディスクに保存されたまま二度と日の目を見ることがないか、ゴミ箱に捨てられ消去されるかのいずれかとなることだろう。一方、新しいα7RIIでは見事に偽色の発生は改善されており、とてもナチュラルな仕上がり。目を凝らせばわずかに紫色の偽色がうっすらと残っている部分がないわけではないが、気にならないといってよいレベル。本当に同一レンズで撮ったのだろうかと、撮影した本人自身が勘ぐってしまうほどである。これまでα7Rのユーザーのなかには、このような偽色に対し「PlayMemories Camera Apps」の「レンズ補正」を使い調整しても、完全に除去できないことがほとんどだったので、大袈裟な言い方かも知れないが、これは奇跡といってよいほどだ。恐るべし、裏面照射型イメージセンサー。


<オールドレンズ実写>

作例では、比較撮影で使用したBiogon T* 2.8/21 ZMに加え、キヤノン「35mmF1.5(L)」、同じく「100mmF2(L)」の3本で撮影している。21mm以外は元々偽色の発生するようなレンズではないが、それでも周辺減光の発生などよく抑えているように思える。何より階調豊かで、ローパスフィルターレスらしくエッジのキレもよい。さらにキヤノンの2本は1960年代前半につくられた古いレンズであるが、何か描写の欠点も補ってくれているように思えるほどである。加えてセンサーシフト方式の手ブレ補正機構を備えているのもオールドレンズファンにとって心強い見方。レンズ交換の度に焦点距離を入力する手間が必要であるものの、作例を見るかぎり目立ったブレなどない。ただ、せっかく焦点距離入力をするのだから、Exifにもその情報が残ればと思わずにはいられない。


カール・ツァイス Biogon T* 2.8/21 ZM











キヤノン35mmF1.5(L)














キヤノン 100mmF2(L)












ソニー α7RIIは高価なミラーレスモデルではあるが、オールドレンズファンにとっては、価格に見合う描写の得られるカメラだ。特に広角レンズの好きなファンにはこれ以上のミラーレス一眼カメラはないと思う。さらに有効4,240万画素によってレンズの描写が隅々までチェックでき、ありがたいことに手ブレ補正機構も効く。このカメラとオールドレンズで作品づくりを目論みたくなるのは、私ばかりではあるまい。


<関連サイト>
ソニーα7RII
http://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7RM2/


 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
BACK NUMBER