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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2015/06/13

キヤノン EOS M3 第2弾 オールドレンズ実写編

text & photo 大浦タケシ


EVFの装着が可能となったキヤノン「EOS M3」。EVFがあればピントの状況が把握しやすいうえに、しっかりとカメラをホールドできる。さらに明るい場所でも視認性が低下することはない。もちろんこれは、マウントアダプターを介してオールドレンズ(=マニュアルフォーカスレンズ)を装着したときも同様で、EVFはレンズグルメにとってマストといえるデバイスだ。EOS M3はそのような理由から、これまでのEOS Mシリーズと異なり、積極的にオールドレンズで楽しんでみたくなるカメラである。

オールドレンズを装着した場合のEOS M3側の設定は、
前回の記事「機能編」をご覧頂きたい。撮影モードの設定は、絞り優先AEもしくはプログラムAEを使用しよう。交換レンズとカメラが電気的に繋がっていなくても、レンズの明るさに合わせてカメラ側が自動的にシャッター速度を設定する。ISO感度についてはオートが使いやすい。その場合、上限を自分の使いやすいと思う感度に設定しておくとよい。ちなみに筆者は通常上限をISO1600にしている。このあたりまでがノイズレベルの許容範囲と感じているからだ。

絵づくり自体はキヤノンデジタル一眼レフと同じだ。グリーン系の発色がやや地味ながらもクセが無くニュートラルな色調で、階調再現性にも優れている。筆者のように普段同社のデジタル一眼レフを使っているユーザーなら、Digital Photo Professionalを使ったRAW現像にも慣れていると思うので、EOS M3とオールドレンズで撮影した画像も自在に仕上げられることだろう。

EOS M3は、オールドレンズマニアにとっても“使えるミラーレス”である。冒頭にも記したようにEVFが装着でき、露出補正もダイヤル操作で直感的に設定できる。ホールドしやすくなったボディによって、交換レンズの重さも、これまでよりちょっとだけ気にしなくてよくなった。APS-Cサイズの場合、広い画角が欲しいときにツラいことも正直あるが、気軽に楽しむには不足はない。今後EOS MシリーズもEVFの内蔵やフルサイズセンサーの搭載など期待したいが、まずは本モデルでその実力を感じてもらえればと思う。


CANON EOS M3+Carl Zeiss Biogon T*21mmF2.8 ZM


CANON EOS M3+Carl Zeiss Biogon T*21mmF2.8 ZM
フィルム時代末期に製造を開始したとはいえ、やはり現代の交換レンズである。EOS M3で使っても、描写に古めかしさなどまったく感じない。ヌケがよくスッキリとした描写で、撮影を楽しませてくれる。フルサイズのミラーレスでは画面周辺部に偽色が発生するが、本モデルではその心配も必要ない。



CANON EOS M3+Carl Zeiss Biogon T*21mmF2.8 ZM
F2.8・1/500秒・−1/3EV・WBオート・ISO100・JPEG


CANON EOS M3+Canon 50mmF1.2(L)


CANON EOS M3+Canon 50mmF1.2(L)
さすがに開放F1.2ではどこに合焦面があるか分からないほど緩い描写だ。交換レンズの味として考えればこれはこれで面白い。ボケ味は独特で、あまり美しいほうではない。距離計とは異なりどの撮影距離においても正確なピント合わせができるが、最短撮影距離が1mでは寄りたくても寄れず正直ツラいところだ。



CANON EOS M3+Canon 50mmF1.2(L)
F1.2・1/1000秒・+2/3EV・WBオート・ISO100・JPEG


CANON EOS M3+Rodenstock-Heligon 35mmF2.8


CANON EOS M3+Rodenstock-Heligon 35mmF2.8
古い交換レンズになればなるほど開放絞りの描写が面白い。Heligon 35mmF2.8もそのひとつで、ハロが発生し独特の柔らかい描写となる。しかもその度合いが画面中央から外れるほど大きくなっていく。シャープでコントラストの高い描写を好むレンズグルメもいるかとは思うが、オールドレンズなら開放絞りの描写も受け入れたい。



CANON EOS M3+Rodenstock-Heligon 35mmF2.8
F2.8・1/800秒・+1EV・WBオート・ISO100・JPEG


CANON EOS M3+Summarit-M 90mmF2.5


CANON EOS M3+Summarit-M 90mmF2.5
EOS M3では、フルサイズ判換算で144mm相当となる交換レンズである。このところのライカにしては珍しく全て球面レンズであるが、その分比較的リーズナブル。フォーカスリングのローレットもラバー製とするなど、コストダウンも図られている。作例は開放での撮影だが、やや緩い描写だ。



