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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2016/08/24

オリンパス TG-Tracker 〜撮影編〜

photo & movie & text 宇佐見健


機能編ではオリンパスTG-Trackerの撮影機能とログ機能について解説したので、実際にフィールドに連れ出して撮影した動画を紹介しよう。

TG-Trackerはアクションカムという位置づけだが、特にアクティブなシーンということにこだわらず、この小さな防水カメラを使って何か面白い動画を撮れないだろうか?このカメラをどのように使ったら楽しいだろうか?といった観点で掘り下げてみたい。

ロケ地は神奈川県・三浦半島の南端に位置する城ケ島。マグロで有名な三崎港からも近い周囲長約4キロの神奈川県では最大の自然島。都心からのアクセスも良く古くから景勝地として知られ、太平洋に面した南岸は岩礁地帯に囲まれており奇岩と断崖の織りなす景観はみごと。岩が入り組んだ磯場の地形は陸上も海中も撮り応えがありそうということで選んだ。

また、今回は鳥瞰撮影や手軽な水中撮影のどちらにも使える軽量なカーボン製ロッドのBiRod(ビーアイロッド)に画角204°のTG-Trackerを組み合わせて様々な撮影アングルやポジションを試見ることにした。


ルミカ Bi Rod



2015年のCP+から写真業界に参入したルミカのプロデュースする大型三脚は2016年モデルからロッド部の素材をフルカーボンに変更して剛性をアップし、名称もBirds Eye RodからBi Rod(ビーアイロッド)に変更してリニューアル。
先端には小型ボールヘッドを装備。ロッド部は各段を簡単に完全分離できてメンテナンスが容易なため海中での使用が可能。先端にTG-Tracker装着して海中を覗いてみようという目論見だ。

専用の三脚にセットすれば自立可能で最大伸長7,5m/4.5m/2mの3タイプが用意されている。キャリングケースとカメラ等をリモートする際のスマホをロッドに固定できるホルダーが付属する
Bi Rod 6C-7500 +専用三脚セット 69,984 円
Bi Rod 6C-4500 +専用三脚セット 45,144 円
Bi Rod 6G-2000 +専用三脚セット 21,060 円




城ヶ島海岸の磯で水中動物の動物を探索


まずは海中生物との出会いを求めて磯場へ。熱中症注意報が出るほどの灼熱の太陽光線の下、いっそ身体ごと水に浸かってしまいたい欲求を堪えながら水中用レンズカバー交換したTG-TrackerをBi Rod 6C-4500に装着し、陸上からカメラだけを水中に沈めての撮影にトライした。




のっけからで恐縮だが今回の水中撮影で実はTG-Trackerの設定ミスを犯してしまった。というのも、水中撮影時はメニューからレンズ画角を「水中ワイド」に切り替えなければならないのだが、あまりにの暑さに完全に失念。
このため掲載の水中動画では画面の四隅に黒いケラレが発生している。これは、本来は画面外の黒部分が手ブレ補正機能の作動で見えてしまっているということ。
見苦しくはあるが、カメラのインプレ的にはTG-Trackerに搭載されている電子式5軸手ぶれ補正が有効にブレを打ち消している様子が分かるので怪我の功名ということでご容赦いただきたい。

ちなみにTG-Trackerには「水中検知センサー」が搭載されており水深50cmを超えると自動で水中に適した撮影モードに切り替わるという機能が搭載されている。と聞くと全ての設定変更をやってくれそうに誤解しがちだが、これは主に水中で起こりやすい青カブリをを補正するホワイトバランスに設定してくれるのが主な機能。水中用レンズカバーへの交換や前述のレンズ画角の設定などは手動で行う必要がある。



OLYMPUS TG-Tracker 水中撮影 No.1

TG-Trackerの録画スタートボタンを押してから海中に突っ込み、Bi Rodを持ったまま岩のふちに沿って歩くしてなどカメラを水中移動させる方法を何か所かで試してみた。

ルミカには電波の届かない水中にあるカメラでも陸上のモバイル端末とのWi-Fi接続を可能にする水中撮影ケーブル「Bi Wireless Line」という商品がある。
当初の予定ではTG-Trackerにもこれを利用して水中の様子をスマホをモニター代わりにしながら撮影するつもりだったが、残念なことにTG-Trackerは動画録画中には同時にライブビューは表示されない仕様だったため、勘を頼りにする撮影方法になった。
光の屈折率や水面の反射の影響などもあり陸上から水中の様子を目視で判断するのは非常に難しかったが、干潮時にできる潮だまりなどは水深が浅く水面も穏やかで波による揺れも少なく取り残された魚などを見つけやすく、真蛸やクサフグの姿を捉えることができた。



観光船の船上から水中の魚を撮影



しかし、潮溜りでは思うように魚に近寄ることができず、もっとハッキリした魚影を撮影したいという欲求が高まるのは当然のこと。そこで遊覧船に乗船して船からの餌付けシーンを撮影させてもらうことに。水の透明度は今一つだったが、魚の群れが撒き餌に反応して行きかう様子を撮影できた。
*許可を得て撮影しています


