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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2016/09/16

「ニッシンi60A」で撮る光のポートレート

photo & text 浅岡 省一
小型ボディにGN60の大光量、さらにニッシンAir 1の電波式レシーバーも内蔵した
注目のクリップオンストロボを、ストロビストの浅岡省一氏が実写レポート!



ニッシン i60A
超小型でありながら、ガイドナンバー60の大光量のクリップオンストロボ。コマンダーAir 1のレシーバーを内蔵し、直感的なダイヤルインターフェースで操作が可能。

〜Scene 1〜
ストロボ3灯で挟み込みライティング


ソニーα7 R Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
f1.8  1/60秒  ISO3200  WB: オート  RAW
Adobe Photoshop Lightroom 6.6

日没後、空に色が残らない時間帯に、夜景をバックに撮影した。フロントはi60AとニッシンDi700Aで左右から挟み、嫌な影が出ないようにした。バックにはi60Aをセットし、モデルの背後を輝かせる。Di700Aもi60A同様に電波式レシーバーを内蔵しているので、Air 1で簡単に同期できる。
機動性を重視し、スタンドにはゴリラポッドを使用、ディフューザー類は全て省いた。照射角は35mmに設定。ストロボの出力は、地明かり、モデルの衣装や肌の質、その日の天気や湿度によって変わってくるので、仕上がりを見ながら現場で追い込んでいく。バックライトを使う時、モデルの衣装をレースのような素材にしておくと、光が透過してきれいな印象になる。




外ロケの時は、ストロボのスタンド代わりにゴリラポッド(写真右)を使うことがほとんど。多灯でも一人で持ち歩けて、位置の微調整がしやすい。夜の撮影で必須なのが、ペンライト(左)。AFでピントを合わせる際に点灯させる。NASのTTLはバックライトとして使う時は弱いため、ストロボの光量はマニュアルで設定した。


〜Scene 2〜
60のガイドナンバーを利用した日中シンクロで空の表情を捉える


ソニーα7 R Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS
焦点距離:16mm f8  1/100秒  ISO250  WB: オート  RAW
Adobe Photoshop Lightroom 6.6

日が少し傾きかけた時間帯での撮影。夏は太陽の高度が高く、日の光が強いため日中シンクロするにはストロボのパワーが必要になる。昼間なら、クリップオン2台でフル発光させて、ようやく背景が落ちるぐらいだ。これだけ雲が出ていれば1灯でもいけるかも、と踏んでi60AのGN60のフル発光のパワーを試してみると、案の定うまくいった。空の色を深く出すことを狙って露出はかなりアンダー気味にしている。ストロボの置き方はいろいろあるが、今回はストロボの迫力を出すためあえて真正面から当てた。
なお、チャージタイムロスやオーバーヒートを回避するために、普段は1/2出力でストロボを2灯同期させることが多い。



ストロボなし





カメラ、ストロボともにローアングルでの撮影(左)。モデルとの距離は約3m。広角ズームでダイナミックな空の表情を捉える。ここでもストロボはゴリラポッドに装着して使用(右)。チャージタイム重視の場合は、同じ場所に光量を1/2出力にしたストロボをもう一台置く。


〜Scene 3〜
片手持ちライティングでトワイライトの雰囲気を演出


富士フイルム X-Pro2 XF35mm F1.4 R
f1.4  1/125秒  ISO200  WB: オート  RAW
Adobe Photoshop Lightroom 6.6

日没後、空の色がまだ残るトワイライトの時間帯に撮影した。ストロボを使わずに背景に露出を合わせた状態で撮ることもできるが、モデルがやや背景に沈んでしまい、漫然とした印象に。そこで、モデルに声をかけながらポーズや表情を引き出しつつ、それに応じてストロボの位置/角度/強さを変えながら撮っていった。
まずはTTL任せでざっくりと光量を合わせておいて、仕上がりが自分のイメージに近づいたら、ストロボの調光補正で狙いのイメージになるよう追い込んでいった。今回は光量を弱め、その場の雰囲気になじむように使った。
普段カクタスV6を使う場合はマニュアルで光量を合わせているのだが、さすがTTL推しのニッシン。TTLモードで出てくる光量の勘所が悪くなく、ー0.5段ほど光量を落とすだけで済んでしまった。Air1とi60AやDi700Aの組み合わせで使うなら、フルマニュアルよりもTTLからの調光補正の方が使い勝手がいいかもしれない。



ストロボなし




左手にi60Aを持ち、右手のカメラはライブビューモードにして撮影(左)。ファインダーを覗くよりもこの方が光軸の調整がしやすい。ストロボは空に向けた光をバウンサーに反射させて、光質をやわらげている(右)。手に対してもこの小ささ!


