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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2016/10/25

SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS / SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS

Photo & Text 大浦タケシ

SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS

SAMYANG(サムヤン)といえば、MF交換レンズを展開する韓国の交換レンズメーカー。日本国内では現在ケンコートキナーが代理店で、写真用レンズのほかシネレンズなど豊富なラインナップを持つ。そのサムヤンからAPS-C対応のMFレンズ2本が登場した。新たにライナップに加わったのは「21mmF1.4 ED AS UMC CS」と「50mmF1.2 AS UMC CS」(21mmは近日中に発売開始予定で、50mmはすでに発売済み)
今回、この2本のレンズの操作感と描写をチェックした。



SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS


●外観・機能 SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS / SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS



「SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS」のレンズ構成は、2枚の非球面レンズを含む7群9枚。独自のUMCコーティングが施され、フレアとゴーストを低減する。フィルター径は62mm。




「SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS」のレンズ構成は、非球面レンズとEDレンズを含む7群8枚。像面の平坦性は高く、色のにじみなども良好に抑えている。フィルター径は58mm。




どちらのレンズとも電気的な接点はない。願わくならCPUを内蔵し、Exifにその情報が付加できるとよいのだが。今後に期待したいところである。


●操作感 SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS / SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS



SAMYANG 50mm F1.2 AS UMC CS
フォーカスリングと絞りリングの間の赤い帯が印象的な鏡筒。絞りのステップは1/2段としている。ベースとなる鏡筒はアルミ合金製。真鍮などにくらべ大幅な軽量化を達成している。



まずは操作感だが、50mmに関してはフォーカスリングの回転は適度なトルク感があり上々の感触。滑らかに回転し、特に開放絞りに設定した際、フォーカシングリングの操作に応じてEVFに被写体が浮かび上がる様子は官能的と例えても言い過ぎではない。つくりのよいオールドレンズのようにフォーカシング自体が楽しく感じられる。




SAMYANG 21mm F1.4 ED AS UMC CS
鏡筒はアルミ合金製。軽量であるため、その画角とともに常用レンズに最適だ。

21mmについては、フォーカスリングの回転にやや粗さが残り、トルク感も若干ムラがある。ただし、お断りしておきたいが、今回使用した21mmは製品版の一歩手前のベータ版。そのため、つくりの及ばないところが見られたものと思われる。現在このレンズの発売時期は決まっていないが、製品版では改善されていることに期待したい。

絞りリングについては、どちらも良好なクリック感だ。絞り値の表示と指標が若干離れているのが気にかかるが、使い込めば慣れることだろう。絞り値の設定ステップは、両者とも1/2段となっている。

用意されるマウントは、いずれもキヤノンEF-M、フジX、ソニーE、マイクロフォーサーズの4つ。マウントは接点を持っておらず、当然CPUも内蔵されていないため、Exifデータにはレンズ銘や焦点距離、絞り値など反映されない。韓国のメーカーというとリバースエンジニアリングを得意とする印象が強いが、今後ぜひともCPUを搭載し、レンズ情報がExifデータに反映されることを望みたい。なお、今回トライアルして使用したレンズのマウントはソニーEだ。



●実写 SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS



*テストに使用したカメラは、ソニー α7。APS-Cサイズにクロップして記録画素数 「 3936 x 2624(10M)」で撮影した。





絞りはF5.6。画面の四隅までしっかりと解像しており、色のにじみもない。像面の平坦性も高く、構造物などの撮影でも活躍しそうだ。
ソニーα7・SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF5.6・1/640秒)・ISO100・WBオート・JPEG





想像以上に緻密で繊細な描写である。逆光に近い撮影条件であるが、目立つようなフレアの発生もなく、ヌケもよい。
ソニーα7・SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF8・1/320秒)・ISO100・WBオート・JPEG





この距離の被写体は、EVFの画像を拡大しないとピントが合わせにくい。MFとする本レンズでは丁寧な撮影が求められるといってよい。
ソニーα7・SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF2.0・1/640秒)・ISO100・WBオート・JPEG





