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新製品レビュー

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新製品レビュー
公開日:2021/01/15

キヤノンの本気度200%、進化したミラーレス一眼 キヤノン EOS R6 スペシャルレビュー

photo & text 岡嶋和幸


2020年8月27日に発売になったキヤノンの35mmフルサイズミラーレスカメラ「EOS R6」。「EOS R5」と同じく予約が殺到し、発売後も品薄状態が続く人気機種だ。約4,500万画素のEOS R5に対し、EOS R6は約2,010万画素で、同社フラッグシップモデルである「EOS-1D X Mark III」のCMOSセンサーをカスタマイズしたものが搭載されている。

EOS R5とEOS R6の共通スペックとして、ボディとレンズの協調制御で最大8段の効果が得られる5軸手ブレ補正機構、メカシャッター最高約12コマ/秒、電子シャッター最高約20コマ/秒の高速連続撮影、映像エンジンDIGIC Xなどがあげられる。4K動画撮影など一部必要十分なスペックに留められているが、常用最高感度ISO 102400、AF低輝度合焦限界EV−6.5などEOS R5を凌ぐ部分もある。

従来機「EOS R」の約3,030万画素と比べて画素数は低くなっているが、EOS R6は前述の通り性能が大幅にアップしている。バッテリーは大容量化され、エコモードや省電力優先の設定ではEOS R以上の撮影可能枚数を実現。EOS 5D Mark IVなど従来から定評があり、EOS Rにはなかった操作系が採用されている点も魅力だ。一眼レフからの移行で一番のネックとなる電子ビューファインダーの見え方はより自然になり、各種情報が表示できるなどとても便利なので、従来のネガティブなイメージを払拭できるだろう。

外観がシャープな印象のEOS Rに対し、わずかにサイズや重量がアップしたEOS R6。より重量のあるEOS R5と同じく丸みを帯びてやや太めの感じだが、グリップはとても握りやすい。大口径レンズとの組み合わせでもしっかりと構えることができて、重量バランスも良い。




撮影モードの変更は、EOS RとEOS R5はMODEボタンを押した後、表示パネルやEVFで確認しながらサブ電子ダイヤルを回す。これに対しEOS R6は、EOS RPや一眼レフのEOSシリーズと同様、モードダイヤルでダイレクトに変更可能。筆者がEOS R6を選ぶ理由の1つがこれだ。サブ電子ダイヤルはボディ上面に加え、EOS 5D Mark IVなどで使い慣れた背面にもある。メイン電子ダイヤルのほか、RFレンズはコントロールリングも装備しており、メニューのダイヤルカスタマイズで任意の機能をそれぞれ設定できる。筆者はメイン電子ダイヤルはシャッタースピード変更、上面のサブ電子ダイヤル2は絞り数値変更、背面のサブ電子ダイヤル1は露出補正、コントロールリングはAF方式選択を割り当てている。



EOS Rのマルチファンクションバーはないが、EOS R6には従来から操作性に定評のあるマルチコントローラー(写真中央、ファインダーの右パーツ)が装備されている。AF測距点の変更は背面モニターでのタッチ操作のほか、ファインダー撮影でもタッチ&ドラッグAFが素早く快適で便利だが、マルチコントローラーはEOS 5D Mark IVなどで使い慣れた人にはうれしい装備だ。



EOS RはSDメモリーカードのシングルスロットだったが、EOS R6はデュアルスロットになった。2枚のカードに静止画と動画を振り分けて記録できたりするので便利だ。カード1をJPEGのラージファイン、カード2をRAWといった設定もできるが、筆者は同じ静止画が両方のカードに記録される「同一書き込み」で、万が一どちらかに不具合が生じても大丈夫なように備えている。



タッチ操作が可能なバリアングル式の背面モニター。縦位置でも柔軟に撮影できるフリーアングル対応だ。EOS Rの約210万ドットの3.15型から、EOS R6は約162万ドットの3.0型液晶となっているが、その差はあまり感じられない。



電子ビューファインダー(EVF)の液晶は0.5型の有機ELで、ファインダー倍率は約0.76倍と、これらはEOS RやEOS R5と同スペック。EOS R6の解像度は約369万ドットでEOS Rと同じだが、表示フレームレートは2倍の速さで、さらに滑らかで自然な見え方になった。より光学ファインダーに近づいた印象だ。

<キヤノン EOS R6 作例>


Canon EOS R6  RF50mm F1.8 STM
F1.8 1/400 ISO100 -1EV WBオート
階調がとても豊かで、滑らかなグラデーションでボケが描かれている。花びらや葉の輪郭は、暗く落ち込んだ背景にすっと溶け込むようで美しい。自然な立体感が心地良く、30cmまで近寄れるRF50mm F1.8 STMとの相性も良好だ。


Canon EOS R6  RF50mm F1.8 STM
F1.8 1/250 ISO100 -1EV WBオート


Canon EOS R6  RF50mm F1.8 STM
F1.8 1/6400 ISO100 -1EV WBオート
35mmフルサイズなのでボケを作りやすく、奥行きを表現しやすい。被写体を前景や背景から分離しやすくて、視線誘導も効果的に働く。シャープとボケがバランスよく共存。誇張なく自然な描写で、シャープ過ぎず、優しく滑らかな輪郭が描かれている。