NAS(Nissin Air System)で素早いマウントチェンジにも対応


カメラのマウントを変える際は、対応するAir 1を使用し、ストロボにコマンダーを認識させる「ペアリング」という操作が必要だ(右)。ストロボの電源と「(鍵マーク)」ボタンを長押しし、音が鳴っている間に、コマンダーの電源と「S」ボタンを長押しする。慣れれば30 秒ほどで操作は完了する。


After Shooting

編集部(以下、編):i60A、使用した印象はいかがでした?

浅岡:まずはとにかく小さいということに尽きますね。V6とMG8000のセットでもコンパクトだなぁと思っていたのですが、レシーバー内蔵でこれとは…。あと夜間撮影ではコマンダーのAir 1の光るインジケーターで光量を即座に確認できるのがありがたいです。


編: MG8000と比べてチャージタイムは気になりましたか?

浅岡:さすがにフル発光では連写ができるMG8000に分がありますが、ハーフ(1/2出力)だと全然気になりませんでした。1回撮ってモデルがポーズを変えてまた撮って、というポートレート撮影なら、そもそも連写することもないですしね。


編: NASシステムについてはどうでしょう?

浅岡:カメラのマウントを変えるにはメーカーごとのAir 1が必要で、「ペアリング」という一手間もかかりますが、現場でカメラを変えることは一般ユーザーの方を含めほぼないと思うので、その点は気にしなくて良いでしょう。それよりも、TTLが思いのほか優秀だったので、このメリットをどう活かすか。MG8000が生産中止になってしまったので(泣)、次のメインストロボ候補として使い込んでみたいなと思いました。




Nissin i60Aの5大特徴

ニッシン i60A 主な仕様
□税込価格:34,560円
□対応マウント:ソニー用(発売中)
フォーサーズ用、富士フイルム用(9月発売予定)
キヤノン用、ニコン用(発売日未定)
□照射角:オートズーム24〜200mm以上
(内蔵ワイドパネル使用時:16mm)ハイスピードシンクロ/
□FP発光:対応(富士フイルム用を除く)
□発光回数:約220〜1,500回(アルカリ乾電池の場合)
□電源:単3形電池4本使用(電池別売)


GN60の大光量
照射角200mm時で60のガイドナンバーは各メーカーのフラグシップ機に匹敵する明るさ。発光部の上下には引き出し式のバウンサーとディフューザーが搭載されている。



ニッシンAir 1のレシーバーを内蔵

ニッシンの電波式コマンダーAir 1のレシーバーを内蔵。ニッシン独自の電波式ワイヤレスTTLシステム「NAS(Nissin Air System)」によって、異なるマウントのi60Aが混在していても、1台のAir 1でTTLの多灯発光が可能に。



小型LEDも内蔵

定常光として使えるLEDライトを前面部に内蔵。ご覧のとおり、夜でも寄りの撮影では感度を上げれば手持ちで撮れるほどの明るさがある。



直感的なダイヤルインターフェース

操作は背面にある2つのダイヤルと複数のボタンで行う。光量や電池の残量などは液晶画面に表示されるため、夜の撮影でも視認性が良い。


とにかく小さい!

常用しているカクタスV6とニッシンMG8000の組み合わせ(右)と比べるとこれだけ小さい。


ゴリラポッドに装着しても、片手で余裕で運べる。



V6+MG8000、i60Aをカメラバッグのサイドポケットに収納。
右ポケットのi60Aは完全に収まっている。



<メーカーサイト>
ニッシンジャパン
http://www.nissin-japan.com/

「i60A」
http://www.nissin-japan.com/i60a.html


*この記事は、フォトテクニックデジタル2016年9月号から転載しています。


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【著者プロフィール】
 

浅岡 省一(Shoichi Asaoka)
1973年東京都生まれ。中央大学大学院法学研究科卒。仕事では人物や商品などの広告撮影をする傍ら、スナップや夕景/夜景とモデルを絡めた作品撮りを行っている。
http://www.asa-oka.com
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