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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2016/12/09

オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO & M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO

photo & text 赤城耕一


12月22日に発売されるOM-D E-M1 MarkII。すでに発表時から注目を集めているが、今回の本題に入る前に、機能のおさらいを簡単にしておこう。
前機種のOM-D E-M1の登場は2013年10月。今回は3年ぶりのフルモデルチェンジとなる。最も力を入れたのは動作スピードと高速のレスポンスである。センサーは有効画素数2037万画素Live MOS。PEN-Fと画素数は同じだが、像面位相差AFを内蔵しているので種類は異なるセンサーだ。画像エンジンは「TruePic VIII」。
レリーズタイムラグは「OM-D E-M1」比で約3割短縮、再生時のコマ送りは3倍速。連写速度は、AF/AE追従でのフル画素RAWで18コマ/秒(メカシャッター時10コマ/秒)。AFシステムは新規開発で、121点オールクロスの像面位相差センサーを搭載。コントラストAFと像面位相差AFをカメラが最適に選択する「DUAL FAST AF」を搭載。両者をハイブリッドで使う方式で、カメラが状況に応じて自動選択を行う。
基本機能も改良。ファインダー倍率は35mm判換算0.74倍と、フルサイズのデジタル一眼レフ最上位機種にも匹敵する高倍率仕様。高精細電子ビューファインダーを採用しており、最高フレームレート120fpsを達成、最短表示タイムラグ6msecの高速表示の実現した。
モニターは現行のチルト方式から、バリアングル方式となり好みが分かれるところである。後者では光軸上にモニターを動かすことができないことが欠点だが、撮影ポジションの自由度や、動画撮影時には使いやすい方式である。反面、モニターを引き出した状態でアングルを水平垂直に保つには難儀するが、個人的にはアングルの自由度が高いので歓迎したい改良だ。
オリンパスで高く評価されているボディ内手ブレ補正。E-M1 Mark IIではボディ単体でシャッタースピード5.5段分にもなり、まさにブレた写真を撮るのが難しいくらいの補正段数だが、手持ち撮影の世界を革新的に広げたと言ってよく、その効果は驚くべきもの。今回のフルモデルチェンジは「動く被写体」を一眼レフと同等並みに確実に捉えてこそミラーレス機の進化であると訴えているかのようで興味深い。


オリンパス  M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO & M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO



M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
 M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO


このOM-D E-M1 MarkIIに合わせて、注目の2本のレンズ、M.ズイコーデジタル ED 12-100mm F4.0 IS PROとM.ズイコーデジタル ED 25mm F1.2 PROが登場した。
2本とも最高級のProレンズシリーズであり、性能面はもとより、防塵防滴機能を内蔵、仕上げや操作性に至るまで高品位に仕上げたレンズであるが、見かたによっては高倍率のズームと大口径の単焦点という両者の性格は正反対の特性を持ったものといってよいくらいで、同時にリリースされたことも注目されるが、これは後で述べるとおり、意図した組み合わせであろう。


M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO



まずProレンズシリーズといいながら、高倍率ズームレンズを用意してきたことに個人的には少々驚きがある。キヤノンEFにもLシリーズに高倍率ズームがあるけれど、おおむね描写性能を追求したレンズはズームだとF値が明るく低倍率のものが多い。
オリンパスにおいても高性能のProレンズに高倍率というのはそぐわないという勝手な認識も持っていたので、登場はまったくのノーマークだったが、姿カタチと仕様をみた瞬間から、これは従来の認識を覆し、イケる高倍率ズームレンズだと第一印象を持った。こういう製品は珍しいように思う。
マイクロフォーサーズセンサーの特性を生かし切った561gという小型軽量であることも注目点で、35mm判相当で24-200mmの画角が得られるわけだから、レンズ交換が必要なくなるほどである。機能的にもOM-D E-M1 MarkIIと組み合わせると5軸シンクロ手ブレ補正によって6.5段分の補正効果を得ることができる。これも本当に驚きで、ブレた写真を創るのが難しいくらいなのだ。



M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO フォーカスクラッチ機構

このスペックのズームにフォーカスクラッチ機構を内蔵させたのは恐れ入る。ズームのため被写界深度指標はないが、ワイド側でのスナップ撮影には確実に役立つし、マクロ域の撮影にも便利だろう。


M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 実写



OLYMPUS OM-D E-M1 MarkII + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(以下、カメラボディは共通)
(焦点距離100mm時)f6.3 1/3200 ISO400 
渋谷にて。画角的には圧縮効果が出てくる。コントラストの強い条件下だが強いハイライトの影響も受けずクリアな画質だ。