Canon EOS R6  RF24-105mm F4-7.1 IS STM
F8 1/160 ISO100  WBオート
色彩豊かでクリアな仕上がり。葉の1枚1枚が圧縮されたり同化したりせず、息苦しさは感じられない。35mmフルサイズらしい空気感や立体感がある。鮮明だが優しく滑らかな描写。ハイライトからシャドウまでゆとりが感じられる、懐の深い光の捉え方だ。


Canon EOS R6  RF24-105mm F4-7.1 IS STM
F8 1/160 ISO100  WBオート
橋など遠景も必要充分な鮮明さであるなど、レンズが持つ解像力をうまく生かし、上質な解像感が得られている。一眼レフよりもピント精度が高く、ミラーレスカメラのアドバンテージが生かされている。大判プリントだと約4,500万画素のEOS R5の方が有利となるだろうが、A4やA3ノビといったサイズではEOS R6との解像感の違いは見分けられない。


Canon EOS R6  RF24-105mm F4-7.1 IS STM
F7.1 1/13 ISO100 -1EV WBオート


Canon EOS R6  RF24-105mm F4-7.1 IS STM
F7.1 1/125 ISO12800 -1EV WBオート
35mmフルサイズとして十分に満足のいく高感度性能が得られる。ただこの作例では「高感度撮影時のノイズ低減」は「標準」で、ざらつきは抑えられているが、そのぶんディテールが失われている。プリントサイズなど見せ方によっては「弱め」でも良さそうだが、筆者的にはISO 6400までが実用域で、マルチショットノイズ低減機能ならISO 102400までといったところだろう。


Canon EOS R6  RF24-105mm F4-7.1 IS STM
F14 1/400 ISO200 -1EV WBオート
「高輝度側・階調優先」をオンにすることで、ハイライトからシャドウまで階調豊かな仕上がりになった。空のざらつきも気にならないレベル。シャドウが不自然に明るく持ち上げられたりせず、引き締まっていて重厚感がある。
 

<キヤノン EOS R6 評価>

筆者はカメラ専門誌の記事を担当するなど、同時発表のEOS R5と合わせて発売前からEOS R6を手にする機会に恵まれた。両機は共通点が多いが、どちらを選ぶのかと問われると、当初からEOS R6と答えていた。特に動画撮影やトリミングなどはしないため、EOS R5はオーバースペックなのだ。その後も両機種をたびたび使用しているが、今でもその判断は変わらない。

写真展では大型作品を制作することもあるが、2,000〜3,000万画素あれば十分。EOS Rの約3,030万画素が理想だが、EOS R6の約2,010万画素もその条件をクリアしている。画素数(解像度)だけでなく、レンズの解像力も必要。後処理ではカバーできない要素もあるため、レンズ性能にもこだわりたい。さらにはそれを生かすためにも、デジタルレンズオプティマイザは積極的に利用したい機能だ。カメラ内RAW現像のほか、付属ソフト「Digital Photo Professional」ではきめ細かく設定できる。

キヤノンのミラーレスカメラは、EVFのファインダー光学系へのこだわりが感じられる。これは有機ELパネルの解像度や、表示フレームレートと同じくらい重要な要素。ニコンのZシリーズやパナソニックのSシリーズも同様に高く評価しているが、EOS R5やEOS R6のEVFは収差が少なく、クリアで自然な見え方をする。さらにそこにヒストグラムや電子水準器など必要な情報を表示でき、それらを確認しながらの撮影に慣れてしまった今では、一眼レフには戻ることはできない。

モードダイヤルのほか、軽さもEOS R6を選ぶ理由だ。大口径の単焦点レンズでスナップ撮影することが多いため、もちろん軽さだけでなく、構えたときの安定性も重要だ。コンパクトさを求めるのなら35mmフルサイズより小さい撮像素子という選択肢もある。ところが筆者は、広角系や標準系のレンズで少し引き気味で画作りをする傾向があり、被写体と背景を分離するために絞りをF2.8よりも開けることが多い。風景撮影でもパンフォーカスを好まないため、35mmフルサイズと大口径の単焦点レンズの組み合わせは必須なのだ。

これらの理由で筆者はEOS R6を選ぶわけだが、もちろん主な被写体やシーン、撮影スタイルなどによって重要視するポイントは違ってくる。カメラ選びの際の参考になればと思うのだが、キヤノンのEOS Rシリーズは、対応するRFレンズのラインアップがまだまだもの足りない。一眼レフのEFレンズに頼らざるを得ない状況なので、このあたりが充実してくれば、とても魅力的なシステムに感じられるようになるだろう。



 
岡嶋和幸(おかじま かずゆき)

1967年福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。作品発表のほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「ディングル」「風と土」のほか著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」「潮彩」「学校へ行こう! ミャンマー・インレー湖の子どもたち」「九十九里」「風と土」「海のほとり」などがある。
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