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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2015/06/05

キヤノン EOS M3 〜機能編〜

text & photo 大浦タケシ
EVF-DC1とEF-M22mm STM を装着したEOS M3。すべて筆者の私物で、ボディカラーは遊び心のあるホワイトを選択した。フードはebayにて送料込み約750円で購入したもの。

キヤノンのミラーレス一眼カメラ「EOS M3」が登場して2ヶ月余り。「EOS M2」から大幅なブラッシュアップが図られたことから、EOS Mシリーズとしてこれまでにない人気となっている。同シリーズは本モデルで3代目だが、正直言えばようやく誰しもが満足できるスペックになったといってよいもので、その証拠として筆者のまわりでは(筆者自身も含め)、これまでEOS Mシリーズに見向きもしなかったプロやベテランなどが相次いで手に入れている。

今回、レンズグルメの愛読サイトとして、EOS M3の魅力を2回に分けて探っていきたいと考えている。第1回となる今回は主にEOS M3の操作感などを、第2回はオールドレンズとのマッチングをチェックしてみる。



EVFが装着できるようになり、マニュアルフォーカスでもよりピントが合わせやすくなった。レンズグルメにはマストといえるアイテムだ。


オールドレンズ・ユーザーに嬉しいEVF「EVF-DC1」


レンズグルメとしてまず注目は、電子ビューファインダー(EVF)の装着が可能となったことだろう。オールドレンズを使用する場合、当然マニュアルフォーカスでの操作となるわけだが、いくらスルー画の拡大機能が搭載されていてもEVFの視認性の高さ、見やすさに液晶モニターは敵わない。交換レンズの焦点距離、明るさなど条件によってはスルー画の拡大機能やピーキング機能を使わなくても十分精度の高いフォーカシングが可能なこともあるほどである。素早いピント合わせのためには、EVFはマストといえるだろう。また、加齢とともに視力の低下したユーザーにとってもEVFは便利であることが多い。視度調整機能によって撮影時のみならず、撮影した画像の確認やメニューの設定なども裸眼でできるからである。

EVFは1.5インチセンサーを積むパワーショット「G1X Mark II 」と共通の「EVF-DC1」を使用。XGA236万ドットで視野率は100%。ファインダー部は上方向に90°可動する。コントラストが高く高精細であるため、ピントの山が掴みやすく正確なフォーカシングを可能とする。定価で35,640円(税込)であるが、EOS M3にはこのEVFをセットとするキットがいくつか用意されており、単品同士を組み合わせて買うよりも安い価格設定がされている。
オールドレンズを装着して楽しみたいレンズグルメは、このEVFキットを購入するとよい。なお、同キットは付属する交換レンズによって4種類あるが、いずれも限定としているので購入の際は注意しておきたい。



APS-Cサイズ有効2420万画素CMOSセンサーを搭載する。焦点距離倍数は1.6倍。

イメージセンサーはこれまでのAPS-Cサイズ有効1800万画素から有効2420万画素へとアップしている。昨今の巧みな画像処理技術で、多画素の場合でも高い高感度特性や階調再現性を誇るものが増えてきているが、本モデルの場合も最新の映像エンジンDIGIC 6の採用とともに高感度領域での低ノイズ化が図られる。設定感度はISO100からISO12800まで。ISO1600あたりまでならノイズの発生は気にならないといってよい。

また、APS-Cサイズのイメージセンサーであるため、オールドレンズを装着した場合、フルに画角を活かすことは残念ながらできない。しかし、イメージサークル中央のいわゆる美味しい部分のみが楽しめるので、これはこれで十分アリと考えてよいだろう。焦点距離倍数は同社のAPS-Cデジタル一眼レフと同じく1.6倍。焦点距離50mmの交換レンズをEOS M3に装着した場合80mm相当の画角が得られる。


ボディ内手ブレ補正は未搭載


残念なこといえば、カメラボディ側にイメージセンサーシフト方式の手ブレ補正機構が採用されていないことだ。キヤノンは伝統的にレンズシフト方式の手ブレ補正機構を採用しており、EOS Mシリーズも同様である。同じレンズシフト方式の手ブレ補正機構を採用するソニーでは、レンズグルメの期待に応えるかのようにα7IIで、カメラボディ側にイメージセンサーシフト方式の手ブレ補正機構を採用し、純正・非純正に関わらずどのような交換レンズでも手ブレ補正が効くようにしている。
EOS M3の場合、パンケーキタイプの単焦点レンズ「EF-M22mmF2 STM」には手ブレ補正機構は内蔵されていないし、マウントアダプター「EF-EOS M」を介して現行のEF/EF-Sレンズを装着した場合、いくつかの単焦点レンズも未搭載のため、手ぶれ補正は効かない。やはり同社もイメージセンサーシフト方式の手ブレ補正機構の搭載を決断してよかったように思える。