描写性能は素晴らしく優秀である。ズーム全域で開放F値をF4で通しているので使いやすいが、絞りによる性能差や変化はほとんどわからない。
最短撮影距離もワイド端で0.15m、テレ端で0.45mを実現、焦点距離、撮影距離によっても性能変化をまったく感じさせないほど優れる。「ズームレンズは捨てなさい!」という拙著の言葉をあっさりと撤回して、謝りたくなるほどであり、おそらく自分の仕事でも、マクロ領域を含め、このレンズ1本あれば9割は済んでしまいそうである。
こういう便利なレンズを使用すると撮影行為自体が怠惰になりがちだから、自らが戒めなければならないのだけれど、おそらく今後はこのレンズの使用頻度が大きく伸びそうな予感がするのである。


(12mm時)f8  1/1600 ISO400  -0.7EV
建物の明暗差が大きな場面。ハイライトの描写力、シャドー部の描写力それぞれ良い感じ。ワイド端でも四隅まで画質は安定している。


(31mm)f4  1/8 ISO200
1/8秒のシャッター速度で手ブレ補正の効果をみる。写真からは想像もできないほど暗い場面なのだが完全に静止している。ただ、シャッター速度が遅すぎると人物の呼吸による被写体ブレを考えねばならない。


(61mm) f4  1/20 ISO400
階調の繋がりを見るためにレフや補助光を使わずに窓際で撮影。明暗差の大きな場面だが、よくこなしている。レンズとカメラの力のバランスがとれている。


(75mm)f4  1/50 ISO400
こちらは窓から少し離れてもらい、全体に光が回る位置から撮影。肉眼ではフラットに見えたが、コントラストが高く、きっちり仕上げてくる感じだ。


(86mm) f4  1/40 ISO200
曇りガラスを通した太陽光の当たる条件。コントラストが強いのでもう少し硬くなるかと思いきや、良好な再現である。


(85mm) f16  1/320 ISO400 -0.7EV
再開発地帯。テレ側だが、実焦点距離の短さを利用してパンフォーカス効果を狙う。回折による画像の悪化にも対応しているので安心である。


(25mm)f8 1/2000 ISO400 +0.3EV
カメラ内の画像処理でも歪曲収差は補正されるのであろうが、とにかく律儀にぴっちりと描写してくる高倍率ズームである。こうした線で構成した単純な写真だと歪曲がないだけでも驚きなのである。


(100mm) f8   1/1000 -0.3EV
35mm判換算画角のレンズで24-200mm相当のレンズになるわけだから、少なくとも街のスナップはすべてこなせるといってよかろう。焦点域による性能差も感じない。







M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO




もう一本のM.ズイコーデジタル  ED 25mm F1.2 PROはM.ズイコーデジタルでは初のF1.2の単焦点大口径標準レンズである。びっくりしたのはそのレンズ構成枚数である。12-100mmの17枚よりも多い19枚もあるのだ!
それでも仕様から見れば小型なほうだろう。もちろん開放絞り値近辺の浅い被写界深度を生かした撮影に便利に使うことができるが、一方でフォーカスクラッチ機能も備えているので、MF設定で絞りを絞り込めば、標準域の画角ながら被写界深度の深さを生かした目測スナップ撮影にも使うことができる。
マイクロフォーサーズ機のほとんどはカメラ内での処理でも収差補正を行うため、失礼ながら、さほど凝ったレンズ構成を行わなくても良いのではと、勝手に素人考えを持っていたのだが、徹底して収差補正とシャープネスやボケ味を含めた総合的な描写性能を追い込んでゆくと、このような凝ったレンズ構成をせねばならないということなのだろう。レンズ設計者の真面目な姿が目に浮かぶようだが、構成枚数が多いとコストもかかるので、それなりに高価になるのはやむをえないところである。
マイクロフォーサーズ規格での標準画角はこの25mmという焦点距離のレンズになり、特性上被写界深度が深い。大きなボケ味が欲しいという人のために大口径レンズのラインアップは必須だと、以前から強く要望していたが、やっとは願いが叶った感がある。



M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO フォーカスクラッチ機構

フォーカスクラッチでMFに設定。25mmという焦点距離だと、被写界深度が深いことが認識できる。


M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO 実写


OLYMPUS OM-D E-M1 MarkII + M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
f1.2  1/3200 ISO200
背景を日陰にして人物を浮き上がらせてみる。開放でも全体のコントラストが強く見える。とにかく合焦点のシャープネスには驚くが今回はすべて顔+瞳認識によるカメラ任せである。