CANON EOS M3+Summarit-M 90mmF2.5
F2.5・1/320秒・+1/3EV・WBオート・ISO100・JPEG


CANON EOS M3+Elmarit-R 35mmF2.8


CANON EOS M3+Elmarit-R 35mmF2.8
絞りは開放から1段絞ったF4で撮影した。色調やボケ味は素直でナチュラル。シャープネスも文句なく、とても45年以上前に製造された交換レンズとは思えない描写である。筆者はライカを神と拝めたり、ことさら贔屓する嗜好は持ち合わせていないが、それでもさすがライカだと頷かされるレンズである。



CANON EOS M3+Elmarit-R 35mmF2.8
F4・1/100秒・+1/3EV・WBオート・ISO100・JPEG


CANON EOS M3+Super-Angulon-R 21mmF4


CANON EOS M3+Super-Angulon-R 21mmF4
ライツの光学設計技術にまだ余裕がなかった時代の証しともいえる交換レンズ。同じ西ドイツのシュナイダー社が設計・製造を行った。フォーカスリングの操作感は、最新のAFレンズでは決して味わえないもので、ピントを合わせる行為が楽しくなるほどである。描写特性も、この時代の超広角レンズとしては申し分なく、ライツが設計・製造を委ねただけのことはある。


CANON EOS M3+Super-Angulon-R 21mmF4
F8・1/160秒・−2/3EV・WBオート・ISO100・JPEG


CANON EOS M3+CANON FD24mmF2


CANON EOS M3+CANON FD24mmF2
焦点距離24mmはフルサイズに換算して38.4mm相当と使いやすい画角となる。残念なことに画面周辺部の描写は作例を見るかぎり思ったほどではない。この交換レンズを購入したのは大学生時代。筆者にとっては高価な交換レンズで、無理して買ったが、それから30年余り。見てはいけないものを見てしまったような気がする。しかし、それもデジタルの面白さのひとつかもしれない。



CANON EOS M3+CANON FD24mmF2
F5.6・1/1000秒・−1/3EV・WBオート・ISO100・JPEG


CANON EOS M3+CANON FD85mmF1.8 SSC


CANON EOS M3+CANON FD85mmF1.8 SSC
大口径中望遠として1970年代人気を博した交換レンズである。いわゆる写りのよい交換レンズとして古くから定評があったが、EOS M3にでもその実力は遺憾なく発揮する。開放から1/3段しか絞り込んでいないが、ピントの合った部分のエッジが立ち、ボケはナチュラルで柔らかい。ちなみに、この交換レンズは1978年、高校1年生の時に珍しく親が買ってくれたもので、色々と思い出が詰まっている。



CANON EOS M3+CANON FD85mmF1.8 SSC
F2・1/125秒・+2/3EV・WBオート・ISO160・JPEG


CANON EOS M3+Nikkor-UD Auto 20mmF3.5


CANON EOS M3+Nikkor-UD Auto 20mmF3.5
レトロフォーカスタイプの光学系が珍しい時代に発売されたFマウント用超広角レンズ。線の太さはあるものの、画面周辺部までシャープネスは高く、とても40年以上前に設計された交換レンズとは思えないものである。EOS M3に装着すると32mm相当の画角となるため、本来の持ち味は楽しめないが、スナップ撮影などでは重宝することも多そうだ。
 

CANON EOS M3+Nikkor-UD Auto 20mmF3.5
F5.6・0.3秒・+1EV・WBオート・ISO100・JPEG


CANON EOS M3+Nikkor-S Auto 55mmF1.2


CANON EOS M3+Nikkor-S Auto 55mmF1.2
最新設計の大口径レンズは、開放絞りでもピントの芯があり、コントラストも高いが、時代が異なると開放絞りではユルユルの描写であることが多い。本レンズもその1本で、ピントが合っていないのではないかと思えるぐらい柔らかい描写である。EOS M3にはちょっとヘビーだ。


CANON EOS M3+Nikkor-S Auto 55mmF1.2
F1.2・1/1600秒・WBオート・ISO100・JPEG


マウントアダプター協力:デジタルホビー(http://digitalhobby.biz
モデル:池田静香
 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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