小さいながらホールドしやすいグリップを備える。電子ダイヤルはシャッターボタンと同軸の位置にある。


進化した操作系


操作感に関わる部分としては、いくつかの進化があった。

まずひとつが小さいながらもグリップが新たに備えられたことである。より確実にホールディングでき、さらにシャッターボタンもグリップ上部に備わるため押しやすく感じられる。さらにシャッターボタンと同軸のダイヤルは、これまでのモード選択用のものからEOS  M3では一眼レフ同様電子ダイヤルとなり、純正レンズの装着では露出の設定が素早く行えるようになった。


露出補正ダイヤルと撮影モードダイヤルもEOS Mシリーズとしては新しい部分。露出補正ダイヤルはやや動きが渋く感じるのは残念。

露出補正ダイヤルの搭載もEOS Mシリーズとしては目新しい。ソニーα7シリーズやフジフイルムXシリーズなどと同様の位置に配置され、プラスマイナス3段までの補正が可能。気になるのは、ダイヤルの回転がちょっと渋く、ダイヤルの位置からか若干操作性が悪いことだろう。露出補正はオールドレンズを装着したときのみだけでなく、純正レンズのときも使用する機会は多いので、もう少し配慮の欲しかった部分といえる。とはいえ、露出補正ボタンを押し、背面の電子ダイヤルを回して露出補正を行っていた前記種とくらべると、使い勝手は格段に向上している。

撮影モードについても、新たにトップカバーに備わった同モードダイヤルで行うようになり、速やかなモードの選択が可能となっている。



上方向180°、下方向45°可動するチルトタイプの液晶モニターを採用する。自分撮りのときも便利。

オールドレンズを装着したいユーザーには関係ない部分ではあるが、高速化されたAFも新しいEOS M3の特徴。初代の「EOS M」のAFがライバルにくらべ遅かったこともあり、これまで同シリーズは芳しい評価が得られてなかったが、もうそのようなことはない。そのほか上方向180°、下方向45°可動するチルトタイプの液晶モニターや、NFCによるWi-Fi接続が可能になるなど時代に即した進化が図られている。


ポップアップタイプのストロボを搭載。ガイドナンバーは5(ISO100・m)。焦点距離18mm(フルサイズ判換算で29mm相当)の画角をカバー。


アクセサリーシューの奥にEVF用の接点が見える。使用しないときは付属するシューカバーを必ず装着しておきたい。


【オールドレンズ使用時のカメラの設定】


マウントアダプターを介してオールドレンズを装着するときは、カスタムファンクションIIIの[レンズなしレリーズ]を、デフォルトの[0:しない]から[1:する]に設定する。

再生ボタンの下、虫メガネマークがAFフレーム選択/拡大ボタン

AFフレーム選択/拡大ボタンを押す度に、1倍→5倍→10倍とスルー画が拡大していく。AFフレーム選択/拡大ボタンを押した後、電子ダイヤルでも拡大と縮小が可能。

1倍


5倍拡大画像


10倍拡大画像



マニュアルフォーカス時に便利なピーキング機能を備える。ピーキングのレベルは強と弱から、色はレッド、イエロー、ブルーから選ぶことができる。



ピーキング色 レッド


ピーキング色 イエロー


ピーキング色 ブルー


EOS M3は発売以来好調な売れ行きだという。実際、その造りを見ると同社がミラーレス一眼カメラに対し本気を出していることがわかる。ライバルは強者揃いだが、今度こそその牙城の一端を切り崩すことができそうに思える。もちろんオールドレンズを装着したときも使いやすく、さらに手頃なプライスも魅力。ぜひともEVFとのセットで手に入れることをおすすめする。

EOS M3レビューの2回目はオールドレンズを使った作例で展開する予定なので、楽しみに待って頂きたい。


マウントアダプター協力:デジタルホビー(http://digitalhobby.biz


 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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