描写性能は開放絞りから完全に実用性能になるほど優れる。合焦点の線は細く、コントラストも十分ある。ボケは至近距離撮影でないと特段に大きいという印象は持たないのだが、バストアップくらいのポートレートには大きな力を発揮し、大きなボケを活かせないというマイクロフォーサーズ機のウィークポイントをほぼ補ってくれる。もちろん先のM.ズイコーデジタル ED 12-100mm F4.0 IS PROの開放絞りとはまったく異なる印象を受けるのは当然のことだ。両者の焦点距離は重複するが、それぞれに存在意義は明確に分かれる。
そして何よりも特筆したいのは、OM-DでもPENシリーズでもフォーカスが正確に素早く合うということである。
コントラストAFや像面位相差は、とくに超広角から標準までの大口径レンズの使用時において、一眼レフの位相差AFを圧倒的に超える高い合焦精度を誇っている。顔認識や瞳認識を使えばさらに精度は安定し、逐一フォーカスの確認は不要になるほどである。
一眼レフでポートレートを撮影すると、まず合焦しているコマを探し、そこから表情やポーズ、雰囲気の良いコマを選ぶという二段階の選択過程を取らねばならないことがあるのだが、OM-D E-M1II と本レンズの組み合わせならば、それがほとんど必要ないのは効率的にも、とてもありがたいことなのである。


f8  1/640 ISO200 -0.7EV
絞り込むとぐっと全体がシャープになるが、標準レンズとはいえ実焦点距離は25mm。少し絞り込むとすぐにパンフォーカスになる。


f1.2 1/1250 ISO200
至近距離まで寄ってみる。素直な再現なので中望遠レンズで撮影しているようにも見える。この距離だと写真だけではレンズの焦点距離の判別がつきづらい。


f2  1/1000 ISO200
標準画角だとやや上目から見下ろしてもアタマが大きくなることはなく、嫌味な写真にならない。


f8  1/400 ISO200 -0.7EV
歪曲収差の補正も万全で、建築撮影にも十分に使用できる精度。画質の均質性も良い。緻密な描写が必要な風景写真にも向いている。



f1.4  1/2000 ISO200
レンズ内に光が入ってしまうような逆光条件。でもこのレンズはビクともしないようだ。難条件での撮影でもいけそうである。



f4  1/160
少し絞り込んで日陰の条件での再現性とディテール描写を見た。素晴らしく緻密で光の拾い具合もいい感じである。




E-M1 MarkII フォーカスモード C-AFでの連続撮影


以下、共通 マニュアル f2.8  1/1000 ISO400 



バリアングルのモニターを使用し、モデルさんにカメラに向かって歩いてきてもらい、こちらも後ろに歩きながら連続してシャッターを切ってみた。C-AFに設定し、顔認識AFを頼ってみたが、うまくフォーカスをフォローしてくれることに驚く。モニターを引き出すと水平、垂直位置に構えるのが難しくなるが、これを逆手にとって、カメラを傾けるなどして自由にフレーミングしてみた。



M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO & M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 同焦点距離、開放絞りでの比較


OM-D E-M1 MarkII + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
f4  1/400 ISO200


OM-D E-M1 MarkII + M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
f1.2  1/2500 ISO200

M.ズイコーデジタルED 12_100mmF4 IS PROを25mmに設定して、M.ズイコーデジタル25mmF1.2と同じ距離から開放絞りで撮り比べてみた。意図的にごちゃごちゃした背景を選択したが、背景描写は開放ではご覧の通り。合焦点のシャープネスも良い勝負だが、ボケ量が多い25mmF1.2の方が少し軟らかく見える。


オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO & M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO  レビューまとめ


今回はそれぞれのレンズに合わせて撮影条件を設定してみたが、F値の違いや、手ブレ補正の性能など、スペックの違い以外にも、独自の個性的な描写力が感じられた。したがって、焦点距離が重複したとしても、ますます両レンズが欲しくなるわけだけど、確実に異なる写真はできるということだけは言っておくことにしようか。もし片方だけを選べと言われたら、夜も眠れなくなりそうだ。やはり高倍率ズームも明るい単焦点レンズも私たちには必要なのである。


モデル:安井真理子



【メーカーサイト】

オリンパス
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
https://www.olympus-imaging.jp/product/dslr/mlens/12-100_4ispro/index.html

M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
https://www.olympus-imaging.jp/product/dslr/mlens/25_12pro/index.html

OM-D E-M1 MarkII
https://www.olympus-imaging.jp/product/dslr/em1mk2/
 
赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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