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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2016/02/15

PCレスで中判フィルムを簡単スキャン、ケンコー・トキナー「フィルムスキャナーKFS-1420BF」

photo & text 大村祐里子


中判フィルムカメラユーザーに朗報だ。2016年1月20日、ケンコー・トキナーから、「フィルムスキャナーKFS-1420BF」が発売となった。この商品は、中判フィルムをスキャンしてデジタルデータ化できるフィルムスキャナーだ。

インターネットが普及したこの時代、現像したフィルムをプリントするのではなく、スキャンしてデジタルデータ化し、ブログやSNSなどに投稿する人が圧倒的に増えた。筆者もその一人である。しかし、DPEショップにデジタルデータ化を頼むと、思い通りの露出にならなかったり、特に中判フィルムの場合は高額になってしまうことがある。フラッドヘッドタイプのスキャナーを購入するという手もあるが、大きくて重く高価であり、中判フィルムの場合はスキャンの時間が多く取られるので、忙しい方は手を出しづらいのが現状だろう。

そのような中判フィルムユーザーの悩ましいデジタルデータ化問題を解決するのがこのKFS-1420BFだ。この商品は、中判フィルムに特化したスキャナーだ。対応フィルムの種類は、120カラーリバーサル、120カラーネガフィルム、120白黒ネガフィルム。フォーマットは、6×9、6×8、6×7、6×6、6×4.5と全てのフィルムサイズに対応している。価格オープンだが店頭実売価格は、18,900円前後(2016年2月時点)とお手頃。

操作はあまりに簡単。付属のフィルム用ホルダーに現像したフィルムを挟み込み、フィルムホルダースロットに差し込むだけだ。パソコンを使わず、JPEGデータをSD/SDHCカードへダイレクトに保存することができるのもスマートだ。サイズも約173mm(W)×156mm(H)×127mm(D)と、ティッシュ箱程度なのでまったく幅をとらない。また、総重量も約590gと、普段2〜3キロあるような中判カメラを持ち歩いているユーザーにとっては驚きの軽さとなっている。


フィルムスキャナー KFS-1420BFの操作手順




スキャナー本体背面のSD/SDHCカードスロットに、SD/SDHCメモリーカード(別売り)をセットする。



付属するフィルムホルダー。中判フィルム(ブローニーフィルム)のみ対応する。


フィルムホルダーを開いたところ


フィルムホルダーにフィルムを取り付ける。ホルダー上部を上に開き、フィルムを装着し閉じる。



フィルムホルダーを、スキャナ本体の下部にあるフィルムホルダースロットに差し込む。



操作パネル。左上から時計回りに再生ボタン、フィルムタイプ選択ボタン、OKボタン、フィルムサイズ選択ボタン、露出変更ボタン。一番下にあるのが銀色のボタンが電源ボタン。


電源ボタンを押し電源を入れると、液晶部分に画像が表示される。




フィルムサイズの選択




まず、フィルムサイズ選択ボタンを押し、適切なフィルムサイズを選ぶ。適切なサイズを選べばトリミングされることはない。今回のフィルムサイズは6×7なので「6×7」を選択。このとき、フィルムホルダーを手で掴んで左右に動かし、白枠内に画像がきちんと配置されるように調整する。


フィルムタイプを選択。液晶で常時プレビューされる


フィルムタイプ選択ボタンを押し、適切なフィルムタイプを選ぶ。今回はカラーリバーサルフィルムなので「REV」を選択。他には「NEG」(カラーネガフィルム)と「B/W」(白黒ネガフィルム)がある。


プレビューされた画像を見て必要があれば、露出変更ボタンで露出補正を行うことができる。ボタンを押すと、液晶モニターに露出補正インジケーターが表示される。中央列のTYPE/▲(上)と、SIZE/▼(下)ボタンを押して露出を調整する。1ステップは0.5EV、補正範囲は-2.0EV〜+2.0EV。補正が終わったら、露出変更ボタンを押して露出補正インジケーターを消す。



最後に、OKボタンを押し画像を保存する。保存時間は1秒程度。記録画像サイズ3472ピクセル×2784ピクセル、ファイルサイズは、1.2 MB程度で保存された。カラープロファイルはsRGB。



<スキャンした中判フィルム写真>

KFS-1420BFでスキャンし、3472ピクセル x 2784ピクセルで保存したデータを、ウェブ用に長辺1400ピクセルにリサイズし掲載しています。スキャン後のゴミ取り、色調補正などのレタッチは行っていません。


使用カメラ:ZENZA BRONICA S2
フィルム:Kodak Professional エクター100(カラーネガフィルム)
露出補正なし

以下は、露出補正あり(+2.0〜ー2.0)


+2.0EV
+1.0EV



ー1.0EV
ー2.0EV





使用カメラ:Plaubel Makina 67
フィルム:FUJIFILM フジクローム PROVIA 400X(リバーサルフィルム)



+2.0EV
+1.0EV



ー1.0EV
ー2.0EV





使用カメラ:Rolleiflex 2.8F Xenotar
フィルム:KODAK PROFESSIONAL T-MAX 400 Film(モノクロネガフィルム)




+2.0EV
+1.0EV



ー1.0EV
ー2.0EV





使用カメラ:PENTAX 645N II
フィルム:Kodak PORTRA 800(カラーネガフィルム)




+2.0EV
+1.0EV



ー1.0EV
ー2.0EV


<まとめ>

小型で軽量、簡単操作で中判フィルムをデジタルデータ化できる点は素晴らしい。普段フラッドヘッドタイプのスキャナーを使用している筆者にとって、幅を取らず、移動も簡単で、パソコンにつながず直接データをSDカードに保存できるなんて夢のような話であった。オートフォーカス機能が搭載されておらず固定焦点というのが不安であったが、スキャンした画像を見るとピントの精度は悪くないように思える。ただ、フラットヘッドタイプのスキャナーに比べると、やはり画質は劣る。全体的に粒状感が強く出ているのが気になった。また、トーンカーブや色調を補正できないので、自分のイメージ通りの写真に仕上げたい方には不向きだと感じた。

まとめると、ユーザーインターフェースやワークフロー面では文句なし。特に、1秒程度でデータが保存される点が素晴らしい。筆者の所有するスキャナーは1カット2分程度かかることもあるので、それと比較すると圧倒的な時間の短縮がはかれることになる。忙しい人にはもってこいだ。ただ、フラットヘッドスキャナーに比べると、画質、調整のきめ細やかさで劣ることは否めない。KFS-1420BFは、中判フィルムをスキャンしてデジタルデータ化し、webで気軽に楽しみたいというライトユーザ向けの商品であると感じた。

<関連サイト>
ケンコー・トキナー KFS-1420BF
http://www.kenko-tokina.co.jp/pc/scanner/4961607434772.html
 著者プロフィール  
大村 祐里子(おおむら ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。
著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:http://omurayuriko.jp/
ブログ:http://shutter-girl.jp/
Instagram:@yurichayuricha
 
 

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身近なものの撮り方辞典100


フィルムカメラ・スタートブック
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