開放絞りでの撮影だが、合焦面直後からのボケは滑らかに大きくなっていく。若干コントラストが弱いが、国産のレンズも似たようなもの。
ソニーα7・SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF1.4・1/640秒)・ISO100・WBオート・JPEG





最短撮影距離は0.28m。画角はフルサイズ判換算で31.5mm相当なので、まぁまぁと言ったところ。なお、α7はクロップして使用している。
ソニーα7・SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF1.4・1/800秒)・ISO100・WBオート・JPEG





合焦面の解像感の高さは国産レンズと引けをとらない。現時点では販売価格は未定だが、競争力のあるプライスだと人気を博すはずだ。
ソニーα7・SAMYANG 21mmF1.4 ED AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF8.0・1/125秒)・ISO100・WBオート・JPEG




●実写 SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS






合焦面の質感はリアリティのあるものだ。塗装のハゲ具合など忠実に再現する。前後のボケはいずれも強いクセがなく、ナチュラルな印象である。
ソニーα7・S SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF2.0・1/320秒)・ISO100・WBオート・JPEG





画角はフルサイズに換算して75mm相当となる。頃合いのよい画角としてポートレートのほかスナップなどでも活躍してくれそうだ。
ソニーα7・S SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF2.8・1/200秒)・ISO100・WBオート・JPEG





半逆光での撮影だが、フレアの発生は見受けられない。階調の再現性も良好で、さらに解像感、コントラストとも高い。
ソニーα7・S SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF2.8・1/3200秒)・ISO100・WBオート・JPEG





白鳥にピントを合わせているが、この距離だとEVFを拡大しないとピント合わせはつらい。わずかだが、ブレてしまった。
ソニーα7・S SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF11・1/40秒)・ISO100・WBオート・JPEG





絞りは開放のF1.2。極めて浅い被写界深度のためピント合わせも難儀することが多い。コントラストが若干低く感じられる。
ソニーα7・S SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF1.2・1/320秒)・ISO100・WBオート・JPEG





絞りF8での撮影だが、階調再現性は申し分なく、立体感のある描写が得られた。コントラストは高く、キレも上々だ。
ソニーα7・S SAMYANG 50mmF1.2 AS UMC CS・絞り優先 AE(絞りF8・1/160秒)・ISO100・WBオート・JPEG



●描写


写りについては、同クラスの国産品と遜色ないレベル。いずれも絞り開放からエッジのキレ、およびコントラストとも良好で、色のにじみもよく抑えている。
画角の広い21mmについては四隅の描写が気になるところだが、絞り開放から上々。ちょっと絞り込むとさらにパリッとした描写となる。像の流れも見受けられないほか、像面の平坦性も高くディストーションもよく抑えている。スナップ、風景など活躍してくれそうなレンズである。

50mmについてはその画角からボケ味が気になるところであるが、今回見たかぎりにおいては極めてナチュラルな印象。合焦面直後から始まるボケは滑らかに大きくなっていき、被写体同士が柔らかく溶け合う様子は美しい。また、開放絞りでも解像感およびコントラストの低下は小さく、最新の国産大口径レンズの描写と遜色ないレベルである。画角および開放値からポートレート撮影に用いられることも多いかと思うが、その期待に必ず応えてくれるはずだ。

現時点での21mmの販売価格は未定。すでに発売中の50mmは、これまでのサムヤンの交換レンズと異なりやや強気の価格設定がされている(ケンコートキナーオンラインショップで税込8万600円)。しかしながら、今回のトライアルの結果を見ると、その価格に見合う描写と言ってよいだろう。21mmも含め、人とは一味異なる交換レンズで撮影を楽しんでみたいレンズグルメにオススメしたいアイテムである。



●メーカーサイト


SAMYANG 21mm F1.4 ED AS UMC CS
http://www.kenko-tokina.co.jp/imaging/eq/camera-lens/samyang/photo/8809298884611.html


SAMYANG 50mm F1.2 AS UMC CS
http://www.kenko-tokina.co.jp/imaging/eq/camera-lens/samyang/photo/8809298884635.html



 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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