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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2016/01/20

マップカメラ+MS-Optics 「REIROAL M35mm F1.4 MC プラチナクローム」

photo & text 大浦タケシ


クセ玉と言われる交換レンズが存在する。“クセ”と言われる所以は多くの場合描写に関連するが、そのなかには開放絞りと絞り込んだときの描写が極端に異なるレンズを指すものも少なくない。その筆頭といえるのがライカMマウントのズミルックス 35mm F1.4ファーストモデルとセカンドモデル。開放絞りでは独特のボケ味に加えフレアの発生で柔らかい描写に、絞リ込むとコントラストが急激に増しキレの鋭い描写に変わる。
マップカメラと交換レンズの製造・改造を手がけるMS-Optics(宮崎光学)が共同で企画・開発した「REIROAL M35mm F1.4 MC プラチナクローム 」は、そんなズミルックス 35mm F1.4の描写をオマージュしたMマウント広角レンズである。
まずショップがレンズを企画開発したこと自体が画期的だが、その製品の特徴はたいへん個性的で魅力的なものだ。


REIROAL M35mm F1.4 MC プラチナクローム

プラチナメッキの施された鏡筒は高級感ある仕上がり。絞りリングのローレットも美しい。

最短撮影距離は0.5m。レンジファインダーで使用した場合、合焦保証距離は0.85mまでなので注意しておきたい。


レンズ構造


レンズ構造図 画像提供:マップカメラ 設計:MS-Optics


設計図 画像提供:マップカメラ 設計:MS-Optics

4群6枚の光学系は典型的なダブルガウス。左右対称で美しい構成である。ちなみに先のズミルックス 35mm F1.4は、ガウスタイプでも5群7枚の変形タイプとしている。REIROAL 35mm F1.4では、レンズ貼り合わせ面を除き8面全てにマルチコートが施され、ガウスタイプで発生しやすいといわれる内面反射を抑え込む。さらに現代的なのが、ガラス硝材として超高屈折ガラスを6枚全てに使用した贅沢なものなっている。

金属製のレンズフードが付属。このフードはレンズ先端の外側に切られたネジ(雄ネジ)に装着する。


美しい外装

最短撮影距離は0.5mを実現。これはミラーレス機での使用を考慮したものだ。レンジファインダー機に装着した場合もこの距離での撮影は可能であるが、合焦精度の保証は0.85mまでなので注意が必要だ。絞り羽根は12枚。円形絞りとしている。
鏡筒の仕上がりも注目したい。アルミ合金製の鏡筒には高級感あるプラチナメッキが施されたいへん美しい。作例撮影ではソニーα7RIIおよびライカMモノクロームに装着してみたが(いずれもブラック仕上げ)、どちらにもよく似合う。



独特の形状のレンズキャップ。慣れないと、レンズから外したとたんぽろっと落としてしまいそうになる。

“ツノ”も備える。適度なトルク感のあるフォーカスリングは、操作感もよくピント合わせが楽しい。

ライカMモノクロームに装着したところ。プラチナメッキの施されたコンパクトな鏡筒は、やはりライカに似合う。



MS-Optics(宮崎光学)では交換レンズの改造も行っている。写真はコンタックスGマウントの交換レンズをMマウント化したもの。


開放時と絞り込み時で全く異なる表現をする個性派レンズ

描写については、ズミルックス 35mm F1.4並みに“クセ”のあるものである。開放では、どこにピントの芯があるか分からないほど柔らかく、コントラストも低い。さらに画面周辺部の解像感はお世辞にもよいとは言えない状況だ。これを良とするか悪とするかは読者の皆さんの判断に任せたいと思うが、開放からキレ、コントラストとも高い描写の得られる最近の交換レンズとは全く異なる性格といってよいだろう。

<絞り値による比較>

共通データ:ソニーα7RII + REIROAL 35/1.4
*画像クリックで別ウィンドウで開きます

F1.4(開放)


F2


F2.8


F4


F5.6


F8


F11


F16

その描写が大きく変わるのが、F5.6前後に絞ったとき。画面全体が見違えるようにキリッと締る。シャープネスも極めて高い。開放値の描写と比較すると同じレンズとはとても思えないほどである。詳細については作例を見ていただきたいが、これほど絞り値による描写の変動が大きいレンズはないように思える。


<REIROAL 35mm F1.4 作例>

ライカMモノクローム + REIROAL M35mm F1.4 MC プラチナクローム


F1.4 1/2000 ISO320 +0.33EV


F2.0 1/4000 ISO320 +0.33EV


F6.7 1/4000 ISO320



ソニーα7RII + REIROAL M35mm F1.4 MC プラチナクローム



F1.4 1/3200 ISO100 +0.3



F5.6 1/500 ISO100



F1.4 1/160 ISO100 -0.7



F8.0 1/800 ISO100



F8.0 1/1250 ISO100



F1.4 1/15 ISO100 +1.3


REIROAL 35mm F1.4はマップカメラにて限定100本が発売され、残念なことにすでに完売しているという。ちなみに同レンズの販売価格は税込み14万3,800円。ズミルックス 35mm F1.4のファーストモデルやセカンドモデルの中古が20万円を大きく越す価格で取引されていることを考えるとたいへんお買得といえる。現代のレンズでは味わうことの難しく味わいのある描写特性を持つレンズとして、再発売を強くお願いしたい。


<メーカーサイト>
「REIROAL M35mm F1.4 MC プラチナクローム 」
https://www.mapcamera.com/item/2717000575282

マップカメラ:https://www.mapcamera.com/


 著者プロフィール
  大浦タケシ(おおうら・たけし)

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。紆余曲折した後、フリーカメラマンとなり、カメラ誌、Webマガジン等でカメラおよび写真に関する記事を執筆する。中古カメラ店巡りは大切な日課となっており、”一期一会”と称して衝動買いした中古カメラは数知れず。この企画を機に、さらに拍車がかかる模様。2006年よりカメラグランプリ選考委員。
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