OLYMPUS TG-Tracker 水中撮影 No.2


船上から飛び交う野鳥を擬似空撮



遊覧船の移動中に乗船客が撒く餌目当てのトンビやカモメが寄ってくる。そこでBi Rodを伸ばして鳥たちの様子を撮影してみた。
204°という超広角レンズゆえに今一つ寄りきれない感もあるが、カメラを船よりも高いポジションすれば疑似空撮のようでもあり、またレンズの歪曲収差で水平線が弧を描くのもハイアングル撮影ならではと言ったところ。TG-Trackerに餌をくくりつけておけば、もしかしたら鳥が迫ってくるシーンが撮れたのかもしれない。




 


BiRodでジブアームチックに撮影



伸ばしたBi Rodを水平位置から90度上方に起こす動作をすることでジブアームを模した連続的な視覚の変化を狙ってみた。
ジブアームはカウンターウエイトとテコの原理の応用で僅かな力で重たいカメラでもスムーズに上下させることができる仕組みだが、4,5メートルに伸ばしたBi Rodは一本の棒でしかないためフルに人力が必要になる。その点では、TG-trackerは180グラムと軽量だったので一定スピードで持ち上げることができた。
カメラの角度は手元のコントロールスイッチでティルトが可能な電動ヘッド(プロトタイプ)を使用。こちらも耐荷重的には小型一眼レフくらいの重量まで動かすことが可能なので問題はなかったが、モーターの駆動音が大きいので音の不要な動画ならば良いだろう。




最近はドローンで撮影した映像をいたるところで目にするが、ドローンを飛ばすことができないような場所ではBi Rodを利用したハイポジション、ハイアングル撮影を組み入れてみるのも面白いと思う。



 


自転車走行動画



せっかくなのでヘルメットにTG-Trackerを固定し、アクションカムらしい撮影にも挑戦してみた。城ケ島の高低差に加え、時折見える全力で自転車を漕ぐ姿の影からも結構スピードが出ているがお分かりいただけると思う。60pフレームレートの選択と手ブレ補正機能のおかげで想像よりも滑らかな動画になった。



 


タイムラプスモード撮影



TG-Trackerのタイムラプスモードも試してみた。
「あいにく」と言わざるをえないほど雲ひとつ無い快晴だったったので、空の表情変化の乏しい動画になってしまった。当日は風が強かった影響で全伸状態のBi Rodは少し揺れていたにもかかわらず、動画ではあまり大きな揺れは感じないのは、204°という超広角レンズのおかげも大きいようだ。 TG-Tracker+ Bi Rodの組み合わせで今まであまり見なかったハイアングル・タイムラプスというテーマも面白そうである。




タイムラプス撮影は時間がかかります。炎天下の下、ひたすら待ちます。



 

TG-Tracker レビューまとめ

TG-Trackerはアクションカムという位置づけでデビューしたタフネスカメラなので海・川・山のレジャーシーンはもとよりアクティブなスポーツでも楽しい動画が取れることは間違いないのだが、機能編でも紹介した通り最大の特徴は撮影フィールドの細かなログ付けが可能なことで、実はこの点に関してはスチールカメラマンに一番オススメの機能のように思う。
最近はGPS内蔵のカメラも増えて、特に旅先や知らない土地で撮影をした場合に後から撮影場所の特定が容易になってきた。しかしその反面、GPS信号を受信するための電力消費が気になる人も多いだろう。筆者の場合は位置情報だけでなく撮影現場の状況をメモ的に数秒間だけ動画で押さえておきたい時が多く、今まではスマホカメラを使用してきた。メインカメラの電池はもとよりメモリーカードの容量も節約したいのが理由だが、このようなチョイ撮りの記録撮影は今後TG-trackerに任せてしまうのが良いと思っている。
記録したログをスマホ用の専用アプリOLYMPUS Image Trackで簡単に撮影画像も確認しながら管理できるのは本当に便利だし、実際に使っていて楽しいのだ。またログを閲覧するための専用アプリOLYMPUS Image Trackは、スマホカメラで撮影した画像もログにリンクしてくれるので極端な話、GPSロガーのみとして使うこともありなのだ。
カメラとして見ると操作ボタンが少ないこともあり各種メニュー設定などの操作性は良いとは言えないが、一度スタートボタンを押したらカメラ任せが基本。解像度の低い液晶モニターはハッキリ言ってチープだが、サブカメラ以上に旅のお伴として欲しくなるアイテムだと思う。



<メーカーサイト>

オリンパス TG-Tracker
https://olympus-imaging.jp/product/compact/tgtracker/


ルミカ Bi Rod
http://www.birdsirod.com/
【著者プロフィール】  
宇佐見 健(Ken Usami)

1966年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、専門誌、広告代理店を経てフリー。カメラ雑誌では新製品レビューやハウツーなど各種特集ページの執筆も担当。カメラグランプリ選考委員。
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